狩人だった主人公が勇者に選ばれ、とても個性的な仲間と魔王討伐の旅に出る物語です。
黒い靄が見える主人公。そのせいで村では周りに気味悪がられていた。そんな彼が狩りの途中大怪我をしていたところ、魔法使いに助けられる。そして魔法使いに連れていかれ、神官、吟遊詩人、賢者と出会う。その出会いは彼にとってかけがえのないものであり、例え彼らがとても個性的であったとしても勇者であることを決意するに足るものであった。
狩人だった勇者が非戦闘員の仲間たちと繰り広げる異世界ファンタジーコメディ。こういうのを仲間っていうのだろうなぁと、人間関係に荒んだ心にしみる作品となっています。
辺境に暮らす圧倒的な力を持つ青年が、神のお告げによって勇者に選ばれ、魔王を倒す旅に出る。
ファンタジーの王道ストーリーのはずなのに、この物語の勇者とその「剣の仲間」たちは一味も二味も違います。
癒しの力は圧倒的だけれど、敵である竜にまで情けをかけて勇者の剣を止めて隙をつくらせてしまう「神官」。知識と魔術は素晴らしいものの、魔王そのもののような容貌と雰囲気の「賢者」。目を奪われるほど美しく圧倒的な魔力を持つのに、戦闘中にシチューを煮始めてしまうような行動が読めない「魔法使い」。唯一、常識人に見える美しい「吟遊詩人」は、血が苦手でやっぱり戦いには向かない。
そう、勇者以外の仲間は、ほとんど戦う力を持たないのです。
けれど、読み進むにつれて、どうして彼が勇者に選ばれ、そして彼らが勇者の仲間——剣伴として選ばれたのか、むしろ彼らでなければならなかったのか、が徐々に明らかになっていき、同時に本当に強く優しい彼らを好きにならずにはいられません。
さらに物語に花を添えるのが、勇者と魔法使いそれぞれのとても個性的な恋。二人の純粋さがとてもとても厄介なそれぞれの相手の心を動かしていく様子が、本当に切なく美しいのです。
世界の淀みと人間の罪という重いテーマが根底にありながらも、思わず爆笑してしまうような楽しいエピソードと試練や苦難のお話のバランスがよく、退屈する暇もなくあっという間に読み切ってしまいました。
ドラゴン、ドワーフ、人魚など幻想的な生き物が生き生きとしている魔法に満ちた世界で、多くの困難と向き合いながらも、シダルたちならばきっと大丈夫、と何となくそう信じて心の底から楽しむことができる正統派ハイ・ファンタジー。ぜひ彼らと共に旅をして、勇者シダルと仲間たちの物語を見届けてください。
最後にこれだけは言いたいのですが——ハイロが最高に可愛いです!