お別れ

六平海史

お別れ

午後の空を見上げる。


国語の授業だが聞くつもりがない。


早く五十分間が過ぎてくれとひたすら  思う。


部活に所属していない僕はこの授業が終われば解放されるのだ。ここらが踊る。


先生が僕にはよく分からない短歌の説明をしている。


鎌倉時代のラブレターらしい。


僕には無縁だ。一週間前からは、


とても悲しかった。とても悔しかった。


僕にはあの子を幸せにはできなかった。


想いを伝えるときは、口で伝えるという子だったが、最期も口で伝えられた。


なんと悲しい別れ方だったろうか。


僕はこの一週間生きた心地がしなかった。


悲しくて悲しくて一人になると泣いてばかりである。


僕を大事にしてくれた唯一の人なのに。


いつまでも一緒にいたかったのに。


神様は理不尽だ。


僕からあの子を奪っていくなんて。


予期せぬところで別れてしまった。


もうあの子と一緒に歩くことはできない。


もうあの子と一緒に遊園地に行くこともない。


いつでも、あの子のいるところに行けばきっと会えるかもしれないが、会いに行ってはいけない。


今は、おそらく一生


あの日、僕は驚いた。驚きすぎた。まさかここで別れになるとは。


早すぎる。


二週間後に後に遊びに行く予定だった。


それも叶わぬ夢となったが。


僕は生まれてはじめて人を愛した。


そして、人に愛された。


おそらくこれからもこんな経験はできないだろう。


きっと僕は大丈夫だ。


きっとなんだってできる。


最期に彼女が言った言葉は、


「私がいなくなっても、ずっと見守っているからね。」

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お別れ 六平海史 @musaka

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