第30話冥土のメイド

3つ目の部屋の扉(爆散していて原型をとどめていない)の前に立つ。


「あれ。見えるか?」

先輩が、何かを指し示した。


あれは…。大きな石?

いや。

岩と言った方が正しいのかもしれない。


なんで、部屋の中にこんなものが…。


「なんなんでしょうね…。」

「…見当がつかない。だが、注意しておくべきだろうな。罠かもしれん。」


警戒しながら、中へと入る。


部屋の大半を岩が覆っている。

さらに不思議なことに、なぜか床は土でできていた。


室内というより、外にいるような感じだ。

開放感がある。


岩の表面におびただしい数の文字が書かれていることに気づく。

Morisi Akai Median Radoclif Sakano Genta…。

これは…

名前?

なぜ、名前が…。



ふとよみがえる記憶。

そう言えば、先輩の家でもこここと、似たような場所があったような…。


確か死者を弔うための部屋とか言ってたはず。

もしかしたら、ここも…。


「この岩。…。慰霊碑のつもりか。…罪滅ぼしをした気にでもなっていたのかもな。…クソッ。」


【こんにちは。よくぞここまで来てくださいました。】

「うわっ!」


突然、聞き覚えのない声に呼びかけられたので驚く。


「いきなりどうしたんだ?」

先輩が不思議そうに俺の顔を見つめてくる。


俺にしか聞こえなかったのか?

だとしたら、さっき聞こえた声は幻聴?


【違います。幻聴ではありません。貴方の頭に直接語りかけているんです…その証拠に今から、私の姿を具現化しましょう。】


「…。」


目の前にメイド服を着た少女が一人現れた。

なんでメイド?

冥土だけにメイドってか!?

なんもおもしろくねぇよ!!

こ、今度は幻覚か…。

疲れてんのかな。

俺。


【だ・か・ら☆幻覚じゃないです!それに、この姿は貴方が一番好感を持てるようにと工夫して…。】


「はぁ!?べ、別に俺はメイドなんて好きじゃねぇよ!」

思わず声がでてしまう。


「…テンション高いな。」

先輩が冷ややかな目で俺を見つめる


「ち、違うんです。先輩。」


【そんなはずはないです!!貴方の頭を除いた結果、こういう姿になったのですから…。】


「なに人の思考を除いてんだよ!やめろ!」


【それは、無理ですねぇ。今貴方と私はリンク状態にあるので…。】


なんか先輩から冷ややかを通り越して、哀れみの目で見られている。

やめてくれ。

そんな目で俺を見ないでくれ。


(というかお前は誰なんだ。)


【コホン。…では、自己紹介といきましょうか。私は、この岩の下で眠る死者の願いから生まれた存在―所謂、希望の権化です!ホープちゃんって呼んでください。】


頭のcpu使用率が100%を超えて、限界に達したところで完全に気を失ってしまった。(俺って気絶してばっかだな。)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

普通の定義 酸化する人 @monokuroooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ