最悪の寝覚め
「起きな、さい!」
頬にビンタを喰らい、俺は目を覚ました。目を開けると、悪戯っ子のような笑みを浮かべた銀髪美少女の巨大な胸が飛び込んできた。
「ビンタして起こすなって言ってんだろ、エマ」
朝から胸が見れたのは悪い気分じゃないが。
「空はなかなか起きないじゃない、今日はアイツ等との会議よ」
か、会議か・・・俺の体はその単語に拒絶を示した。というか、学生なら誰だってこの言葉は嫌いだろう。偏見かもしれないが。
よって、ベッドからでない。
「早くいくわよ、リーダーなんだから」
「俺はそもそも、リーダーだと名乗った覚えはない、お前らが優秀な俺をリーダーにしただけだろ」
「自分で優秀って良く言えるわね、じゃあ優秀な空さんがいないと困ってしまうので、お願いしまーす」
エマがわざとらしく頭を下げる。
「断る」
「ムカつく」
「そもそもここは俺の部屋だ。とっとと出ていけ」
俺は頭まで布団をかぶり、完全防御態勢に。するとエマが俺の布団を引っぺがしに来た。
「もしかして、貴方の息子がズボンの中でとんでもないことになってるから布団から出ないのかしら?」
「な、なに言ってんだ!痴女発動させんな!」
「どうせ貴方は痴女好きなんでしょ?」
その通り過ぎる。
こんなやり取りを繰り返すこと、一時間。結局俺は根負けし、二人で寮を歩いていた。俺は腹が減ったので、おにぎりを片手に。
俺たちの学校に通ってる人たちは全員この寮だ。
この学校は、エリート騎士育成高校なので、生徒たちの自主性を育むという名目で、孤島にある。
そして、今日会議をするクソみたいな相手はエリート魔導士育成高校だ。
魔導士と騎士の違いといえば、魔法を使うか否かだ。正確に言えば俺たちは身体強化の魔法の使い手でアイツらはそれ以外。
「そういえば今どこ向かってんの?」
「もうしっかりしなさいよ、リーダー失格よ」
だからリーダーじゃねえ。
「他校との会議室よ、もうアイツら来てるみたいだから気合を入れなさい」
「気合?今の俺の状態と最もかけ離れた言葉だな」
「確かに今貴方、タコみたいな顔だものね」
「タコに失礼だぞ、タコだって気合入ってるかもしれねえだろ」
ここの寮はメッチャ広いので、会議室に行くのにも時間がかかる。
よって俺の体力はゼロに近い。
「はぁ、はぁ、も、もう疲れた」
「ねえ、そういうしょうもない演技はやめなさいよ」
「何故わかった?俺は助演男優賞もとったことがあるのに・・・」
「だ、男優?」
エマの頬が紅潮した。
「すぐ下ネタに結び付けるな、男優ぐらい普通に喋るだろ」
しゃがみこんだ俺を真似、エマもしゃがみ込んでくる。
コイツ、敢えて胸を見せてきやがる。
「おい、胸見せんな」
「ど、どこ見てんの!変態!」
エマが発言した後に真っ赤な顔をしている。
あれ?今無自覚だった?コイツもしかして責められるの弱い女子か。
良いことを知ったぜ・・・
「べ、別に見たいなら見てもいいけど?」
その誤魔化し方は無茶だろ。
「ホントは恥ずかしいんだろ?無理すんなって」
「うーざーいいい」
エマが俺を殴ってくる。全然痛く・・・いや痛い。痛い痛い!
そんな二人のやり取りに、急に声が挟まれた。
「お前らは時間も守れないのか?」
声の主は・・・
魔導士育成高校リーダーの、咲野 結菜だった。
元カノと俺の異世界転生話 冴えないkitoki @kai_tunndere
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