第14話 悪い顔してますよ?
私は目の前の少年をまじまじと見つめた。
彼は未来を変えたいのだ。
それが一番大きな目的だという。
平安時代にとても似ている異世界に生きている彼は、後鳥羽さんの歌を聞いて、寂しいと言った。
全ての状況を繋ぎ合わせると、彼が居る異世界は、今後鳥羽さんが直面した部分に当たる?
と考えられるのだろうか?
しかし、『今をときめく宮』とまで言ったのに。
滅びそうな時期に、皇子はときめかない。
順徳院じゃないけれど、古き軒端の忍草すら抜けないのだ。
衣装や装飾品だっていっぱいいっぱいな筈。
瑠佳君て、そういう生活苦の様なものが全然出てないのよね。
そう、自分で言って置いてなんだけど、忘れられた宮様的な雰囲気が感じない。
じゃあ、未来?
瑠佳君が直面していないまでも、子孫が直面するとか?
子孫の代の事でそんな無理ってするかしら?
「凪子先生」
「……はい?」
熟考中の為、生返事を返した。
「変えたい未来はありますか?」
変えたい未来……。
変えるのは基本的に過去だと思う。
未来は分からないから変えられない。
それを大前提として聞かれているのなら、やがて来るであろう未来が予測出来る場合だ。
これは実は少ないようでいて結構あるのだ。
簡単な話なら、三日後に予定されているもの。
これは多くの場合その通りにやって来る。
三日後が文化祭なら、文化祭が三日後に行われる可能性が高い。
一年後が受験なら、一年後に受験が行われる可能性が高い。
もし、受験に落ちるという未来を知っていてら、沢山勉強して回避するだろう。
もっと具体的にテスト問題を知っていたら、確実に回避出来る。
彼は未来を予測しているのか?
彼は未来を知っているのか?
陰陽師は和風魔法使いだ。
万物の法則に抗う力を手にした人間。
瑠佳君が何のために私が生きている時代に来たのか?
行動原理を考えれば、以外にシンプルな事実が浮かんで来る。
知りたかったのだ。
未来をーー
元の世界から見れば過去を。
平安時代にそっくりの異世界に住んでいる皇子様は、平安時代が滅んでしまった理由が知りたかった。
例えば、織田信長が現代にタイムスリップして来たら。
まあ、当然だけど本能寺の変を回避する方法を考えるよね。
当たり前っちゃあ当たり前の話だ。
じゃあ、第四皇子は何を考える?
平安時代が滅んでしまった原因を考えるわよね。
私だってさ……。
もし近い未来に
『日本が滅ぶ』
という不吉な未来を知っていたら?
悲しいなと思う。
原因を知りたいな……と思う。
『あの時、ああしていれば』
なんて言葉は、本当に詮無い事なんだけど。
でもーー
あの時を変える方法を知っていたら?
人はどうするんだろう?
為政者ならば……変えるはず。
『あの時、ああしていれば』
でも裏を返せば『あの時、ああしていれば』違う未来が待っていた。と言うことだ。
歴史なんてほんの一つの動きで変わっていたのだ。
あの人のあの動きさえなかったら。
あの人のあの政策さえなかったら。
あの人のあの一言さえなかったら。
あの人さえいなければーー
うん。考えていたらきな臭くなってきたわ。
これ以上は突き詰めない方がいいかしら。
でもーー
変えたいという発想事態は事後に起こるものだ。例えば栄華を誇った平安初期から中期に生きた人間に、未来の改変希望って起こるだろうか?
という疑問が湧く。
平安初期に生きた
そりゃそうよね? 歌の明るさが違うわ。
しかしーー
ここで一番大切な事が。
人は過去は変えられないのだ。
当たり前っちゃあ、当たり前よね。
流れた時間は元には戻らない。
変えられるのは未来だけ。
瑠佳君が変えようとしているのも、当然未来だ。
時間というのは、客観的に流れているように見えて、実は主観で流れている。
過去から未来へ時間は流れている。
未来から過去へは流れない。
けど、軸の進む速度が違う。
この速度調節を行えば、人は未来に行けるのかな?
陰陽師の術というのは、科学ではなく万物の法則に干渉出来る魔法だ。
物理法則では考えにくい。
時間と空間を操る術?
可能性は無限に広がっているように見えるが、実はかなり制限がかかっている筈だ。
どうやって干渉して、捻じ曲げてるのかしら?
気になる。
気になる。
気になるわ。
大切な事なので、三度言いました。
転移したら、第四皇子の教育係になっていました!? @hinata_yuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転移したら、第四皇子の教育係になっていました!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます