第56話 お昼休憩時に
初めてのお見合い相手の
「
通常は、あのような状態で仲介者が帰ってしまうのは、あってはならないことなのかな?
断られた理由は、告げられない。
ただ、あれだけ潔癖だったら、私のこと不衛生な女だと思ったんだろうな。
もしかしたら普通の女性だったら怒るところなのかもしれない、妙に潔癖症すぎる男性なんてこちらから願い下げ、と思う人がほとんどだと思うので。
自分から断るのが苦手な私からすればホッとしたのだけど、なんだか『断られた』ということ自体は少し落ち込む。
「落ち込むことないって、ご縁がなかっただけよ」
「話聞く限りだと、その人は殆どの女性をお断りしていると思うよ?自分と同等かそれ以上の潔癖症さんに出逢わない限りね」
そうなのかもしれない。
「なにか面白そうな話してるじゃなーい!」
突然後ろから声をかけられる、振り向けば
今はお昼休憩時間、ここは勤務先ビル内にある休憩所なので、不特定多数の人が集まる。
「久し振りね、これからお昼休み?」
「そうなの!
そう言って
婚活自体は去年からはじめてはいたのだけど、紹介所のようなとこに入会したのは最近だ。
最近いつもの女子会メンバーで集まってはいないが、こうしてお昼休憩時にかぶったときに報告はしていた。
「私、初めてのお見合い断られちゃいました」
極力明るく振る舞って、伝えたつもり。
「
うっ、よくわかっている…。
「はい…」
私は素直に認めた。
「どんな人だったの?」
「とても潔癖症な方でした、カフェのテーブルからメニューまでウェットティッシュで拭きまくりで、話題はこれまでお見合い断ってきた女性についてが中心でした」
私はありのまま話した。
「うわ、それはないわー!」
そして
「次の方にご縁があるといいわね」
慰めてくれた。
「大丈夫よ、
「ねぇ、
「大丈夫心配しないで、壺売りつけるとかそんなことしない先生だから」
壺って…。
世間の占いに対する評価はざっくり二分にわかれると思う。
占いと称し、わけのわからない壺やグッズを破格の値段で売りつけ暴利を貪っている話を私でさえこれまで何度か耳にしてきているので、
情報魔の
「いやさぁ、壺じゃなくてもね、ここ数年あなたパワーストーンのブレスレットつけてるじゃない?あんなにアクセサリーつけない人だったのにさ、そのブレスレットでめちゃ金取られてない?」
言われてみれば、
石の名前はわからないけれど、ピンクと紫と水色の組み合わせで綺麗だなと思っていたのだけれど…。
「ああ、これね!そんな高い値段は取られなかったわよ?これを身につければご利益が必ずあります、なんて売りつけられた訳じゃないし、私自身がこのデザイン気に入ってるし」
「そんな高くないとか言うけどさ、大丈夫かな、うん十万とか取られてんじゃないの?」
「あはは!そんなしないってば!」
「まぁね、
「おい、お前ら三密だぞ?」
ここで
そういえばコロナ禍がはじまったばかりのころ、3つの密を避けましょう、とかいわれてたなと思い出す。
「ハハハ、ちょうど3人だしね!
「いや、笑ってはいられないんだ、さっき
「
「そう、
とうとう女子会メンバーのうちの一人がコロナに感染した、
——あとでラインしてみよう——
このラインで、
婚活、はじめました。 帆高亜希 @Azul-spring
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。婚活、はじめました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます