第2案件 こちらでも中間管理職やってます。
異世界アトム イチマ村
「あー、やっぱ異世界転生は最高だわ!チートで無双し放題!無双ってことは誰も俺を止められない!だから俺は好きにやっちゃうよー。」
「一体何なんですか!あなたいきなり入ってきて・・・きゃっ⁉」
赤い髪をかき上げた男はなんとなく目についた家に勝手に押し入り、中にいた女性の腕を掴んで引き寄せた。
「異世界人ってなんでこんなにルックスレベチなんかなー。ただの村娘でこれっしょ?王族とか貴族とかこれよりヤベーんかな?あーマジぶちアガるわー」
男は女性の身体を弄りながら顔を無理やり自分の方に向けさせ額が合わさるほど近づけて男は話を続ける。
「ねーねーおねーさん、ヒマっしょ?ヒマなら『俺のオンナになってよ』」
「ど、どこ触りながら何言ってるのよ⁉誰があんたみたいなやつの・・・わかりました。一日だけですよ。」
男の発言を拒否していた筈の女性が急に好意的になって身体を寄せていく。
「『任意で言った言葉を現実にさせる能力』・・・、これさえあればやりたい放題だわー、んー・・・やっぱ上書きすっかー。『お前の持っている財産もすべて俺に渡して隷属しろ』。」
「・・・しょうがないですね、一日だけですよ。」
そう言って女性は家の棚から金品を抱えて男に渡して膝をついて頭を地につけて隷属のポーズをとり始めた。
「『ただし、効果は一日で切れる』・・・へっ、いちいちメンドクセーけど万能っちゃー万能でしょコレ。さってと、じゃー楽しみますかね!おい、服を脱いで四つん這いになれよー。」
「・・・はい、かしこまりました。」
男に言われた通り、女性は表情を変えることなく服を脱いで四つん這いになった。
今日会ったばかりの男に言われるがままに行動し、表情も変わらない。
「あーしくったわ、『隷属』にしてるから基本的に羞恥心なくなるんだっけかー、なんか恥じらいとか、抵抗を感じたいんだよなー俺っちは。」
めんどくさそうに頭を掻いた後、再び男は女性に命じる。
「『意識は隷属から解除。身体は動くな』。」
「・・・はっ⁉なんなのこれ⁉なんで裸なの私⁉あんた何してんのよ!こんな格好///。」
女性は自分の格好と服を着ていないことに驚愕し、羞恥心から顔を赤くし始めた。
すぐに身体を起こそうとするも床に着いた手と足は全く動こうとしない。
「はっ?えっ?な、何なのよこれぇ!くぅ・・・、あんたいったいなんなのよ⁉そもそもあんた誰⁉こんなことしていいと思ってるの?」
首だけ無理やり男の方に向け、女性はわめき散らし始めた。羞恥による赤面か怒りによるものか区別が付きそうにもない。そんな女性を見ながら男はニヤつき顔で腰を下ろした。
「えっえー、無駄無駄♪俺、『上田タケル様には逆らえない』よ♪おねーさんはこれから俺に好きにされる運命なの!こんなことしていいに決まってんじゃん?俺異世界人だよー?こっちの決まりなんて関係ナーシ♪ハハハッ」
上田タケルはそう言いながら女性の髪をつかみながら笑いを漏らす。自分が絶対であると言い張り、また女性の身体をいやらしく触り始める。
「くっ、ふぅ・・・うぅん、や、やめて、異世界人なら異世界規約違反で拘束されるはずよ。こんなことしてただで済むと・・・。」
「やめなーい♪そんなこと言ってもおねーさんの身体は俺に従うしかないんだよなー。・・・あー規約違反?あんなんで俺を取り締まれるわけないじゃん~、能力使ったら絶対追い返せるし~♪今まで何人も取り締まってきたやつ返り討ちにしてんだよ俺、だ・か・ら♪諦めてね~おねーさん♪」
上田の言葉に女性は絶望の表情を浮かべる。意識的に異世界規約違反を犯した者は異世界管理官によって拘束され、罰せられる・・・それがこの多異世界帯アナザでのルールだがこの男はその拘束官すらも相手にならないと言う。それはもうどうにもならないと自分が理解するには十分な理由だった。
「うっ、ぐぅ・・・、誰か・・・、誰か助けて・・・!」
「はいはーい♪まぁそんな顔しないでよ~、これから楽しませてくれたら俺別に殺したりするわけじゃないからさー、何回も思うけど前の世界じゃこんなのできないよねー、異世界転移でもらった能力でチートし放題!ほかの転移者の奴らはやらかして捕まってるみたいだけど、俺の能力じゃ拘束は無理だしねー。じゃ、そーゆーことだから・・・っ!『俺らは無敵』」
だらしない顔をしながら喋っていた上田が急に何かを感じて能力を発動する。
途端、
ドガガッ‼、バガーーン‼‼‼
「━━━咄嗟に能力で防ぎましたか・・・でも助かりました。ちゃんと女性の方も護ってくれてますし、また上司(神)に始末書を書く羽目になるところでした。しかしこの道具威力調整機能全然働いてないですね・・・。技術班に後で報告書を提出しないと・・・。」
家の壁が急にはじけ飛んで、空いた壁から男が入ってくる。ビシッとスーツを着こなしてはいるが見た感じは人のよさそうな中年のオッサンで、手には壁を壊すとに使ったと思われる虹色の小ハンマーを持っていた。
「チッ、うぜぇないい時に・・・ん?なんでおっさんが・・・?もしかして拘束官なの?今まで俺と同年代くらいの奴(バカ)しか来なかったのに人不足でとうとうこんなオッサンを寄越してきたんかなー。ハハハッ」
壁を壊したときに舞った埃を服から払いながら上田は現れた男(オッサン)を見て笑う。異世界拘束官は同じ異世界転移者がなる場合が多く、上田のように若くして死んだり、魂が紛れ込んで転生した物がなることがほとんどで、仮に中年以上で転移しても年齢調整や姿をリビルドできるため前世界での姿をとるものはいない。
「━━━いえいえ、私は新人ですよ、つい先日転移してこの職に就いたばかりです。今日も張り切ってお仕事しますね。よろしくお願いします。」
そう言って中年のオッサンは懐から手錠と手帳のようなものを取り出して近づいてきた。
「━━━えーと、上田タケルさんですね、違反は性的暴行と資産強奪がほとんどですね・・・。おお、今まで拘束官の手を逃れ続けてるんですね。これは危険な方なんですね。」
━━━えーなにこのオッサン、俺の前で呑気にメモ帳見てるし・・・。オッサンの拘束官なんて初めてだけど・・・いつも通りやれば問題ないっしょ!一瞬で決めてやろー♪
近づいてくるオッサンを前にして上田は余裕の表情を浮かべ、腰に差していた剣の柄を掴む。
「オッサーン、舐めちゃダメよ相手を。さっさと終わらせるよ。『動きを止めて俺に斬られろ』。」
瞬間で剣を抜き、目の前のオッサンに袈裟斬りを放つ。
━━━それでいつも終わり。拘束官でチート持ちでも大体これで死んじゃうんだよなー、ほんと雑魚ばっかで楽勝だわ異世界は♪し・ね♪オッサン♪
拘束官が来たとはいえ、上田は余裕でこの状況を切り抜けれると思っていた。が
「━━━おっと危ない、いきなり剣を振ってくるなんてほんとに凶悪犯なんですね。これは即時拘束ですね。」
━━━避けられた。
目の前のオッサンは絶対のはずの上田の能力を受け付けず後ろに下がって袈裟斬りを避けた。
「はぁっ⁉どうなってんのこいつ⁉、避けてんじゃねぇよ、オッサン‼『俺に斬られろ』。」
そんなはずはない、発動ミスかと思い、上田はもう一度能力を使って袈裟斬りを放つ。が、
またサッと避けられてしまった。
「いやいや、何言ってるんですかあなたは。わざわざ斬られるわけないでしょう。さぁ抵抗をやめて大人しく拘束されてくださいね。」
そう言ってオッサンは手錠をもって近づいてくる。ほんとにわけがわからない。
たまらず上田は距離をとって声を荒げる。
「なんで能力が発動しねぇんだ⁉どんなしかけよオッサン‼」
「なんでってそりゃあ・・・私の能力は『異世界で手に入れた
平然と能力を公言するオッサン拘束官に唖然としつつも上田は少し余裕を取り戻す。
「・・・なるほど厄介な能力じゃん。でもさー俺能力だけじゃないかんね?俺異世界ランク78だから。諦めた方がいいよオッサン♪まだ転移したてってことは能力だけの雑魚ってことっしょ?」
━━━異世界ランク:異世界での強さを表すレベル数のようなものであり、身体能力が向上する。一般人では20あったらいい方で、50を超えてくると超人として扱われる。
「ランク78⁉⁉そ、そんなの勝てるわけない化け物じゃない‼拘束官さん私はもういいから逃げて‼死んでしまうわ‼」
上田の異世界ランク78は異常な数値であり、それを聞いて部屋の隅で縮こまっていた女性は声を張り上げた。いうことをきけば上田は殺さないと言っていた。自分を助けに来てくれた、それだけで少しは気持ちも満足した。だから、
「上田様、その人は見逃して下さい!わ、私の身体なら好きにしていいですから・・・。」
「・・・いーや、ダメっしょ?このオッサン俺とおねーさんのひと時を邪魔してるし~、さっさと片づけちゃうから場所変えて楽しもーよ♪・・・な?」
ダンッ‼シュッ‼
瞬間、上田は地面を蹴り、オッサン拘束官に斬りかかる。先ほどまでとは比べものにならない速さだ。が、
コン・・・。
「━━━無駄ですよ。」
「はっ?」
渾身の一閃だった。当たれば最強種である龍族や神混じりすらも屠る技のハズ、それが先ほどふざけた威力で壁を壊した虹色の小ハンマーで止められている。
「あ、ありえないっしょこんなん⁉、お、オッサンまさか俺っちより全然ランク上な拘束官なん⁉ありえないっしょこんなん~~‼‼」
「━━━いえいえ、私異世界ランクでしたらまだ5ですので・・・。はい、拘束しますね。」
カランカラン・・・ガチャッ。
剣を床に落とされた上田の両手に手錠が嵌められる。異世界人生で初めての経験だ。こんなことがあり得るはずがない。
「~~⁉じゃあなおさらありえないってこんなん⁉ランク5⁉雑魚じゃん‼負けるわけねーよ俺。てかなんで抵抗できないんよ俺‼」
能力が無効化されたことにも驚いたが、手錠の上から両手をオッサン拘束官に抑えられ全く抵抗ができない自分にも驚愕した。
「━━━はい、はいもしもし、
指を耳に当ててどこかと話しているオッサン拘束官を見ながら上田は呆然とする。
「はっ?俺が捕まる?チート持ちで異世界ランク78のこの上田タケル様が?ありえねぇっしょ!ありえねぇっしょこれ⁉なんで俺を捕まえられんのよランク5の雑魚が⁉しかもこんなオッサンに⁉」
「━━━はいはい、静かにしましょうね、一旦意識を失ってもらいますね。暴れられたら他の班の方にご迷惑ですので。おや、」
わめく上田の頭に先ほどの小ハンマーで軽く当て昏倒させたオッサン拘束官は目の前に現れた
「━━━あとのことはお任せを、お嬢さん。すぐに治療班と補修班が対応してくれますので。その後記憶消去などアフターケアも行いますのでご安心ください。それでは。」
「あ、あの、ありがとうございました!あっ。」
お礼を言いきったあたりでオッサン拘束官は光の中に消えていった。
それと入れ違いに白衣と作業着をきた人達が出てくる。
「こちらは異世界管理医療班と補修班です。もう大丈夫ですよ、これから治療とご自宅の補修を無償で行いますので!特に気になるところはありますか?」
女性はいきなり現れたことに一瞬身構えるがすぐに毛布を掛けて笑顔で明るく話しかけられ、少し気が楽になった。
「あ、私は大丈夫です。特にケガもないですし、、、あっあの!」
「はい、なんですか?」
さっきのことの真相をしりたい、なんで異世界ランク78をランク5があっさり拘束できてしまうのか。いったいどんな方法をつかったのか。
「あ、あの人はなんで、どうやってあの化け物の上田をおさえこめたんですか?」
戸惑いながら疑問をぶつけてくる女性に医療班の小柄な女性は答える。
「この内容は後で記憶消去しちゃうんで話しちゃいますね!課長は・・・いえ「坂口おさむ」さんは能力だけを無効化するんじゃなくて、異世界で得た全ての能力を無効化するんです。なのであの人の前で異世界人達は強制的にランク1なんです。秘密ですよ!」
人差し指を口にあてながらにっこりと小柄な女性は答える。
「では!早速いろいろと治療と補修しちゃいますね。じゃあ『出てきてね、みんな!』。」
そういうと小柄な女性が持っているキャンパスのようなものから様々な道具が飛び出してくる。
道具たちがそれぞれ勝手に動き、女性の擦り傷を治療したり、埃を払ったりしてくれる。後ろを振り返ると補修班の男が
「かちょーずいぶん派手に壊してくれたっスね~、後で飯連れてってもらうっスからね~。」
そう言いながら腰の小さいバックから明らかに大きい板などを取り出して壁を直していく。
「もう、赤城さん!またそんなこと言って!」
「いや飯は連れてってもらうっスよ?南坂さんもいくっしょ?」
「そ、そりゃいきます・・・けど、もう先輩でも上司でもないんですから・・・。」
そう話しながら作業をしている二人によってみるみる綺麗になる自分と家を見て、治療されていた女性は呟く。
「━━━異世界チートってマジやばい。」
パリピ達の管理やってます~異世界でも中間管理職~ 羽村とと @tetoshinshi
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