第2話 雪江みほが鍵を握っているのは言うまでもない
~春分の日~
「私はどうしたらいいのだろうか」
思わず足をジタバタさせてしまった。何度も考えているから頭が本当にぐるぐるする。どんな計画にすればいいかがなかなか決まらない。もうかれこれ何日も考えている。それに、これは一番気になるけど、断られたらどうしよか。俺は立ち直れるだろうか。いや、分かる!きっと立ち直れない。間違いない!そうだ!もっと現地のことを知ればいい!つまり、まず浅草へ下見に行けばいい!五回くらい!そして、もっと、もっとあの子のことを知ろう!つまり、偵察しよう!こう、後をつけたり、話しているのを聞いたり、生活習慣を知ったりすればもっと良くなるはずだ!うん!そうと決まれば、まずは本人に好きなものを聞いてみう!どこに出かけたいとか、何が欲しいとかって、、、
それが聞けないから困ってんだった!
「うわーーーー!」
思わず頭を抱える。人って本当に困ると本当に頭を抱えるのか!気付くと音もなく、ダウンジャケットが舞っていた。
「おやおや、しかめっ面すると幸せが逃げてしまいますよ」
「みほさん!」
本当にこの人は音もせずにやってくる。やっぱり何度見てもまるで蝶のようだ。
「何か悩み事ですか?関新一くん、先ほどから、ずっと唸っていますけどどうしたんですか?」
「あー、聞かれていましたか?いえ、でも大丈夫です!みほさんのお手を煩わせませんよ!」
正直、だれにもこのことは気づかれたくない!何としてでもここは隠し通さなければ!大丈夫絶対にばれない!大丈夫!
「そうですか。でも、ひかりのことは私がよく知っていると思いますよ」
「っは!?」
えーー、心の声聞いてたのか?
「ふふ、違いましたか?もしかして、ひかりとどんなお出かけに行きたいかを悩んでいると思ったのですが」
やっぱりこの人の前では嘘はつけないな。まるで予知能力者だ。いや、この人はノストラダムスではないけれども。
ただね、ここまで見破られてしまうとそう思わざるおえないよね。
「はい、そうなんですよ。ひかりはどんなお出かけがいいんでしょうか」
「あら、本当だったんですね。確証はなかったのですが、言ってみるものですね」
「っ⁈」
私は思わず息をのんだ。うえ?!はったり?はったりだったの?何?怖い怖い怖い!恐ろしいよ。こんなこと言うと怒られそうだけど、下手な人類世紀末よりよっぽど怖いよ。本当に予知能力者じゃん!
一体どうしたら、この人に勝てるんですか?!いやさ、勝つつもりはないよ。でもさ、少しくらい手加減してくれてもいいんじゃないかな?なんでこの数分で心を乱されているの?この口調もどことなく智也に似てきてしまった気がする。
やめよう。これ以上は私がつらくなるだけだ。
「関新一君、ひかりはきっと、どんなお出かけでも嬉しくなるんですよ。あの娘は君と一緒にいることが嬉しいんですよ。」
こうして、嘘でも言ってもらえると私は嬉しいな。なんとなくだけど心が落ち着いてきた。まだ傷は深いけれども。
「ありがとうございます!でも、そんなことはないですよ。きちんとお出かけの計画は立てべきです。さもないと、ひかりは喜ばないと思います」
これは本心から出た言葉だった。特に妹の秋華ができなかった、やりたかったであろうことをとにかく詰め込もうと思った。
「ひかりは気付いてないだけだと思いますけどね。分かりました。君の計画を見せてください。」
私が一週間をかけて考えた計画表はいつの間にかみほさんの手に渡っていた。え?
だからなんで、そんな超能力者みたいなことができるんだ?!
「いいですね。しっかりと考えられていますね。特にこの散策は楽しめると思いますよ。
ただそうですね 。少し詰め込みすぎている気もしますね。この計画は走って遂行するおつもりですか?」
「いえ、歩いていこうと思っていましたが、何か変ですか?」
行くところも少なめにしたつもりなんだけどな。
「そうですね、この吾妻橋を渡って不忍池へ行く時間なんですが、さすがにあなたがたでも、一分は難しいと思いますよ。そうですね。普通の人なら40分ですね。人混みでは走れませんからね。」
「そうだったんですね。そしたら、不忍池をこの計画の最後に持っていくべきでしょうか?」
「いえ、それよりも、ほかの場所の滞在時間を増やしたほうがいいでしょう。浅草寺で3分間しかないですよ。何しに行くんですか?」
「なるほど、言われてみれば、確かにそうですね」
みほさんは恐ろしいところもあるが、やはり、こうして頼りになるところもあるな。
と、みほさんの手ほどきを受けながら当日の計画は着実に完成へと向かった。
「さて、こんなに頑張って考えた新一君に一ついいものを渡しましょう。
この最後のから浅草寺から花屋敷通りを歩いて10分もしないところに私の新居があります。できたばかりで、近くの人通りも少ないはずです。もしかしたら、ひかりが必要になるかもしれません。この鍵を渡しておくので、その時に使ってみてください」
「本当にアドバイスありがとうございます!助かりました!こればっかりは一人じゃどうにもなりませんからね。でも、必要になるとはどんな意味ですか?」
「あくまでも、可能性の話ですから。あまり気にしないでくださいね。それでは楽しんできてくださいね、浅草」
「はい!ありがとうございます!あ、でもなんて言って誘えば断られないですかね?」
といったところで、声が空間に残ったままみほさんははるか先の方いた。いや、本当に光のスピードだよ。
「ひかりは新一君に誘われればきっと行きますよ」
そう、私はひかりを浅草に連れて行こうと考えていた。こうして、手伝ってもらい、お墨付きまでもらい完璧に仕上がったこの計画。
あとは、ひかりに断られないように誘うだけなんだけど、本当に断られないだろうか。
なんならきちんとそこまで手伝って欲しかったな、と思考したとこで角から彼女の目印である白い靴が確認できた。
僕の娘で数学を勉強中の漆洋が書いた議事録集 数学のうえもっちゃん @syukugennmathto
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