🆕新作 初等部篇 2 まだイケないの

🆕婚姻届は先生と出そう!の時間 1


 「先生ひどい!

  わたしのハダカ見たくせに

  わたしが好きって言ったくせに!💢

  うわぁん!😭結婚詐欺だぁ!😭」


思い詰めたかのように、泣き出してしまうゆかり。六年一組の担任、待った先生とその生徒の高田ゆかりの間に、いったい何があったのだろうか?。




 あおいが隠れ鬼ごっこ集団エスケープという大騒ぎを起こしてから、はや二週間の朝、あおいたち六年一組の面々は元気に登校していた。これはその、とある水曜日の物語である。




 黒百合女学院の幼稚部から高等部が集まる山手校の校内に、例によって、登校締め切りを知らせるチャイムが鳴り渡ると、すぐに初等部校内に始業五分前を告げるチャイムが鳴り渡る。

 お嬢様学校の黒百合では、将来に生徒が人様の上に立つ立場になることを想定しての、五分前行動を身につけさせるため、つまり指揮官先頭で皆に範を示せ!の意味の慣わしである。

 

 さっきまで、昨夜のアニメの話題や放課後に遊ぶ約束の会話や遊びに興じていた女の子たちが、サッと机に戻り着席する。そして教室の引き戸が開くと、級長の桃井カネコが声を張り上げる


「全員姿勢を正せ!。気分転換黙想!。

 黙想やめ!全員起立!。礼!」


カネコの指揮で、一斉に立ち上がり挨拶する生徒たち


「ごきげんよう

 先生、今日もよろしくお願いします。」


それに応える待った先生


「ごきげんよう

 早速ですが、点呼代わりに宿題の読書感想文を集めます。

 まず、出席番号1番!赤井あおい!。」


「はいはいハーイ!」


いつも通りに両手を元気いっぱいに上げて立ち上がるあおい。ところがそれに続いてあおいの口から飛び出したセリフは


「せんせー!わたしね、学長せんせーから

 

 「風邪ならお転婆しないで

  おとなしく良い子で寝て

  早く元気になるんだよ」


 って言われていたので

 宿題、やってませーん!。

 だけどねわたし、いい子だもん。

 

 でも、あの時のぉ、せんせーのわたしへの気持ち

 すっごく嬉しかったから

 ハイっ! プレゼントあげちゃう!♡」


そう言うや否や、ランドセルから一枚の紙を出して教壇に駆け寄るあおい。待った先生が


『まさか ラブレターのつもりか?』


とでも思っていると、それは何と婚姻届。しかも赤井あおいと記入押印されてる隣には、ご丁寧にも自分の名前が記入押印されているではないか!。

 一瞬、我が目を疑い、そして今この俺に何が起きているのだろう?と戸惑い、そして大声で叫んでしまう待った先生。


「な、なな、何だこれは!」


「え?せんせー知らないの?

 これはねぇ、婚姻届っていうのよ。

 保健室の先生に聞いたの

 せんせー、わたしのこと好きなんだよね!

 だから、善は急げ!なのだぁ。」


そんなあおいの言葉に、待った先生に初恋してラブラブなゆかりが、そして美佐もちはるもみずきも、立ち上がり大声で叫ぶ。


「あおちゃん ズルい!

 先生との婚姻届

 五人みんなで一緒に渡す約束でしょ!💢。」


「先生、わたしも先生との婚姻届

 書いて来ました!」


「放課後 区役所に付き合ってくださいね♡」


そう言いながら、教壇に押し掛けるゆかりたち。わけがわからないし、自分はロリコンではないから生徒を口説くわけもないし、その覚えは全くないしで、慌てる待った先生。


「待、待て!

 なんでこうなる!」


普段は内気でおとなしいはずのゆかりが


「先生、わたしに好きって言ってくれたじゃない!

 わたしが好きだから待ってくれ!って」


そう詰め寄るゆかり。これを聞いて


「えー!先生ってロリコン?」


とかなんとか、ざわめき出す六年一組。中には、ヒューヒューと口笛を鳴らして冷やかしている子やら


「先生、婚約おめでとうございます!」


と言い出す子までいる。そこに、おませな美佐が


「せんせーはゆかりちゃんだけじゃなくぅ

 わたしらが優しいから

 せんせーはわたしらの事、好きなんだよね?

 そうだって、保健室の先生が教えてくれたよ!

 大人になったら、わたしらから

 告白して欲しいんだよね?」


ここで、ハッと思い出す待った先生。


「待、待て

 それは教育上の一般論だ。

 お前たちには、優しさという長所があるから

 このまま優しい女性に成長してくれ!。

 そういう意味だ!。

 決してお前らを口説いてないぞ。」


だけど、すぐあおいに切り返されてしまう。


「せんせー

 大人なら自分の言葉に責任持たなきゃ!。

 

 「先生が好きなら

  優しい女になって

  改めて告白してくれ」


せんせー、ゆかりちゃんにそう言ったらしいじゃん?。


 でも安心してね

 今すぐ同居して夫婦生活しようなんて思ってないから。

 ちゃんと大人になるまで、わたしら我慢するからね。」


「ち、違ーう!誤解だー!

 あくまで一般論だ!」


大人気なく必死に否定する待った先生がふと見ると、ゆかりの両目に涙がどんどん貯まっていき、ついに


「先生ひどいよぉ!

 あの日、先生わたしのハダカ見たくせに


 わたしが好きって

 先生わたしに言ってくれたのにぃ!


 だから、だからわたし

 大人になるまで待つつもりだったのにぃ!

 

 先生のバカぁ

 結婚詐欺だぁ!。訴えてやるぅ」


大声で泣きじゃくるゆかり。



 益々わけわからない待った先生。でも、自分は全く悪くないはずなのに、生徒たちからの冷たい視線が肌に痛くて、生徒たちのヒソヒソ話が耳に痛い待った先生。

 ふと気づくと、六年一組の唯一の良識派で級長の桃井カネコと視線が重なった。助けを求めてしまう待った先生。


「桃井、ニコニコ笑ってないで

 すまん! 助けてくれ!」


しかし、カネコからの助け船に乗れない待った先生。なんと


「松田先生

 杏樹ちゃんから聞いたんですけど

 先生はわたしの事も

 好きだ!

 そう言ってくれたんですよね。

 わたしうれしいです。

 だから、わたしも先生との婚姻届

 書いて来ました!」


「桃井、何でお前まで!」




「これは何とかしなきゃ

 俺の教師人生が終わってしまう。」


そう思う待った先生は、必死に記憶を辿る。確かに俺はあの日・・・




「あー!いいなぁ

 あおちゃんのベビードール、かわいい!

 どこで買ったの」


俺はベビードールを下着と思わず、赤ちゃんの人形と思い込んで


「赤井~その人形見せてくれよ」


と、ついつい、いきなりクラスの戸を開いてしまった。体育前の着替え中なのを失念してしまって・・・



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春はあけぼの 黒百合女学院 恋の時間割 あおきあかね (江戸蘭世) @aokiakane

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