パリピ達の管理やってます~異世界でも中間管理職~
羽村とと
第1案件 中間管理職は楽じゃない
━━━━今日も会社は慌ただしい。
「課長!今回の案件のフォローありがとうございました!、助かりま~」
「坂口課長~、この前の○○社の取引の件なんですが~」
「かちょー、この後のぉ飲み会の場所なんスけどぉ、前のあの店でぇ~」
「坂口くん、件のプロジェクトの問題点なんだけどね、この~」
「あ、あの・・・坂口課長、例の企画の件で■□商社より・・3番にお電話です。お、お願いし~」
「小宮くん、とんでもないよ。部下の案件は私の案件。当然だよ。」
「江口くん、また語尾が伸びてるぞ。それはそうとその件はね・・・。」
「赤城くんその言葉遣いはちょっと・・・。まぁ店はそこでいいと思います。」
「部長、その件に関してはチームより改善点が来ておりますのでこの・・・。」
「南坂くん、ありがとう。■□商社さんね。今出ます・・・。」
部下達と部長に笑顔で応えてから私は受話器を右耳に当てる。
「はい、お電話変わりました。坂口でございます。ああ!お世話になってま・・・」
課長になって3年半・・・、毎日上司と部下に挟まれた中間管理職やってます私こと、坂口 おさむです。皆さんは会社人生楽しんでいますでしょうか?
私はそれなりに楽しめています。気にすることは多いけれど慣れたら本棚に本を仕分ける整理作業みたいで面白いです。
上司からの圧力(パワハラ↓)も、部下からの要望(パワハラ↑)も、受け取って整理して分析して判断して対応して伝達して行動して・・・楽しんでます。(泣)
華の三十代も仕事に追われてあっという間に終わり、少し前独り身になったので、すっかり四十代おっさん貴族になってしまいました。人生の楽しみといえばジム通いと、お酒飲みながらベランダで育てているチューリップとパセリの世話くらい・・・。(汗)
今更結婚なんて考えられないですし、今の会社で定年まで勤めて、老後は海外旅行と家庭農園でもやりたいなぁ・・・。(夢)
━━━━ああ、電話ですか?大丈夫です。そちらも同時進行してますので!
慣れてくるとこの「マルチタスク」楽なんですよね~。
「・・・はい。そちらの方向で進めさせていただきます。また何かありましたらご連絡ください。ありがとうございます。失礼いたします・・・。」
取引先様とのお電話を片付けて、私こと坂口 おさむは目の前の日報と報告書等のチェックをして今日の仕事は終わりですかね・・・ん?この資料は・・・。
「南坂くん、ちょっといいかい?」
「━━━━つ! は、はい!」
窓側の席に座ってる小さな背中に私は柔らかな笑顔を浮かべて声をかけます。南坂くんはちょっと席から浮かんだ(飛んだ?)様に見えたけれど、イソイソと机を縫ってこちらに向かって来ます。
「か、課長!な、なんでしょうか? 私またミスでも・・・。」
身を小さくして俯いているのは南坂 茜くん、今年入社したばかりの新人さんの紅一点です。少し自分に自信が持てない気質ですが、仕事は一生懸命、真面目にこなす子で彼女を見ていると、私は自分の新人時代を思い出してつい顔が緩んでしまいます。(笑)
「違いますよ。南坂くんこの資料なんですけどね・・・。」
「は、はいっ!」
私はにこやかに優しい声で話しかけるように努めていますが、南坂くんはギュッと目をつぶってしまいます。やっぱり管理職と話すのは緊張しちゃいますよね・・・。私も経験あります、わかります。(汗)
「この資料なんですが・・・、とてもわかりやすくていい出来ですね。これなら先方との会議でも十分使えると思います。頑張りましたね。」
「・・・ほぇ?えええっ!?」
おお、また浮かびましたね。反応が面白い子です。
「わ、私の資料がですか?ホントですか?」
「ええ、ホントですよ。やはり今回の企画は文書ではイメージが付きづらい内容でしたので、南坂くんの書かれたイラストがとてもありがたいですね。」
南坂くんににこやかな顔を浮かべながら資料のイラストを指さします。
━━━━可愛いイラストですね。癒されます。
「あはは、わ、私昔からイラスト描くの好きで・・・はい。」
「そうなのですね。とてもいいと思います。来月からこれと同じような企画が始まりますので南坂くんにも参加して頂きましょうかね。・・・どうです?」
嬉しそうに小さく笑う南坂くん。・・・娘みたいで可愛いですね。娘いませんけど。(泣)
それとは別にこれは嬉しい誤算ですね。思い返せば面接の時に描画の趣味があると聞いた覚えがありましたね。・・・是非とも次の企画も参加していただきたいですね。
「えぇっ!?そんな私なんかが・・・恐縮です。」
「ふふふ、大丈夫ですよ。何かあってもこちらでフォローしますから。やってみませんか?」
「・・・あうぅ、わ、わかりました。」
私の説得に南坂くんは控え目に頷いてくれました。やりましたね。(嬉)
さて、これで今日の仕事も無事終わりですね。これから家に帰ってチューリップに水やりでもしましょうかね・・・。
「あ、かちょー、今日の飲み会19時からなんでぇ、現地集合でおなしゃすっすー。おっかれさまでしたぁー。お先に失礼しやーす。」
そう言って颯爽と会社を出て行く赤城くん。
━━━━忘れてました私としたことが・・・。あと赤城くんその言葉遣いはちょっと・・・まぁあとで一言言っておきましょう。
飲み会は正直好きです。ほんとにお酒って美味しいんですよねぇ。
気は使いますけど気を使いながら呑むのもなかなかおつでして・・・。
「あ、南坂くんはどうします?今回は参加されますか?」
「あっ、ええっと・・・。」
せっかくですし南坂くんにも声をかけてみますか・・・。あっ、また俯いちゃいました(汗)
━━━━参加しないですかね。近年アルハラとかもありますし、南坂くんが楽しそうに呑んでる姿見たことないですしね・・・。ん?顔が上がりましたね。
「い、いきましゅ!あっ、・・・いきます。」
「そうですか。では帰り支度して行きましょうか。」
「は、はい!」
━━━━噛んだ。可愛い。
噛んだことを誤魔化す様にイソイソと席に戻り、帰り支度を始める南坂くん。おお、恥ずかしさの中にちょっと嬉しそうな表情がありますね。
確かに褒められた後の飲み会は行きたくなりますよね。わかります(笑)
課長になってからというものの、部下達に対しては些細なことでも必ず褒めるようにしています。我々の世代は褒められる事なんて数えるくらいしかありませんでしたが、近年はこのような扱いにせよと、上からお達しがされているのです。いい時代です。(泣)
そうして帰り支度している南坂くんをおまたせしないように私こと坂口 おさむも帰り支度を素早く終わらせました。もともと机周りは整理整頓してますからね。
「じゃ、行きましょうか。」
「はっ、はい課長!」
元気な返事で大変素晴らしいですね。顔も笑顔です。
褒めた甲斐があるってもんですね。部下を盛り上げるのもひと苦労なもんです。(汗)
━━━━ふむ・・・。今晩の飲み会はいつもと違ったものになりそうですね。
笑顔で付いてくる南坂くんを横目に私はなぜかそう心の中で呟いて、南坂くんと会社を後にしました。
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