第43話 それはこの場で言うべきではないというのも、わたしも十分承知してます
「・・・それじゃあ、今日はこれまでだけど、悪いけど
飯田先生が超ハイテンションで帰りのショートホームルームの終わりを告げたけど、これを合図に2年A組は騒めきを取り戻した。
今日の飯田先生は朝から超ハイテンションだった。何しろ今季のタイガースは絶好調!現在5連勝で勝率は6割6分7厘、しかも首位なのだから、翔真だけでなく他の連中も「あれが本当に奈緒虎先生なのか?」「ニセモノじゃあないかあ?」と言ってるくらいにくらいにニコニコ顔なのだ。
そんな飯田先生に言われ、もう1人の実行委員の香澄さんは立ち上がったけど僕はまだ鞄の中を整理している最中だ。
「・・・雄介くーん、行くよー」
「もうちょっと待って。鞄を整理してるから」
「相変わらずノンビリだねえ」
「僕は香澄さんのような完璧超人ではありませんからー」
「わたしは雄介君が思ってるような完璧な人間じゃあないよー」
香澄さんはそう言いながらもニコニコ顔で僕の片付け風景をノンビリ見てるけど、その横では綾香ちゃんが帰り支度を終えて僕を見てる。
「・・・ユーちゃんは今日も第二音楽室へ行く?」
「行くよ」
「じゃあ、ボクは先に行く」
「そうしてくれ」
「サッサと職員室へ行きなさいよー。どうせここにいると、黙ってても小学生がお迎えに来るでしょうからねー」
「それって皮肉?」
「もちろん!」
「あのさあ」
「ま、それは冗談だ」
「なーんとなくだけど、綾香ちゃんと方広寺さんは顔を合わせれば互いに文句ばかり言い合ってる割に、毎日のように第二音楽室に来るのを止めようとしなから、何となくだけど二人の掛け合いが漫才コンビに思えるんだけどー」
「勘弁してよー。ユーちゃんはボクに吉友興業行きを勧めるつもりかあ?ボクの将来の
「うーん、たしかに僕も綾香ちゃんが方広寺さんとコンビを組んでMイチに出てる姿を想像できない」
「だろ?」
「ま、それはそれとして、後で行くからー」
「はいはい、メグたちと先に行ってるよー」
綾香ちゃんはそう言って「はーー」と軽くため息をついたけど、その僕と綾香ちゃんの様子を見ていた姉さんは綾香ちゃんの肩を軽く『ポン』と叩いたから、綾香ちゃんは立ち上がった。
「・・・雄介君には面倒見のいい『お姉さんタイプ』の子がついてないと駄目だね」
香澄さんはそう言って笑ってるけど、すかさず姉さんが話に割り込んできた。
「だよねー。やっぱり雄介にはお姉ちゃんがついてないとー」
「あら?別に愛美さんでないと駄目だなんて一言も言っていないよー」
「私以上に面倒見のいいお姉ちゃんは、日本中を探してもいないと思うけどなー」
「はいはい、その話は去年から『耳にタコ』だからー」
「分かってるなら、今さら言うべき話じゃあないと思うけど」
「分かってるなら、なぜ雄介君とくっ付かないの?」
香澄さんはニコニコ顔のままだけど、その一言に姉さんは固まった。
いや、姉さんだけではない。僕も自分の耳を疑ったし、綾香ちゃんも完全に固まっている。それに、さっきまで全開のラブラブトーク(毒舌の応酬?)をしていた翔真と南城さんも香澄さんの一言で互いの顔を見合わせて固まっているし、南城さんの後ろで笑いながら翔真と南城さんのラブラブトーク(?)にツッコミを入れていた朝倉さんまで固まってる。
「・・・まあ、愛美さんにその気がないなら、弁護士一家の娘として解決策をこの場で披露してもいいんだろうけど、それはこの場で言うべきではないというのも、わたしも十分承知してますから黙っておきます」
香澄さんは最後までニコニコ顔のままだったけど、飯田先生が「おーい、行くぞー」と声を掛けてきたから、僕も慌てて立ち上がった。香澄さんは僕を先導する形で前を歩いて行ったけど、その途中に左手で朝倉さんの左肩を軽く『ポン』と叩いたのには何か意味があるのだろうか・・・
職員室で飯田先生が僕と香澄さんに渡した物、それは大きな茶封筒だった。
「・・・えーと、今度の金曜日に第1回の
飯田先生は相変わらずニコニコ顔で茶封筒を手渡したから、香澄さんが茶封筒を受け取って「失礼します」と言ってから開封して中身を確認した。
「・・・たしかにリスト表に書かれてる物が入ってるのは確認しました」
「それと、クラスイベントの提出期限はゴールデンウィーク明けの実行委員会の前日だ。それまでにクラスイベントの大枠を決める必要がある」
「ですが先生、形の上では第1回の実行委員会で今年の実行計画表が承認されないと動けません。明日の朝のショートホームルームで『考えておいて下さい』とクラスのみんなに呼びかける程度は問題ないでしょうけど、意見集約をゴールデンウィーク前か、ゴールデンウィークが明けた直後にやらないと駄目でしょうね」
「香澄ならどっちがいい?」
「あくまでわたし個人の意見ですけど、ゴールデンウィーク前にある程度の道筋を決めておかないと駄目だと思います。ゴールデンウィークだ、浜砂祭りだとか言って遊んでる時間が勿体ないです」
「うーん、その辺りは弁護士一家らしい意見だなあ」
「飯田先生、それとこれは別問題だと思います」
「あー、スマンスマン。それより雄介、お前はさっきから一言も意見を言ってないけど、お前の意見はどうなんだ?」
僕はいきなり飯田先生から話を振られた格好になって慌てたけど、正直、僕には意見らしい物が無いのも事実だ。でも、同じ実行委員として香澄さんに全部お任せという訳にはいかないのも分かっている。
「えーとー、僕も香澄さんの意見が間違ってるとは思えません。去年の1年E組は前日にすったもんだした挙句、放課後に1時間以上も居残りでホームルームをやって最後はヤケクソ気味に決めましたからねえ」
「まあ、雄介の言ってる事は毎年どのクラスでも似たり寄ったりだ。何事も余裕を持って動いておけば見直しも効く。追い込まれるとロクな事がないからなあ」
「それじゃあ、明日の朝のショートホームルームで僕と香澄さんが呼び掛けて、連休前の月曜日の放課後に決めるという形でいいですかあ?」
「先生はそれでいいと思うけど、香澄は?」
「わたしもそれでいいと思います。帰りのショートホームルームがロングホームルームになってしまうかもしれないから、事前に探りを入れておいて、ある程度の目星がついてるなら、それに合わせたデータなり資料を前もって提示すればスンナリ決まると思います」
「それじゃあ、その段取りは二人に任せた」
「「りょーかいです」」
姉さんは女神様のような存在・・・ちょっと姉さん!それって本気で言ってますか?僕の都合は無視ですかあ!? 黒猫ポチ @kuroneko-pochi
ギフトを贈って最初のサポーターになりませんか?
ギフトを贈ると限定コンテンツを閲覧できます。作家の創作活動を支援しましょう。
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。姉さんは女神様のような存在・・・ちょっと姉さん!それって本気で言ってますか?僕の都合は無視ですかあ!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます