第70話 半月後
部屋で待っているだけだと余分な事を色々考えてしまう。
だからできるだけ何かをし続けるようにしている。
例えば残り少ない資材で道具を作ったり改良したりとか。
空間の狭間から拾い上げた異世界の書物を翻訳魔法を使いながら読むとか。
とりあえず以前カタリナから注文があった土魔法装備でも作ろうか。
サリナの土魔法装備は指輪2つ&やや太めのベルト。
だが黒竜の魔石を使えばもう少しコンパクトに出来る。
黒竜の鱗も使い、指輪の魔法金属もちょっとだけ
今度は指輪1つで何とかおさまった。
単独での性能はサリナの土魔法装備より劣るがこれでかまわない。
何故なら新しい魔法
でもそれならカタリナ用だけでなくサリナ用も作っておくか。
カルミーネ君には代わりに炎熱の指輪を作ってあげる事にして。
新しい魔法
出来たのは光属性、風属性、水属性、土属性、氷雪属性、闇属性の6種類。
今までの魔法
今度のデザインは露出があまり多くないし色もそれほど派手ではない。
基本はベージュのブレザーにチェックのスカート。
下に白のブラウスと紺のソックス。
ブラウスの首元を飾るスカーフの色だけが属性によって異なる。
ちなみに今度の型紙はやはり異世界の『JKブレザー制服』というのを使った。
新しい
ほぼ全属性の魔力をあげた上で、スカーフが専門の特性を更に強化する形。
しかも
なお勿論『可愛いければ効果アップ』機能も残してある。
俺制作のグッズである以上その辺はお約束だ。
工作用魔法
これは高次元操作や炎熱、水圧、合成、圧縮、接着、錬成等工作に使用する魔法に特化した
魔法強化よりもむしろ様々な加工魔法を思いのまま微細領域まで使える事を目的としている。
ちなみに外見は灰色の上下ツナギ型。
思ったより出来が良かったので以降はこれを着装して色々作っている。
たまに気づいた時にはサリナ達の様子を見に行く。
腹が減ったら弁当を出して食べる。
動かないからあまりお腹もすかないけれど。
それ以外は制作作業か読書を延々と。
とにかく常に何かしている状態。
こうすれば不安を忘れる事が出来るから。
フラフラになるまで疲れたら寝る。
これくらい疲れれば悪い夢を見ないで済むから。
この前見た夢は最悪だった。
装置が開き出て来たロザンナの顔がのっぺらぼうだった。
思わず叫んで、その声で起きてしまった。
装置の計器を確認して正常動作をしている事を確認して一安心。
だから寝るのが怖くて出来るだけ起きている。
寝るのは本当に限界近くなった時だけ。
それをひたすら繰り返した。
実際は多分半月くらいだったのだろう。
でも時間の感覚があまりわからない状態。
そして。
新しい知識を求めて異世界の本を翻訳魔法を使いながら読んでいた時だった。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
部屋の3分の1を占める『遺伝子書換・テロメア長回復装置』からだ。
短いビープ音の繰り返しは異常発見では無く通知音。
処理がまもなく終わる事を告げる音だ。
俺は本を放り出して装置中程へ。
装置から排水音が聞こえる。
身体を改良しながら成長させる役目を終えた水が排水されている音だ。
これが終わると中の水滴等が魔法で取り払われる。
そうすれば装置の行程はほぼ完了だ。
蓋が開いて、意識を覚醒するために軽い魔力があてられて……
中に入っていた少女が目を開ける。
パチパチと眩しそうに瞬きをして、目をきょろきょろとさせた後、俺の方を向く。
「どうしたのですかお兄様、随分酷い表情ですわ。目にクマも出来ています」
俺は思わず少女を抱きあげ、そのまま抱きしめた。
◇◇◇
「つまり私とお兄様が若返った事は話す、お兄様が男だったことは話さない。そういう方針ですね」
「ああ」
現在は感動の対面とか状況説明とかを終え、今後の事について相談中。
「力試しで伝説の古龍と戦って、倒したのはいいけれど呪いで若返った。その話を聞いたロザンナも挑戦して、やっぱり倒したが若返ってしまったと」
「もしサリナちゃん達が成長して、その伝説の古龍と戦いたいなんて言ったらどうなさいますか」
「その頃には実際にあったいろいろを話していいだろ」
「王族だった事とかお兄様が男だった事とかもでしょうか?」
「……やっぱり取り消しで。でもまあ、なるようになるだろ」
「今はそれでいいですわね」
そうやって話がまとまったところで移動。
もちろん行き先はカナル村、サリナ達の家だ。
朝一番の時間だったからか3人ともいた。
いや3人ではなく4人だ。
何故かリーザさんまでいる。
「どうしたんですかリーザさん。確かシデリアの冒険者ギルドのマスター代理をやっていた筈ですよね」
「後任を見つけてやめてきたわ。そんな訳で今は一介の冒険者よ」
「リーザさんも今はここを拠点にしているんです。魔法を教えてもらったりもしています」
「ジョアンナさんに無断でだけれどあのお風呂のある家、あそこのサリナちゃんの部屋の隣をお借りしているの。実は
おい待て。
「監視しているのを俺にいったら意味がなくないですか」
「でもこれが一番確実で簡単でしょ。それにこれで問題があるとも思えないし」
うーむ。
でもまあ、これでリーザさんのたわわなお胸をまた味わえると思えば悪くない。
そういうことにしておこう。
「それではその子の自己紹介、どうぞ」
あ、リーザさん、これが誰かやっぱりわかっているな。
台詞の言い方と表情でわかる。
それじゃロザンナの自己紹介と行こうか。
「実は前にもここに来たことがあるのですけれど、わかりますでしょうか」
ロザンナはいきなりそう切り出した。
カタリナは? という顔。
カルミーネ君は何となくわかるけれどまさか? そう思っている表情だ。
そしてサリナが口を開く。
「ひょっとしてジョアンナお姉ちゃんのお姉ちゃんの、ロザンナさんでしょうか」
ロッサーナ、いやロザンナはにこりと笑みを浮かべる。
「わかった? ただ一つだけ今まで嘘をついていたことがあるの。本当は私はジョアンナの妹。色々あって2人とも若返っちゃっているの」
今回はサリナは固まらなかった。
だいぶ進歩したようだ。
「どういうことなんですか」
「それはね……」
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