第318話 因縁との決着

「主殿。今狙えば、首を取れるのでは?」


「ばっか、今邪魔したら後でお仕置されるぞ?

 それに今、手を出したらカルマも巻き込むだろうが」


「うむー。あの者なら、ちょっとやそっとじゃ死にやしないと思うのだがのう」


「確かにカルマは大丈夫かも知れないが、あとでニクスがお仕置されちゃうと思うなぁ」


「お、おう……。それは嫌じゃな。

 うむ、そっと見守ることにしようかのう」


 不死鳥も嫌がるカルマのお仕置って、ある意味最強だよな。

 いや、最凶か?

 それはさておき、アモンの剣撃がどんどん激しくなっている。

 その余波でフロア中の壁がボロボロになっているし。

 つかこれ、このままいったら崩れるんじゃないか?

 

 崩れて上に行く手間が省けるならいいが、下敷きになって終わりになるのは御免だぞ。

 仕方ない、これ以上長引くなら、隙を見て畳み掛けるか。


「いいね、いいね!そうだ、お前はそれくらい強く在るべきだ!

 よーし、そろそろ本気でいくぞ!」


 そう言うと、アモンの額にある目のような紋様が光だす。

 最後にカッと光るとそこに第三の目が現れた。

 その瞳が辺りをぎょろぎょろと見渡している。


「うげっ、なんだあれ」


「ほう。あれは鬼神の瞳じゃな。なるほど、あやつは鬼神であったか」


「鬼神?」


「魔族の中でも、鬼族は戦闘力が高いがその最高位に位置するのが鬼神なのじゃ。

 はるか昔に滅ぼされたと聞いたが、やつはその子孫じゃったか」


 さっき迄とは雰囲気がかなり違う。

 慌ててそのステータスを確認してみる。


名前:鬼神アモン ランク:SSS クラス:鬼神

 HP:523000/666000 MP:78000/210000 SP:19500/21500

 STR:2500+5000 VIT:1300+2000 INT:1500 SPD:1800 MGC:900

 耐性:火

 弱点:水、光


 うげ、なんじゃこりゃ。

 ラーザイアを超えてんじゃねーかっ!?

 魔王より強いとか、なんの冗談だよ。


 しかし、弱点があるのはラッキーだな。

 水と光か。


 あれ、どっちもその属性で攻撃出来るやつがいないじゃん。

 俺なら属性付与できるけど、俺が攻撃に回るのは最後の手だ。

 今は強化に回った方が有利になるはず。


 しかし、ニクスの攻撃をまともにくらって平気なのは耐性があったからか。

 火に強いとか、相性としては最悪だな。

 しかし、カルマとニケは弱点は狙えないものの、防がれて威力が落ちる心配もない。


「ゆくぞカルマ! 〈次元断〉!」

「同じ手を何度も食らうと思うか? 〈幻夢〉」


 アモンが切り裂いたカルマが陽炎のように揺らめき、ふっと煙のように消えた。

 そして次の瞬間、アモンの影から黒い槍が何本も飛び出してきた。


「ぐがっ! くっ、小癪な真似を!」


「全て奪え、〈ソウルスティール〉!!」


 そして影から飛び出したカルマが、そのままアモンにスキルを発動した。

 しかし、膨大なHPを持つアモンには僅かな効果しか与えられない。

 それでも徐々にHPは減っていっているから無意味ではない。


「こんなケチなスキルで俺を倒せると思うなよ? 〈黒炎地獄〉!」


 あれは……、あの時の炎!?

 ヤバイ、あれを食らえばタダでは済まない。


「カルマ!」


「主、ご安心を」


 焦る俺とは対照的に、静かに答えるカルマ。

 そして優雅ともいえる所作で、右手を掲げるカルマ。

 するとそこに魔力が凝縮していくのが見えた。


「『次元ディメンジョン崩壊ブレイク』」


 カルマの前に歪んだ空間が出来上がり、そのまま一気に広がった。

 アモンが放った黒い炎がそれに飲み込まれ、跡形もなく消え去った。


「なんだと、お前も次元を操るスキルを持っているのか?!」


「ふん、与えられた貴様とは違い我は作ったのだ。 我が誰の魂から作られたのか忘れたのか?」


「くそっ、オヤジの血を引いているのはお前だけじゃない!」


 ん?なんだ?

 今、アモンは自分も魔王の血を引いていると言っているのか?

 だとすると、あいつら兄弟になるのかな。


「そうであるなら、それだけのチカラを我に見せてみろ」


「言ったな? 後悔しても遅いからな?

 奥義、『満開桜花乱舞』!!」


「やはり、お前はあいつのチカラを引き継いでいる訳じゃないのだな。

 それならば、これで終わりだ。

 「消えろ、〈混沌の終焉カオスエンド〉!!」


 カルマはアモンに左手を相手に|翳≪かざ≫すと、黒い球体が出現し相手を包み込んでそのまま上空に浮いていく。

 そして、一気に収縮していく。


「ぐあっがああっ!!

 だが、この程度では負けぬぞ!」


 球体に捕らわれるも、その圧に耐えるアモン。

 あれに押しつぶされないとか、どれだけ強いんだよ。

 だけど、それも次で終わりだろう。


「そのまま虚無へ去れ。いでよ、〈深淵の門アビスゲート〉!」


 突如空中に現れた門は、ブラックホールかの如くアモンを吸い込んでいく。


「このスキルは、まさか親父の!?」


「いいや、似て非なるものだ。

 しかし、奴のスキルを引き継いでいればお前にも使えた筈だ」


「グオオッーー!! これで終わりだと?!

 こんな所で俺が終わるはずが──」


 抵抗虚しく、遂に黒い渦に取り込まれるアモン。

 吸い込まれた瞬間に圧縮され、瞬時に押し潰し塵にしてしまった。


「す、凄いねパパ。あんなのと戦ったんだね。

 でも、それを倒したカルマも強くてカッコイイね!」


「ああ、カルマとニケがいなければリン達にも二度と会えなかったからな。改めて感謝しないとな。

 あの時の事は、──忘れたことなんかないけどな」


 カルマはアモンが虚無に送られたのを確認するまでそこを見ていた。

 大昔に何があったのかは知らないけど、それなりに思うことがあるんだろう。

 それよりも、ついにアモンを倒せるほどまで成長したカルマを褒めたい気分だ。


 そう思って、声を掛けようとするとその場に膝をつくカルマ。慌てて、俺は駆け寄った。


「だ、大丈夫かっ?!」


「すみませぬ、少し魔力を使いすぎたようです。

 少し経てば動けます」


 流石の激戦だけあって、消耗が激しかったか。

 まだ先は長い、ここは一旦休憩にしよう。


「倒されたボスが湧いても面倒だし、扉を抜けてから少し休憩を取る。万全を期してから出発するからな?」


「あ、主よ。……承知しました。ご配慮、感謝します」


 ふと見ると、床に刀が一振り落ちていた。

 アモンが使っていた物のようだな。


「これ、アモンの呪いとかあるかな?」


「アモンはそんな小賢しいことは好まない奴のです。

 パッと見たところ問題ないですし、刀としては優秀なので持っいっても良いでしょう」


 とはいえ、俺はスキル的にも刀は合わないんだよな。

 そういや、リンなら使えるか。


「リン、アモンが使ってた刀だけど使うか?」


「うーん、一応持っていくね。

 お家に帰ったらガントさんに鑑定して貰って、問題なかったら使ってみるね」


 流石にリンも用心するよな。

 そうか、ガントに鑑定して貰らってからなら安心して使えるか。うん、やっぱ賢い子だな。


 リンは刀をストレージに入れると、空いた手で俺の手を握る。


「さっ、行こう?」


「ああ、そうだな」


 リンの柔らかな笑顔を眺めつつ、やっと一つの因縁が決着したのだと思うのだった。

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おっさんテイマーは、はばからない!〜ソロテイマーだったのに、気が付いたら最強組織を作っていました〜 琥宮 千孝(くみや ちたか) @C_Kumiya

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