エピローグ
この世界で唯一の巨大ダンジョンを有する都市、ケイオロス。
混沌として活気あふれるこの街は、人も魔も生きていける場所である。
もしあなたが仕事を求めているならば、安心したまえ。たくさんある。
通りには、数々の商店が並び、商人や職人は引く手あまただ。
剣の腕に覚えがあるなら、自由治安団がいつも優秀な人材を求めている。
剣よりもクワをもって土を耕したいなら、郊外に広がる農園がいいだろう。
もちろん、冒険を求める荒くれ者なら、この街の中央にあるダンジョンに行けばいい。
魔でも大丈夫。力と才のある魔物は、誰でも街なかで職に就けるし、暗闇と戦いを好むならば、やはりダンジョンでその才能を開花させるとよいだろう。
夜の世界にしか生きられないあなたにも、墓地から夜の店まで揃っている。
それでも職に困ると言うなら、この街で有名な「就職斡旋所」を訪ねるといい。
ここを営むホリックは
いままで就職させることが出来なかった者は、ただのひとりもいないと言う。
魔族のホリック女史は有能だが、どこか恐ろしくて気が許せないという噂もあるが、それは古い情報だ。この赤髪の女性は、少女のような外見のまま、いまはすっかり丸くなった。
ただし、年中無休というのも古い情報。いまは、週に一度は休業日だから注意すること。
営業日はあらかじめ調べておこう。もし運悪く閉まっていたら、まあ一日のんびりと過ごせばいい。きっとすぐに職を紹介してくれるから、最後の休日を楽しめということだな。
街をのんびり歩いてみるのもよいだろう。運がよければ、ホリックの就職斡旋所にいる男が、休日を過ごしているのに会えるかもしれない。
彼は街でも名物だ。のんびりした、澄んだ目をした、そばにいる者を、どこか安心させる笑顔の男だ。
翌日、赤髪の美しき女史のオフィスを再び訪ねれば、今度はその男が、お茶を出してくれるだろう。そして、こう言うはずだ。
「あなたの就職のお世話をさせていただます。
ハロオ&ホリック就職斡旋所へようこそ」
┌────────────────────────────────────┐
│『魔王の配偶者』 │ 条件:対象への愛
│スキル:家事、忍耐力、理解、対暗黒波動など多岐に渡るが、
│ 上記条件を満たしていれば些細なことである
│勤務時間:永久。死がふたりを分かつまで
│労働環境:当事者の主観によるであろう
│報酬:対象からの愛。住居、まかない付き
└────────────────────────────────────┘
(『魔王の就職斡旋所に勇者がやってきました。』おわり)
魔王の就職斡旋所に勇者がやってきました。 藤浪智之 @tokeneko
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