コンビーフ

夢美瑠瑠

コンビーフ



         掌編小説・『コンビーフ』



あたしは17歳の女子高生なんだけどーコンビーフが大好きなんです。


コンビーフってまず缶詰の開け方が独特ですよね。


小さな金具を四角い缶詰の裾辺りでぐるぐる巻きつけながら、徐々に開けていく。


ちょっと大変なんだけど、それが一種の通過儀礼というかーコンビーフを


味わうためのセレモニーみたいな感じになりますね?


(丁度あたしがボーイフレンドにスカートとかパンティを脱がされる感じに似てるかもー


あっこれはナイショですよw♡)


で、すっかり巻き終わってパかッと蓋になった上部を剥がすと、


ところどころ白い脂が固まって、赤茶色みたいなミンチした牛肉の塊と


渾然一体になっている、新鮮なコンビーフの本体が現れます。


スプーンとかで四角い山を取り崩して、味わってみるというと、


見た感じは生っぽい肉なのにサラミソーセージみたいな、燻製っぽい独特の


辛味のある美味しい味がします。


私はちょっとビールをふざけて飲んだくらいですが、お父さんたちの


お酒のおつまみにちょうどいいような?味かと思います。


で、サラミのように、乾いている感じじゃなくて、


ステーキのようにちゃんとしたお料理という感じじゃなくて、


スナックみたいな、それでいて案外しっかりした食事で栄養も取れそうな、


コンビーフという簡易食品の持ち味が現れる感じになると思います。


だから、登山とかした時には絶好の道行きのお供になる感じですね?


芥川龍之介の、「河童」という小説にも、山中で迷った主人公が


コンビーフを開ける場面があって、私は、「ああ、コンビーフが食べたい!」とか


思ったものです。


昔からあるのに、人々に愛好されて廃れない、そういうものは色々ありそうですが、


コンビーフとかは一種のレトロな趣もあって、今でもファンが多くて、


それでポピュラーなアイテムとしてレジャーの時などにも常備されるような、


独特のステータスを獲得している感じかと思います。ご飯にただ混ぜても美味しいし、


キャベツと混ぜて炒めても美味しい。噛みしめると脂がじゅわっとして、塩漬け肉というのの、


旨味が何だかヒューマンビーングのルーツに味わいが訴求してくる、


大げさに言うとそういう趣すらある感じしませんか?アメリカの兵隊さんが


食べていそうなワイルドな雰囲気・・・そういう感じが私は好きなのです。


また趣味の一人キャンプに行ったら、飯盒炊爨して、(この「すいさん」の「さん」って


すごく難しい字ですよね?)コンビーフを開けて、チキンラーメンにたくさんねぎを入れて、


鯨の大和煮やら、キムチやら、いろんな好物を簡易テーブルに並べて、


一人で宴会気分を味わいたいと思います。


ビールを呑むことはナイショですよ?(*^-^*)



<終>

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コンビーフ 夢美瑠瑠 @joeyasushi

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