第42話 また待ちぼうけ・・・
4時間目は体育だ。
A組とB組の男子はグラウンドで持久走。ハッキリ言うけど学年で1、2位を争うほど体力が無い僕にとって持久走は鬼門だ。陸上部やサッカー部、バスケ部の連中はあっという間に僕を周回遅れにした挙句「ゆーすけー、頑張れよー」「情けないぞー」と揶揄いながら走り抜けていったし、A組最重量の大杉にまで周回遅れにされて・・・つまり、僕はA組とB組の全員に周回遅れにされたのだから、体育担当の武田先生が苦笑いしてたなあ。
そんな地獄の4時間目が終わって昼休みなのだが・・・またもや姉さんも綾香ちゃんも食堂に来ない!
ま、予想はしてたけどね。今日の女子は体育館でバレーボールだ。どう考えても片付けに時間を取られているし、しかも着替えに時間が掛かるのは避けられない。
僕は食堂入り口で2人を待っていたけど、他の生徒たちは僕を横目に見ながら次々と食堂へ入っていく。
そんな僕の視界に、緑色リボンをした二人の女子が入ってきた。
緑色リボンという事は1年生だ。しかも二人とも揃って背が低い!殆ど眼鏡を掛けているか、いないかの違いしか無いくらいにソックリな二人は、方広寺さんとそのクラスメイトの奥山さんだあ!
「・・・あれあれー?先輩、また待ちぼうけですかあ?」
方広寺さんは半ば揶揄い気味に僕に話し掛けてきたけど、僕は苦笑いするしかなかった。
「まあ、仕方ないよ。次に授業があるなら急ぐんだろうけど、昼休みだからノンビリしてるんだと思うよー」
「早くしないとB定食が無くなっちゃいますよー」
「分かってるけどさあ、僕が先に食べてると姉さんが怒るからー」
「あらあらー、まさに『姉さん女房』ですねえ。わたしが愛美先輩だったら『ゆうすけー、たまには可愛い後輩と一緒に楽しいひと時を過ごしてきなさーい』とか言って理解を示すのになー」
方広寺さんはニヤニヤしながら言ってるけど、半分は本気で言ってるとしか思えないからホントに辛いぞ、ったくー。今なら姉さんが聞いても軽く笑い飛ばすだろうけど、普段の姉さんだったら額に青筋を立てて「女神様の御神託よ!」とか言って説教を始めるだろうね。
「それじゃあ、わたしたちは先に行きますよー」
「ああ」
「先輩も早くしないとB定食が食べられなくなりますよお」
「方広寺さんが2回並んでくれれば解決するんだろうけどなあ」
「うーん、考えておきまーす」
方広寺さんはそう言うと「じゃあねー」と右手を軽く上げて奥山さんと食堂へ入って行ったけど、ホント、方広寺さんは呑気で羨ましいです、はい。
でも・・・その方広寺さんは急に足を止めたかと思った僕の方を振り向いた。
しかも、微笑みながら早足で僕の方へ戻って来るじゃあありませんかあ!一体、何があったんですかあ!?
「せんぱーい!」
「はい!」
「今日の放課後、ビッグニュースがありますよ!」
方広寺さんは僕の顔に自分の顔をくっつくんじゃあないかって位に背伸びして叫んでるけど、一体、何を言いたいんだあ?
「・・・ビッグニュース?」
「そう、ビッグニュース。しかも2つです」
「2つ?ますます意味不明です」
「教えてもいいけど、放課後の楽しみとして黙っておきますね」
それだけ言うと方広寺さんはクルリと向きを変え、駆け足で食堂へ向かったけど、方広寺さんは何を言いたかったのだろう・・・
多分だけど、1つは今まで態度を明白にして来なかった『
「おーい、お待たせー」
僕の思考を中断するかのように後ろから声がした。振り返るまでもなく声の主は姉さんだ。
「・・・姉さーん、『おーい、お待たせー』どころじゃあないですー」
「ゴメンゴメン。片付けに時間が掛かっちゃってさあ」
「この前もそのセリフを言ってましたよねえ。そのせいでA定食を食べる事になったのを忘れたんですかあ?」
「忘れてないけどー、雄介が3回並んでくれれば済む話だと思うけどー」
「はあああーーー・・・これ以上は言っても無駄だと思いますから、早く行きましょう」
「はいはい、そうします」
姉さんはそう言うと何事も無かったかのようにスタスタと歩いて食堂へ入ったけど、綾香ちゃんはニコニコしていただけだった。
僕は方広寺さんが言っていた話を姉さんにしようかと思ったけど、やめた。姉さんはともかく、綾香ちゃんが露骨に嫌な顔をするのが容易に想像できたから、雰囲気をぶち壊すのは得策ではないと思ったし、それに、放課後になればビッグニュースの正体は自ずと分かる。僕があえて口に出さなくても方広寺さん自身が姉さんに言う筈だから、僕が言う必要もないだろう。
僕は姉さんと綾香ちゃんに続くようにして食券の券売機の列に並んだけど・・・並んだ時には早くもB定食は売り切れになってましたあ!因みに、方広寺さんもA定食を食べていた(奥山さんは相変わらずですけどお弁当です)から、今日のB定食『カルボナーラとポテトサラダ』は元々用意されていた数が少なかったんでしょうね。
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