エピローグ 俺、6人パーティの次女扱い?
第69話 事後処理の朝
翌日の朝。
俺は研究室にメモを残して転移門でカナル村、サリナ達の家へ。
「あ、ジョアンナお姉ちゃんだ」
だだだだっとカタリナがやってくる。
「おはよう。ごめんね、ちょっと帰ってこれなくて」
「おはようございます。お仕事お疲れさまでした」
「おはようございます。もうお仕事の方は終わったんですか」
サリナとカルミーネ君だ。
「おはよう。お仕事は終わったんだけれど、ちょっと研究したいことがあってね。だからしばらく森の家の研究室にいる予定。しばらく向こうにいるけれど、何かあったら研究室の扉をノックして」
「わかりました」
「あとロザンナお姉ちゃんは?」
カタリナに尋ねられる。
「仕事が終わってちょっとまた出掛けちゃったみたい。しばらくしたら戻ってくると思うけれどね。もしここに戻ってきたら森の家に教えに来てね」
「わかった」
「じゃあごめんね。森の家の研究室にいるから」
転移門で飛んで今度はシデリアへ。
冒険者ギルドへ行く前にまずは
季節は変わったがそれ以外の様子は最初にここに宿泊していた時と変わらない。
それなのにここを出たのが随分昔の事のような感じがする。
実際はまだ半年経っていない程度なのに。
いつもの看板娘さんが俺を見て頭を下げる。
「おはようございます。あらジョアンナさん、お久しぶりです」
おぼえていてくれたようだ。
「おはようございます。最近ちょっと仕事で遠出しているもので。お弁当の注文をお願いしていいですか。20個。中のおかずは色々お任せで」
「随分といっぱいですね。
「お願いします。それくらいしたら取りに来ますから」
お弁当を注文した後は冒険者ギルドだ。
ここの景色も来た時とあまり変わらないな。
そう思いながら歩くと案外すぐ冒険者ギルドだ。
朝一番の時間帯なのでそこそこ冒険者がいる。
だが俺の姿を見るとさっと皆さん道を開けてくれた。
うーむ、この辺も以前と変わらない。
そう思いながら中へ。
あ、窓口にいる女性がラシアさんじゃない。
まあラシアさんは休暇をとると言っていたから当然だけれど。
それでもやっぱり知っている人ではある。
「いまの
リーザさんは窓口に座ったまま肩をすくめる。
「ただの代理よ代理。ラシアさんが休暇を取るからって押し付けられちゃった。本当はもうギルドにいる理由も無いし、冒険者に戻るつもりだったんだけれどね」
なるほど。
「騎士団の方には戻らないんですか」
「ちょっと冒険者になってしたい事があってね。そう言えばまだあの魔法強化服とか色々借りているけれど、もう少し借りていていい?」
「そのまま使っていて構わないですよ。リーザさんなら問題ないでしょうし」
「ありがと。それで今日は何の用かな?」
「ラシアさんが返す道具をここで預かっていると聞きましたので受け取りに」
「ああ、あれね。それじゃ1番の窓口で」
それとも俺相手の時にはそうしているのだろうか。
その辺はラシアさん時代も含めてよくわからない。
1番の窓口でリーザさんは簡易転移門を12個出す。
「はいこれ。主に難民移動用と作戦時の事務方用に使っていたものだけれどね。あとまだ借りたままになっているのがネイプルとカナル村をつないでいるもの。あれも道路が完成したら連絡するから外すのお願いね」
「わかりました。それでは確かに受け取りました」
「本当は受領書を出すところだけれど、ちょっと物が特殊だから今回は無しで。まあジョアンナさんあてで問題が起きるとも思えないからそれでお願いね」
「はい」
「ところでどうするの、これから」
リーザさんはロッサーナの事を訪ねてこない。
あの時市街上空で俺とロッサーナが対峙していた事、そしてふっと2人が消えた事はわかっている筈なのに。
でもそれが今はありがたい。
「ちょっとばかりこもって研究をする予定です」
「サリナちゃん達の処もちゃんと顔を出してね」
「ついさっき顔を出してきました」
「それだけじゃなく、最低毎日1回以上」
「ええ、そうします」
俺は簡易転移門をポシェットに入れ、そして立ち上がる。
「それではありがとうございました」
「またね。あとここの代理、2週間以内に正規の代理が着任する予定だから、そうなったら後任さんの方もよろしくお願いね」
「リーザさんはその後どうするんですか?」
彼女はにやりと笑う。
「それはまだ秘密かな。でもすぐわかると思うわ」
何だろう。
もう一度頭を下げ、そして冒険者ギルドを出る。
ゆっくり歩いても5分もしないうちに
こんなに近かったかな。
あとお弁当が出来るまでにはもう少しかかるかな。
そう思いつつ中へ。
おっと、ちょうど看板娘さんが俺の頼んだお弁当を包んでいる処だった。
入口直ぐのベンチに腰掛けて作業が全部終わるのを待つ。
そう長く待つこともなかった。
「ジョアンナさんお待たせ。お弁当4種類が5個ずつで20個出来ました」
「ありがとう。はい、お代」
「正銀貨2枚確かに」
テーブルの上に山積みになっているお弁当の箱をポシェットへ収納。
「その収納袋、サリナちゃん達も使っていたけれど便利でいいですよね。でも高いんでしょうね、うちのあまり入らない割には大きい収納袋でも
「魔法使いだからその辺は仕事道具という事で。それじゃまた」
「まいどありがとうございました」
店を出る。
弁当が20個あれば一日2食で10日は持つな。
以前買っておいた分も含めるとその倍は大丈夫だろう。
そんな事を考えながら事務所経由で森の家へ。
研究室の扉に『研究中立入禁止』と『用があるときはノックしてね』の両方をかけて中へと入る。
扉を閉めた後、『遺伝子書換・テロメア長回復装置』を点検。
中の様子を直接見る事は出来ないが、計器を見る限り正常に動いている。
装置を大分改良したからいつになるかはわからない。
でもそう遠くないうち、おそらくは数日程度でロッサーナは目覚める筈だ。
いやロッサーナじゃなくてロザンナだな、今度目覚めた時は。
そしてもう一度俺の妹に戻る訳だ。
今度はジョアンナである俺の妹に。
その辺はサリナ達にどう説明しようか。
俺が若返った事も含めて話そうか。
男だった事は伏せて、若返ったのも自作の装置では無く何らかの魔獣とかのせいにして。
ロザンナが目覚めるまで俺はこの部屋で待つつもりだ。
例外としてトイレくらいは行くけれど。
あと1日1回ささっとサリナ達の顔をのぞきに行くけれど。
それ以外は基本的にここで、ずっと。
ロザンナとして目覚めた際、記憶があってもなくても彼女が困らないように。
今度こそ間に合うように。
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