薬も過ぎれば毒になる

中ノ瀬

薬も過ぎれば毒になる

 すっかり聞き飽きてしまったチャイムを合図に教室の扉が開く。六時間目が終わり、帰りの支度をし始めていた三嶋みしま透子とうこは、目の前の教卓に荷物を置いた担任と目が合った。そこから恋が始まるわけもなく、透子は机の中に押し込んでいた教科書類を廊下に設置してあるロッカーの中に入れるために立ち上がる。

「三嶋、進路調査票は?」

 はて、と首を傾げると、担任の青木あおき翔斗しょうとは配布物が入った収納かごから見たことなさそうでありそうなプリントを渡してくる。抱えていたものを一度自分の机に置き、それを受け取った。

「出してないの、三嶋だけだよ」

「〆切いつ?」

「下に書いてある」

 言われた通り下方に目をやると、今週の頭の日付が印字されていた。

「いつまで?」

「既に遅れてるんだから早く出して」

「努力はする」

 透子の返事に対し、担任はあまり期待していないことが明らかなため息をつく。その態度を不満に思いながら再び廊下を目指そうとすると、ショートホームルームを始める号令がなされてしまった。仕方なく声に合わせて首だけの礼をし、透子は席に着いた。

 またよく分からないプリントが配られる。透子は自分の分は取らずにそのまま後ろの席に回した。一番後ろのクラスメイトが余ったことを主張しながら律儀に前までプリントを運んでくる。それを受け取った担任は、当然といった様子で透子の机の上に置いた。透子も負けじと教卓にプリントを移す。

「先日、学年集会でも言われたと思うけど、もう春には受験生だからね。しっかりとそれを自覚すること。何かあれば、僕じゃなくても、信頼できる先生に相談すること。以上」

 号令に従って立ち上がるが、礼はしなかった。頭を上げた担任とまた目が合う。目が訴えかけているのは分かったが、気づかないふりをした。

 今度こそ、と教科書類の上に戻ってきた不必要なプリントを重ね持ち上げる。重石をしていないため、すぐさまプリントが床に静かに落ちた。どうせ必要ないと見なかったことにしようとする。

「透子、落としたよ」

 振り返るとプリントについた埃を払う徳倉とくら茉希まきがいた。脇には廃棄寸前のほうきがある。

「それゴミ、捨てといて」

「さっきショートが配ってたやつじゃん。これ個人面談の紙だよ」

 落とさないようにと教科書の間に挟みながら、茉希は母親のように小言を言う。担任が無理やりにでも渡そうとしていた理由が分かり、小さく頷いた透子は教室を出た。下から二番目にあるロッカーの扉を開ける。ダイヤルがついた南京錠をつけるように言われているが、透子は何かが盗まれるよりも開ける際に手間がかかる方が煩わしいと感じていた。開くと同時に中に押し込められていたプリント類が雪崩を起こして襲ってくる。それを受け止めようと持っていた教科書から片手を離すが、すぐに耐え切れなくなり、ほとんどが廊下に散らばった。

 物音を聞いて、茉希が教室から顔を出すのと、透子が立ち上がった弾みに反動で閉じかけていたロッカーの扉に頭をぶつけるタイミングが合う。

「ちょっと、透子大丈夫?」

「……痛い」

「だろうね」

 通り過ぎるクラスメイトや、学年もよく分からない人にちらちらと向けられる視線ほど痛いものはない。透子は尻もちをついた状態から腰を上げ、ロッカーの扉を最大限まで開いて押しつけた。

「茉希、ちょっと臭う」

「え、嘘。朝めっちゃ頑張ったのに」

「もう夕方だし効果切れたんじゃない?」

 頼んでもないのに散乱した透子の私物を集める茉希が教室から呼ばれる。少し迷っている様子だったので行くように言うと、ちゃんと片付けなよ、とお叱りを受けた。

 一息吐き出し、透子はその場に胡坐をかく。そして目に付いたものから無造作にロッカーの中へと戻していくことにした。たまたま目に入った不必要なものは別にしておく。ただ、その配慮を全てのものにするのは億劫であった。簡単に外せる棚の仕切りの下の部分に入りきらなくなり、上の段に残りのプリント類を押し込むことにする。先ほど貰った個人面談のプリントと、催促をされた進路調査票は、これ以上担任に何か言われるのも面倒なので、一緒にして足元に避難させた。

「ん、なんか突っかかってる?」

 奥まで思うように入らず、ロッカーの奥に手を伸ばした。膝ほどの位置にあるロッカーの中を同じ目線になって覗くことはあまりない。手に何かが触れた。自分が影になりはっきりは見えないものの、手の収まり具合からそれが何であるかは簡単に分かった。透子はそれを誰にも見られないようにスカートのポケットに忍ばせる。そして乱暴に残りのプリントをしまい、大きな音をたてて扉を閉めた。

 教室に戻ると既に掃除は終わっていた。透子は二枚のプリントを手にしたまま、チャックが全開のリュックサックをひったくるように持ち、教室を出る。途中、前の扉に一番近い机に足をぶつけ痛い思いをするが、なるべく顔に出さないようにした。

 クラス教室が並ぶ廊下を途中で曲がる。いつも通り電気のついていない廊下がそこには続いていた。透子は壁にある電気に手を伸ばすこともなく、そのまま三つ目の教室の扉を開けた。

「青木」

 そこには先ほど目の前の教卓に座っていた担任がいる。慣れない薬品の臭いが鼻をくすぐった。透子は音をたてて鼻をすする。

「先生、ね」

「『ショート』はいいのに?」

「それも駄目だよ」

 画面の中でしか見たことのなかったビーカーでコーヒーを飲むという行為をする担任は、空いている椅子に座るようにジェスチャーをする。古びているためクッション材がへこんでしまっている。座り心地は全くもってよくなかったが、それしか用意されていないので仕方がない。透子が背もたれに体重をかけると、奥歯が痛むような音が鳴った。

「コーヒー飲む?」

「苦いの嫌い」

 だと思った、と担任はインスタントの緑茶を用意する。回転寿司のときに飲むような、粉が下に溜まっている緑色の液体が入ったビーカーを渡された。

「三嶋、見た目と反して結構子どもっぽいよね」

「反して、って何さ」

「うーん、例えば、校則なんか気にせずにバチバチにピアス開けてるところとか?」

 顎の先くらいまでの髪で隠しているものを口にされ、透子は無意識に眉間に皺を寄せた。毎日ストレートアイロンを使って念入りに髪を整えているが、風紀検査のときには全く意味をなさない。いつも決まって親より十歳以上、見た目はそれ以上の進路指導主任にお叱りを受けるのには慣れてしまっていた。

「僕は別にいいと思うけど、まあ規則は規則だからね」

 しかしこうして担任があまり否定的でないどころか、放任主義に近い部分があるのは、未だに違和感がある。文句を言われないに越したことはないが、調子が狂うのも事実であり、透子はあまり担任のことを好いてはいなかった。

「青木って全肯定botだよね」

「『先生』」

「青木は何で怒らないの?」

 透子の質問を聞いて、担任はわざとらしく悩むふりをする。分かりやすく「うーん」と声を上げる、と同時に白い息が吐き出された。冬だというのにこの教室は寒い。透子はリュックサックからマフラーを引っ張り出し、足掛けにする。

「怒らないか、に関しては簡単だよ」

 何杯目か定かではないコーヒーを飲み干し、担任は話し始めた。透子は伸び切ったセーターから第一関節分だけ覗かせた指に息を吹きかける。

「怒るって感情だからね。笑うとか泣くとかと一緒。叱ることとはまた別もの」

 何を言っているのかが分からず透子は首を傾げるしかなかった。担任は苦笑いをしながら言い換える。

「子育て論みたいなのでよく言われるけど、自分の感情を抑えきれずに表に出すのが『怒る』で、人のことを思って指導するのが『叱る』。基本、進路指導の先生とかがやっちゃうのは怒る方だよね。何でそんなことも守れないの、って言うでしょ」

「何度言ったら分かるの、とも言われる」

「実際職員室でも、何度怒っても直さないって愚痴を言ってるけど、まあ怒っているって思っているうちは駄目だと思うよ」

 担任が何を言っているのか、半分も分かった気がしなかったが、思い当たる節はある。確かにどんなに悪さをした生徒も、他の先生には手に負えない生徒も、この大人にはそれなりに素直だ。

 透子も例外ではなかった。入学当時からスカートが短いだの、身だしなみがなっていないだの、口を酸っぱくして散々言われてきていた。ただでさえ周りと似たような服を着ているのだから好きなようにさせてほしいというのが透子の言い分だったが、それを言えば、これからの社会で困るだなんて全てが分かりきっているような文句で一掃されてしまう。そんな大人が嫌いだった。

 ただ、当時は化学の担当というだけの存在だった今目の前にいる大人は違った。透子の言い分を最後まで聞いた上で、白い目で見られる覚悟があるなら、とただそれだけを言った。頭ごなしに否定しなかっただけでも、透子にとっては救いだった。大袈裟に思えば、自分を貫く自信を与えてくれたのが、青木翔斗という大人だったのだ。ただし、それと好いているか否かは透子の中では結び付かず、この大人も軽度ではあるが苦手に部類されている。

「全肯定に関しては、正確には肯定してないからなぁ」

 再びわざとらしく悩む動作を始めたところで、教室の扉が開いた。透子にとっては見覚えのない生徒だったが、担任のことを「ショート」と親しみを持って呼んでいるあたり、茉希や他のクラスメイトとあまり変わらない。会話のキャッチボールが三往復ほどされ、生徒の方が手を振った。担任もそれに則って手を振り返す。

「誰?」

「部活の一年生」

「なんで?」

「今日クッキング部の活動日だから」

「……クッキング部の顧問なの?」

「そうだよ」

 透子に渡していたビーカーが空になったのを見て、尋ねもせずに追加でお湯を注ぐ。底に溜まっていた緑の固体が熱で溶け出すのがよく分かった。

「インスタントコーヒーとかは権限を利用してこっそり頂戴してる」

「職権乱用」

「悪く言うとそうだね」

 担任が壁にかかっている時計をちらりと確認するのを見て、透子も同じ方向に視線を向けた。もうすぐ午後四時半。確かになかなか部活に来ない顧問を呼びに来る時間としては妥当だった。

「それで、三嶋は何の用で来たの?」

 そう聞かれてここまでは持ってきたはずのプリントのことを思い出す。空いている机に投げ出していたリュックサックの下敷きになっているのを見つけ、担任に押しつけた。

「進路調査票、見つかった」

「お、偉い」

 適当に半分に折った跡や、ここに持ってくるまでについた皺を伸ばしながら担任は目を通し、隠すこともなく失笑した。

「何にも書いてないよ」

「名前は書いた」

「そうじゃなくて」

「だって進路なんて分かんないもん」

 それこそ保育園や小学校に通っていた頃は、アニメに影響されて魔法少女になりたいと夢を見たり、ドラマに感化されて探偵や怪盗になった自分を思い描いたこともあった。だが、それと同じ要領で行きたい大学やなりたい職業の話をする同世代とは同じようになれなかった。すごいと思ったり、かっこいいと感じたりすることはあっても、そこに自分を投影することができなかった。

「みんなすごいよね。二十年弱生きただけで、今後四十年くらい続けるかもしれないことをポンと思いつくんだよ」

 その思考が我が儘の延長であることぐらい分かっていた。ただ焦っているだけかもしれない。それでも透子は、自分が何をしたのかなんてことを考えることすら億劫になっていた。考えたところで答えが出ないと思い込んでいる。

「そんなみんなからすれば、今、高校っていう場所で自我を通している三嶋もすごいと思っているんじゃないの」

「陰口叩くくせに?」

「基本妬みから生まれるものだからね」

 もうコーヒーは飲まないのか、担任は窓際に移動しビーカーを洗い出す。透子はまだ半分ほど残っている緑茶を流し込み、流しに置いた。

「来週の頭まで待っているから、自分なりの答え探してきな」

「この週末で、今後の人生を決めろって言うの?」

「そこまで壮大に考えなくてもいいよ」

 二人分のビーカーをすすぎ終わり、よれた白衣で濡れた手を拭う。冷水で赤くなった皮膚が痛々しく見えた。

「試しに周りの大人に、何でその仕事をしているのか聞いてみれば? 三嶋の両親、二人でお店開いてるでしょ」

「大した店じゃない」

 リュックサックに進路調査票と個人面談の日程調整が書かれたプリントをねじり込み、チャックを閉める。担任と一緒に教室を出た。電気が消されたその教室は気味が悪い。カーテンの隙間からこぼれる冬の日光が、埃を照らしていた。

「じゃあ、青木は?」

 電気のついた廊下に出て、階段を下る。よく聞こえなかったのか、先を歩いていた担任が振り返って聞き返してくる。

「青木は何で先生になったの?」

 また白々しく悩むのだろうと思っていると、担任は歩くのをやめて少しだけ顔を俯かせた。この学校は節電なのか何なのか、廊下や階段のところどころの照明がついていない。もちろんスイッチを押せば明るくなるのだが、ただ通るだけならと面倒くさくなってしまうのが原因だろう。そのせいで、担任の表情がよく見えなかった。

「先生になった理由か」

 小さな声だったが、透子の耳にははっきりと聞こえた。

「学校に未練があるから、かな」



 歯に挟まったエノキのような何かを残したまま、担任と別れた。靴箱を足で開け、かかとを潰していた上履きを足で蹴り入れる。壊れかけのローファーに足をかけて外に出た。既に日が沈みかけている。校門に続く道に最低限配置された電灯がタイミングよく灯りを点す。

「透子、遅かったじゃん」

 校門に一番近い電灯の下で待っていた茉希がそう言って手を振った。別に一緒に帰る約束もしていなかったので、体感五秒ほどフリーズしてしまう。どうしたのかと尋ねようとする前に茉希は透子の右腕に手を回し、暖を取ってくる。

「寒すぎて死ぬかと思った。何してたの?」

「青木のところ行ってた」

「あ、ショートの巣穴?」

 そういえばこの学校の理科室はそう呼ばれていたな、と透子は思いながら、体重をかけてくる茉希を引き剥がした。少し残念そうな表情を見せる茉希は、透子が担任の元に行くのが珍しいと知っていたのでさらに質問を重ねる。

「何しに行ってたの?」

「何でもいいでしょ」

「えー、私と透子の仲じゃん」

「そこまで仲よくない」

「傷つくなぁ」

 最高気温でさえ一桁が当たり前だというのに、いつものように校門の前に立っている警備員の人に軽く会釈をして学校の敷地を出た。交通機関を利用する生徒は右に曲がるが、透子と茉希は目の前の横断歩道を渡り、そのまま真っ直ぐ進んでいく。

 見た目と態度から、透子のことを毛嫌いしている生徒は多い。透子自身もそれに関しては気にしないようにしていた。それにそこまで友達というものを重要視していない。

 しかし、徳倉茉希は別だった。同じクラスになったのは、今年度、二年生からだった。特に出席番号が近いわけでも、背の順で前後になるわけでも、選択授業で一緒のクラスになるわけでもなかった。ましてや共通の趣味などない。透子は茉希が何を好んでいるのかは知っているが、それに興味はなかった。

「今日も透子のお店行っておやつ食べてからでいいよね?」

「……また?」

「いい素材が目の前にいるのに、私が黙ってるはずがないでしょ」

 重量感のある学生鞄を掲げて誇らしげに笑う茉希は、透子の表情とは裏腹に高揚感で溢れていた。透子はその温度差に顔から感情が引いていく感覚に陥る。

 十分もかからずに目的の場所に到着する。世界観を大切にしている外装をした店の扉を引いた。反射的に浴びせられる「いらっしゃいませ」に続いて、透子だと分かった人から順に「おかえり」という言葉を上乗せする。

「相変わらずホーム感がすごい」

「じゃあ娘のポジション譲るよ」

「ホント? 透子の家のご飯が毎日食べられるのは魅力的」

 案内されることもなく、透子と茉希はカウンター席を選び、床に直接荷物を置く。足元に荷物を入れる籠が用意してあるが、二人ともそれを使うのが面倒だった。言い方を変えるならば、この場所は二人にとって家のリビングと大差なく、ソファに荷物を投げ置くのと変わりない。

 透子の両親は透子が生まれる前から、この場所で小さな飲食店を経営している。たまたまその近くに公立高校があるため、いい立地にあるくらいにしか透子は思っていない。進学を決めた理由も家が近いの他に何もなかった。

「私、自家製プリン!」

 メニューを見ずに茉希は片手を挙げて元気よく注文をする。ピカピカの一年生の授業のようだった。透子はカウンターに貼り付けてある新しい広告を指差して、「これ」とだけ言う。だが、カウンターの向こう側から何を指差したのかを確認しようと身を乗り出してくる母親が煩わしくなり、「コーヒーゼリー」と付け足した。

 外では耳鳴りに近い午後五時のチャイムが鳴っている。注文したものが出てくる間、隣に座っている茉希は透明なケースがはめられたスマートフォンに夢中のようだった。透子は外していなかったマフラーを取り、横髪を耳にかける。ピアスで飾られた両耳が露わになった。

 初めてピアスを開けたのは、中学を卒業した三月だった。最初にそれを見た両親にはひどく叱られたが、ちゃんと話せば分かる人たちなので今は黙認という形になっている。というものの、その理由も当時の透子がその場ででっち上げたものなので、定期的に穴を増やしていく理由がはっきりとしているわけではなかった。それに、開けた穴全てが残っているわけではない。うまくいかなかったり、気に入らなかったりで、塞いでしまったものもある。

「また普通の付けてる」

 画面から目を離し、透子の方に顔を向けた茉希は不満そうな顔をした。分かりやすく口を尖らせる。

「普通って何」

「こういうおしゃれなのとか、かわいいのとか、透子に似合いそうなものとかあるのに、なんでそんなシンプルなものしか付けないの?」

 ほら、と伸びた爪で画面をスライドさせる。華奢なものからデザイン性のあるものまで、いくつかの画像を見せられた。画面に触れるたび、カチカチと爪で音を立てている。

「あんまり興味ない、かな」

「じゃあなんでそんなにいっぱい開けてるわけ?」

「……さあ」

 両親に言われたときにどんな言い訳をしたかすら覚えていなかった。二年前のことをしっかりと覚えている方が、もしかしたらおかしいかもしれない。

「もうすぐ誕生日でしょ。こういうの一個あげようか?」

「着飾らない私が好きなんじゃないの?」

「それはそれ、これはこれ」

 話したいことを話したからか、茉希はまたスマートフォンにかかりっきりになってしまう。透子は手持ち無沙汰になってしまい、自分の耳に触れた。熱を持つ肌と、それを貫通している異物。隣にいる茉希の耳は、きっと生まれたときから変わらない無傷な状態で、確かに自分がおかしいかもしれないと思ってしまう。

 しばらくすると、二人が注文したプリンとコーヒーゼリーが運ばれてくる。茉希がしっかりと写真を撮った後、透子はそれに付き合うようにしてから食べ始めた。美味しいと何度も口にする茉希とは対照的に、透子は三口ほどで完食する。手の空いている母親に器を預け、荷物を持ち、店の奥に移動した。

 奥の階段を上がれば他と変わらないリビングとダイニングがあり、そこに隣接している自分の部屋に鞄を放り投げる。ベッドを狙ったが飛距離が短かったようで、床に落ちる鈍い音が響いた。照明を点けるのは面倒で、手探りで棚を開き、中からマッチ箱を取り出す。ついでに目に入った何となく買ってからあまり減っていないのど飴を一つ口に入れた。途中、姿見に映った暗闇にいる自分が目に入る。透子はそれから目を逸らしながら、耳にかけていた髪を押し撫でて、耳を隠した。マッチ箱を数回揺らし、中にまだ入っていることを確認してから店に戻る。

「茉希、行こ」

 店に戻ると、カウンターを挟んで茉希と母親が談笑していた。力任せに腕を引いてしまい、茉希の体勢が崩れそうになるのを何とか支える。

「心臓がバクバクした」

「ごめん」

 ごちそうさまでした、と声をかけて荷物を手にした茉希を背に、透子はカウンターに置き去りにしていたマフラーを持ってさっさと店を出ようとする。一言も声をかけない娘に何か言うわけでもなく、母親は二人の背中に向かって言った。

「いってらっしゃい」

 茉希はその声に反応して手を振った。乱暴に扉を開けた音と透子の舌打ちが重なる。

「……いってきます」

 茉希に促され嫌々言ったその言葉は、扉の閉まる音にかき消されてしまった。ついさっき口に含んだのど飴を噛み砕く。茉希はさっさと歩いて行ってしまうその背中に追いつき、透子が手に持っていたマッチ箱を強引に奪った。

「これ、どうしたの?」

「持ってきた」

 噛み合っているとは言えない会話がされる。茉希は透子の右手に自分の左手を滑り込ませた。透子の表情は特に変わらない。女子特有の馴れ合いのひとつだった。

 五分もしないうちにベンチと街灯だけの公園に着く。茉希はベンチに学生鞄を置き、中から両手にも収まりきらない大きさのカメラを取り出した。次にレンズを手に取り、本体に装着する。透子はその様子を眺めながら、ローファーを滑らせて砂で模様を描く。その形に意味はないが、砂の溜まる位置で可動域が視覚化されていた。

「透子、明かりが届くところに来て」

 シャッター音を数回鳴らした後、茉希は街灯の方を指差して言った。透子は足元にできた砂の固まりを蹴散らしながら移動する。その間にも何度かシャッターを切る茉希はカメラの液晶画面で確認をして首を傾げた。

「スカートのポケット、何か入れてる?」

「……ああ、うん」

 透子は今の今まで忘れていたものを取り出して、茉希に投げ渡した。取りこぼしそうになりながらも何とか手の中に収めた茉希は、それが何かが分かると小さく声をたてて笑った。

「何で透子がこれ持ってるの?」

「ロッカーに入ってた」

「あー、いつかふざけて放り込んだやつかな」

 茉希は慣れた手つきで箱を開け、中から細長い筒状のものをひとつ取り出した。先ほど透子からひったくったマッチを擦り、火をつける。

「未成年喫煙」

「今更?」

 笑い声と共に吐き出された白い煙は、寒さから出るものではなく、明らかにそれのものだった。冷たい風が頬を撫で、何度嗅いでも慣れない臭いが鼻をかすめる。

 制服姿で首から重々しいカメラを提げ、宙に煙を吐き出す茉希の姿が、透子には輝いているように見えた。傍からしたら、違法行為をしている高校生かもしれない。しかし透子にとってそれをする茉希は自由の象徴のようにも思えた。

 ふと担任に言われたことを思い出す。高校という場所で自我を通そうとしている自分も、こんな風に見えているのだろうか。

 茉希はタイミングを見て、またカメラのシャッターを切る。フラッシュの光に目を細めながらも、空に昇っていく白いもやを追っていた。

「茉希」

 どのくらいそうしていたかは分からない。茉希が一本目をスニーカーで潰し、二本目に口をつけた頃、透子は相手の名前を呼んだ。首にかかる重さに疲労を感じ始めていた茉希は、ベンチにカメラを置きながら曖昧な返事をする。

「茉希は専門学校に行くんだよね」

「そうだよ。世界中に三嶋透子っていう女の子を知ってもらうためにね」

 身を投げ出すようにベンチに身体を預けた茉希は、透子に隣にくるように空いているところを軽く叩く。

「それ、いつも言ってるけど何なの?」

「えー、だって透子かわいいからさ。私が透子くらい綺麗な顔立ちしてたら乱用しまくるよ」

 ほら、と今日撮った写真を見せてくる茉希の口角が上がっている。被写体になること自体はあまり問題がない。しかし誰かにここに写っている自分が自分と全く同じ人物かと問われると、素直には肯定できない気がしていた。

 透子が茉希と知り合ったのは、一年生の文化祭が終わった頃だった。そのときは既に異質感を放っていた透子だったが、写真部に所属していた茉希が声をかけたのが始まりである。分厚い前髪に癖一つない黒髪。切れ長の目は目元のクマでさらに鋭さが増しているようにも見えた。その孤高さこそ、茉希が探していた被写体そのものだったのだ。それから数週間にわたるアプローチを経て、今の関係に至る。

「透子は? 進路調査票出したでしょ?」

 喫煙という行為を除けば、茉希はそれなりに普通の女の子だった。それなりの成績を修め、当たり障りのない会話をクラスメイトとし、大人に対して年頃の高校生のような反抗をする。自分と同じく何か外れている部分があるにも関わらず、普通を装える器用さが、透子にはまぶしかった。

「まあね」

 進路調査票を出していないこと自体を隠すつもりはなかった。だが、何がしたいのかも分からずに漂っているだけの自分が、妙に幼稚に思えてしまった。それを茉希に話すことは、茉希の求めている自分に反する。勝手にそう思い込んでいた。

 黙り込んでしまった透子の横顔を、茉希はレンズ越しに観察した。整えられた髪の隙間から顔を覗かせているピアスが反射して光る。意思に反して似合わないことをしている、と出会ったときから茉希は思っていた。そういう弱さが透子のいいところだと分かったのは、それなりに時間を過ごした後である。おしゃれをしたいわけでもなく、自傷行為の一環としてでもなく、ただただピアスの数を増やす透子を茉希は止めたことがない。それが透子の自己表現方法だと分かっていたからだ。そしてそれは、透子の両親も同じだった。

「透子はさ、きっと誰かに見つけてほしいんだよ」

 半分以上残っているのはお構いなしに、茉希は煙草を地面に落とし、吸い殻と一緒に踏みつけた。そしてそれを隠すように足で砂利を被せる。そうしながら息と煙を吐き出して言った。

「私はここにいるよ、苦しいよ、見てほしいよ、って思ってて。だから見えるところばっかピアス開けるんでしょ」

 しつこい進路指導から逃れるのなら、見えないところにピアスをつければ問題ない。二人の通う高校は水泳の授業が組まれていないので、それこそヘソにでもつければ目につく機会は圧倒的に減少する。それに耳以外にだってピアスをつけられるところはいくらでもある。それでも耳にしか負荷をかけないということは、透子にはそこまでのけじめや意識がないということだ。

「私は別にピアスを開けて、反発している透子に惹かれたわけじゃない」

 もちろん、最初のきっかけにはなっていたかもしれないけれど。その言葉は口にしなかった。

「そうやって、何すればいいか分かんなくなって迷ってる、普通の女の子みたいな透子が好きなんだよ」

 それは茉希が透子に何度も言っていることだった。茉希のSNSアカウントを通して、透子のことを褒める人は一定数いる。茉希の方に、透子と連絡を取りたいとコンタクトしてくる自称カメラマンだっている。ただ茉希は、自分が一番綺麗に等身大の透子を撮れると分かってしまったのだ。もう離すわけにはいかない。

 ちらりとこちらに視線を送ってきたタイミングで、連続してシャッターを切る。今日一番のものが撮れた感覚があった。

「帰る」

 突然、そう言って立ち上がる透子に茉希は面を食らう。ワンテンポ遅れて声が出る。

「ごめんって。機嫌悪くした?」

「時間」

 透子は自分のスマートフォンの画面を茉希の顔の前に突き出す。急な明るさに茉希は何度か瞬きをせずにはいられなかった。フリー素材の猫の写真が設定されたロック画面にはデジタル時計が表示されており、午後六時を回っていることに気づく。

「部活は終わりでしょ」

 相変わらず律儀な性格をしている透子の言動に対し、茉希はつまらなそうにカメラをしまった。煙草は自分の鞄の中に、マッチ箱は透子に返すことにする。

「駅まで送る」

「あら、優しい」

 茉希は手早く荷物を整え、既に道に一歩出ている透子に駆け寄った。息を吐き出すと、透子は案の定表情がきつくなる。

「臭い」

「くれたのは透子でしょ」

 他と外れていることに後ろめたさを感じない茉希が振ってくる話を適当な相槌で流す。茉希に言われてしまったことが頭の中で動き回っていることに、意識が向いてしまう。

 茉希の言う通りかもしれない。髪が絡まってピアスに引っかかっている感覚があるままマフラーを巻いてしまった故に、耳元に違和感が残っている。家族の中で疎外感を感じたわけではない。学校でこれといって嫌なことがあったわけでもない。唐突に開けてしまったピアスの跡を見るたびに、さらにその数が増えていった。癖のようなものだと言い聞かせていた。

 茉希が切り取った自分は、そんな弱々しさを感じなかった。だからあまり興味がなくてもこうして付き合っているのかもしれない。もしくは、そういう自分を見つけてくれた茉希のことを、もう少しだけ知りたいだけなのかもしれなかった。カメラ越しに見られると、自分の全てを見透かされているような気分になる。自分だけそう思うのが、気に食わなかった。どれだけ容姿で自分を繕ったって、気持ちが簡単に別人のように変わるわけがない。

「またね」

 気づけばあっという間に学校の最寄り駅に着いてしまっていた。鞄からやけに大きいICカードケースを引っ張り出し、茉希は手を振った。

「うん。また明日」

「明日は土曜日ですよ」

「間違えた」

 未練がある、という担任の言葉が頭を過ぎった。学校に未練があるなんて、かわいそうだと最初は感じていた。ただ、その考えが少しだけ変わったような気がした。

「また、月曜日」

 自分だって未練があるから、こうして何度も茉希の提案に乗っかる形で、同じことを繰り返しているのだろう。いつかあの画面に映っているような凛とした自分になれると、何もしていないのにも拘わらず信じたいと思っている。そして少なくとも、茉希といるときだけは、それは叶うのだ。

 茉希は改札を潜り、ホームに続く階段を上がっていってしまった。振っていた手を下げて、透子は息を吐く。茉希のものとは比にならないほど、少なく薄い白が街に溶けて消えていった。



「三嶋さん」

 週明けの昼休み。透子は朝のショートホームルームで提出しようとしていた進路調査票を片手に職員室の中を覗いていた。担任の姿が見えないので出直そうとしたところで、後ろから声がかかる。振り返ると進路指導主任が立っていた。軽く会釈をしてさっさとその場を去ろうとすると、案の定開けているピアスについて小言を浴びせる。

「まだ塞いでないの? 高校生は高校生らしく振る舞いなさいって言っているでしょ」

 この人の言う高校生らしいが何なのか、本人が直接口にしたことはない。そこに突っかかったところで、自分で考えろと一蹴されるのが目に見えていたので空返事を続けることにした。

「今朝はあなたと仲のいい徳倉さんの荷物から煙草が見つかるし、青木先生のクラスったらどうなってるのかしら」

 話の論点が少しずつズレていく。結局は透子とは全く関係のない文句までぶつけられる羽目になる。担任が悪いというよりも、意図して外れくじを引かせたのではないか、という言葉が出かかってしまう。

「三嶋、ここにいたのか」

 その寸前で担任が二人の間に割って入った。進路指導主任は口の動きを止めずに、透子と担任という分かりやすいセットに目標を絞り、まだ文句を言っている。

「先に化学室行ってて」

 透子が手にしていた進路調査票を見てなのか、担任はそう声をかけて進路指導主任と一緒に職員室に入っていく。透子がその光景を眺めていると、担任は追い払う仕草をしてきた。返事も兼ねて中指を立てた透子は、その足で言われた通り化学室に向かうことにした。

 昼間だろうと変わらない暗さの廊下に自分の足音が響く。扉を開けて教室の電気を点ける。昼前に授業をしていたのだろう。板書がされたままの黒板を意味もなく見上げた。この学校の時計は全部電波時計だとどこかで聞いたことがあったが、四時半手前で止まっていることに気づく。秒針が進むことなくその場で規則正しく震えている。

「いやあ、なんであの人はあんなにうるさいんだろうね」

 開けっ放しにしていた扉を閉めながら、担任が戻ってくる。適当に言って抜け出してきたのだろう。息が少し上がっていた。

「更年期なんじゃないの」

「じゃあ今度差し入れに命の母だな」

「それはちょっと見てみたい」

 真っ白の黒板消しで板書を消しながら、担任は意地悪そうな笑みを見せる。ガタガタと揺れる黒板から舞うチョークの粉が、綺麗なものに思えた。

 白衣の裾で粉のついた手を拭く担任に、透子は進路調査票を差し出した。

「ちゃんと書いてきた?」

「どこまでがちゃんとなのかは分かんないけど」

 プリントに目を通した担任はオッケーとだけ言って、裏返してしまう。決断にかかった時間と勇気とは裏腹に、あっさりしていることに少しだけ幻滅してしまう。

「そういや三嶋って徳倉とよく話すよね?」

 そしてあっという間に違う話題になってしまった。ただ茉希が話題に挙がったことは気になったので、頷いて話の続きを聞くことにする。

「今日たまたまこれ持ってるのを見ちゃってね。視界に入ったからには没収しないといけないから一度預かったんだけど」

 そう言って白衣の胸ポケットから取り出したのは、先日透子がロッカーから取り出して茉希に渡した煙草だった。透子が意識したときにはもう遅く、正直な気持ちが顔に出てしまっていた。

「別に、知ってることも、止められなかったことも悪くないよ」

 透子の表情の変わり様から察した担任はそうやんわりとした言い方をした。

「職員室は大騒ぎだったけどね」

 家が近いからこそできてしまう余裕に甘えていつもギリギリに登校する透子は、遅刻常習犯でもある。今日もしっかりと遅刻をして、朝から学年主任の呆れ顔を眺めてきた。そのため、問題が起きたショートホームルームにはいなかったのだ。

 透子と茉希が会話を交わすのは放課後が多い。茉希は別のグループの子といつも教室移動をしてお昼ご飯を食べる。昼休みの今、透子が何も知らないのも無理はなかった。

「怒らないの?」

 いつもの調子で話す担任に、透子は思わず尋ねてしまった。さっきの進路指導主任といい、大人はそういうのにひどく敏感だ。法を破っているのなら尚更だろう。学校のイメージだの、こちらの将来性だの、多方面の心配事をぶつけてくる。

「前も言ったけど、怒りはしないよ。ちゃんと注意はしたし、こうして没収はしたし、反省文を書くことになったし。そのくらいで十分でしょ」

 担任と話していると、先生というイメージが自分の中で揺らぐ。

「それに、叱るのは他の先生がしてくれるからね。ただ、世の中にいる大人はそういうのばかりじゃないってことを知ってほしいだけ」

 だからこそみんなして担任のことを愛称で呼ぶのだろう。

 進級して初めて教卓に立つ担任を見た日。愚痴を零すように、問題児がいるクラスを担当することが多いと話していたのを思い出す。その問題児の中に透子自身がいるのは自覚していたし、茉希も含まれていると察していた。そのときは面倒事を押しつけられたんだろう、くらいにしか思っていなかったが、もしかしたらこの人は自ら手を挙げたのかもしれない。そう思ってもおかしくはなかった。

 透子がそう納得したところで再び扉が開く。そちらに目を向けると茉希の姿があった。向こうもこの場所に透子がいることは想定外のため、驚きが声になって出る。

「透子、どうしたの?」

「進路調査票、出しに来た」

 先週は意地でも口にしないと思っていた言葉が、すんなりと音になる。自分の中で何かが変わった感覚はなかったが、こんなにも簡単なことだったのか、と自分で自分に驚いてしまった。

「ショート、煙草返して」

「反省の色が全く見えないのもどうかと思うけど」

 チクリとした言い方をしながらも、担任は茉希に煙草を手渡した。茉希はそれをすぐにスカートのポケットにしまう。そして透子の手を取り、教室を出ようとする。その場に踏みとどまろうと力を入れた透子の方に数歩よろけたあと、首を傾げた。

「青木」

「『先生』」

 このやり取りも何度目か分からない。ただ、どうしても気になっていることがあった。

「青木って自分のことを『先生』って言わないよね。他の人は一人称で『先生』って使うのに」

 外で待ってる、と言葉を残して、茉希は先に暗い廊下に出てしまった。それを確認してから、担任は悩むふりをする。顎に手をあてて、嫌でも聞こえる音量で喉を鳴らす。

「まだ、自分を先生だと自覚できてないから、かもね」

 なんだ。

「それよりも、進路調査票は七夕の短冊じゃないんだから、個人面談までにはちゃんと大学なり、勉強したいことなり考えてくるんだよ」

 一見大人に見えている人も、そうなのか。

 自分が一体何なのか。それを分かっている人は、きっとああやって分からない人の気持ちを汲み取ることはできない。他の先生と同じように。そこが違うから、この人の前では着飾る必要がないと思ってしまうのだろう。

「あと、個人面談の希望。どうせまた忘れるだろうから聞いておくけど、三嶋は部活入ってないし、いつでもいい?」

 その質問は賢明だった。事実、進路調査票と一緒に持って帰ったはずの個人面談のプリントは、この週末でどこかにやってしまっていた。きっと鞄の底か部屋の隅か、はたまたごみ処理場で既に灰になっているかもしれない。

 透子は担任の真似するように悩む仕草をした。

「火曜か木曜がいいな」

 そう言い残して透子は教室を出る。すぐ外で待っていた茉希と一緒に教室に戻ろうとして、もう一度、扉から顔を覗かせ室内にいる担任に声をかけた。

「月水金は、写真部があるから」

 世界に徳倉茉希の名前を認知させる。

 そのくらいの夢なら、見てもいい気がした。

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薬も過ぎれば毒になる 中ノ瀬 @kkynn

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