変態博士と質問博士

まいてい

第1話 変態博士と質問博士

ーーー登場人物ーーー


北川きたがわ アリル:憧れのゲーム会社に入社したてのロリッ娘イラストレーター


青壁せいへき ゆがみ:治験バイトの博士。ご名答、変態です。


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私はアリル。北川アリルと言います。


2020年夏、今日はまたもや休日。私はとあるアルバイトへと出向いています。


イラストレーターとはいえまだまだ新米のアシスタントなので、お金は大事です。


私が選んだのは、治験のアルバイトです。


最近大流行したパンデミック・COVID-19の新薬開発に向けて、治験のバイトは山のようにあちらこちらで見かけます。


こちらの治験は、どうやら自由時間があり、イラストを描きながらでよいとのことだったので、引き受けることにしました。


私は受付のお姉さんに話しかけます。


「あのー、治験のアルバイトで来ました。北川アリルと申します」


私はビシッと自己紹介します。


それを聞いたお姉さんは


「北川アリルさんですねー、おかけになってお待ちください」


と言い残して、奥のほうへと消えていきます。


ここは、私が住んでいる町のそこそこ大きな通り、にあるビルの二階。


私は窓の外を見ながら、道行く人たちを観察します。


そうこうしているうちに、


「北川アリルさーん。こちらへどうぞ」


と先ほどのお姉さんが私を手招きして、階段への扉を開けます。


私はお姉さんの後を追います。


案内されたのは、ある部屋のドアの前でした。


では、私は失礼します。


お姉さんは、もと来た道へと引き返していきます。


私はそっとドアを開けます。


部屋の中には、ほとんどと言っていいほど何もありませんでした。椅子と机、机の上に置いてある紙とペンそれから電灯、それ以外は何もなく部屋の壁は真っ白。


取調室ですか?


昔起こした例の事件のことがついにばれて、警察から間抜けにもまんまとおびき出されてしまった私。自白するまで出られないといわれるも、黙秘を貫く。耐えかねた警察官たちは私に自白させるため、あの手この手を使って私を辱めるけれども必死に耐える。密室の中、男2人女1人で何も起こらないはずもなく、禁断の3〇地獄の始まり始まり。


……いえ、始まりませんよ。


あくまでも想像ですよ、想像。


そんないやらしい展開になる訳ないじゃないですか。


ただの妄想です。


えっちいイラストを描くことも多々あり、私はこの通りすっかり変わってしまいました。仕事ってホントに人を変えます。


しかし、おかしいです。治験といえば、もっとたくさんの人がいるものだと思っていたのですが……


ガチャ


くだらない妄想をしているうちに来ましたよ。


白衣を着た男の方が扉を開けて入ってきます。


細身の男性で眼鏡をかけていました。


でもちょっとだけ苦手な感じがします。


バタン


男の人は、部屋の扉を閉めて鍵を掛けます。


鍵を? 何のために?


なんだか嫌な予感がします。


妄想、当たってたりするのでしょうか?


「あいちーっす。博士でーす」


チャラ!?


白衣着ていたので、もっとお堅い感じの人かと思ったのですが。


「うひょー、かわえーロリッ娘やなー。お嬢ちゃんお名前は?」


関西弁っぽい口調で、博士は私に問いかけます。


「私はアリル。北川アリルと申します」


かわいい、と言われると大人になったとはいえ、ちょっとだけ照れます。


でもロリッ娘はやめてもらえませんかねぇ……


「ロリッ娘は大好物やからなー、報酬増やしたろか?」


「あー……ありがとうございます」


愛想笑いを浮かべながら、わたしは遠慮がちに答えます。


大好物って言い方はちょっとキモめですが、報酬増やしてくれるのはウェルカムです!


「あー嬢ちゃんあざといわー。はっはっは」


「アハハ……」


多分、目は笑ってなかったと思います。


まぁ、多分ちょっと変わった方なのでしょう。子供心が大人まで残っちゃったちょっとイタい感じの。


ほら、『三つ子の魂百まで、おとこの童貞二十まで』とか言いますし。


「じゃあ、ちょっとだけ説明させてもらうからねー」


博士はそう言って、机の上の紙にブラックライトを当てます。


文字が徐々に浮かび上がってきます……


ふむふむ、何々


文字に目を通します。


IQ200間違いなし、DHAを豊富に含んだ……


等々、薬に関することがたくさん書いてありました。


IQ200ですか、いかにも胡散臭いですが、あんまり問題なさそうです。


博士は私に差し出します。ジュース? を私に差し出します。


「一気、一気!」


飲み会のコールですか? 博士は手拍子をして、私にジュース? らしきものを飲ませます。これが、お薬なのでしょうか?


私はされるがままに一気に飲み干します。


ゴクリ。


刹那、博士は意地の悪い笑みを浮かべて頭を抱えます。


「あっしまった! それやばい薬だった! ごっめーん☆」


博士は白々しくそう言います。


「どんまいーこれ自白剤だったわー忘れてたー」


棒読みですけど……


「自白剤?」


私はきょとんとした顔で質問します。


「そう、これから一時間、君は僕の質問から逃れることはできない」


自白剤。名前から推測するに、知っていることを聞き出すためのやーつとかですか?


あれ? DHAって? IQ200ってどこいったの? おーい。


ファッ


もしかして、ほんとに取り調べみたいなのが始まるのでしょうか?


わたし、犯罪歴0ですよ?


そうこう考えているうちに、博士さんは私に問いかけます。


「質問1、俺に惚れちゃった?」


「ないです」


間髪入れずに口が動いてしまいます。


あれ? ほんとに自白しちゃうんですか……


「質問2、俺、ワンちゃんある?」


「無理です」


それを聞いた途端、博士さんは大変お怒りになります。


それもつかの間、気味の悪い笑みを浮かべて、続けざまに質問します。


「オ〇ニーは月に何回すんの?」


「×回!」


大きな声で答えます。


ああ……これでは、私の様々な秘密が露見してしまいます。


「もう、もう許してください」


私は涙を浮かべながら懇願します。


女の子をいじめるのはいい趣味ではないですよ!


しかし、博士さんはやめてくれません。


「初セク〇スはいつ? おっぱいのサイズは? おチン○ン大好き?」


ぜーんぶ答えてしまいました。


「やめてぇぇぇぇぇぇ!」


私は私は叫びます。大きな声で叫びます。


とその時、


ピカッ


私は光に包まれます。明るい光に包まれます。


-TURN END-


目を開けると、そこは真っ暗な闇の中。


そんな中、私はスポットライトのように光で照らされています。


私の目の前には3人の博士。


これまたスポットライトで照らされています。


裁判でも始まるんですか?


空から神の声が聞こえてきます。


「「「天使は、常に真実しか話さず、悪魔は、常に嘘をつきます。人間は、真実を話したり時には嘘もつきます。」」」


Aと書かれた帽子をかぶった博士が言います。


「B博士が天使なら、私は悪魔だよ」


Bと書かれた帽子をかぶった博士が言います。


「A博士が悪魔なら、私は天使だよ」


Cと書かれた帽子をかぶった博士が言います。


「B博士が天使だよ」


神は言います。


「「「この中から、天使を選べば元の世界に戻れます。悪魔か人間を選べば、地獄が待っています」」」


はぁ、地獄ですか……正直、嫌ですねぇ……


とりあえず、考えてみましょう。


A博士が天使なら、A博士の発言「私は悪魔だよ」と矛盾します。


A博士が悪魔なら、A博士の発言「私は悪魔だよ」と矛盾します。


悪魔は嘘しかつきません。


悪魔でも天使でもないA博士は人間になります。


ということは、B博士かC博士のどちらかが悪魔で、どちらかが天使でしょう。


B博士が天使なら、B博士の発言「A博士が悪魔である」と矛盾します


ということで、B博士が悪魔で、C博士が天使。


一応確認してみます。


C博士が天使なら、「B博士は天使だよ」と……矛盾します。


あれ? 天使さん、いないんですけど。


地獄に堕ちろってことですか?


私はもう一度問題文を確認します。


この中から、天使を選べば元の世界に戻れます。悪魔か人間を選べば、地獄が待っています。


あ!


私は閃きます。


「……!」


「「「お見事です」」」


パァァァァ


私は光に包まれます。冷たい光に包まれます。


-TURN END-


そこは、さっきの治験の部屋でした。


喫茶店の時と同じく、博士の姿はどこにもありませんでした。


代わりにあったのは、お金。


100万円。これだけの大金が置いてありました。


机の紙には、アリルさんへという文字。


もらえるものはもらっておきますか……


手を伸ばしたら届きそうなところに大金が、でも……わたしはかぶりを振ってそっと手を引っ込めます。


悪銭身につかず、とか言いますし。


こんなよくわからないところから湧いてきたお金をもらうくらいなら、お金に苦しむくらいの方がまだマシです。


それにしても、ほんとに怖い一日でした。


地獄に堕ちますとか言われちゃいましたし。


受付のお姉さんのもとへ行き、


「ご苦労様でしたー」と言われた私は、何事もなかったかのようにお帰りになります。




ああ、種明かしですか?


神様は、何も三人の博士から選べ、と言ったわけではありません。


この中から、天使を選べば元の世界に戻れます。悪魔か人間を選べば、地獄が待っています。


この三人の中からとは一言も言われていなかったのです。


そして、その場には一人だけ、本当のことしか言えない人物がいたのです。


そう、私です。


本来なら、私は真実や嘘を使い分けます。人間とはそういうものです。


しかし、私の場合、つい先ほど自白剤を飲まされました。


うそをつくことができない体にされてしまったのです。


私は私は答えます。大きな声で答えます。


「天使は私! 私は天使!」




とまぁ、ざっとこんなもんですかね?


おバカと言われて育ってきたわたしですが、これくらいの事なんのそのなのですよ。えっへん。




後日談。


大流行したパンデミックのせいで大不況きました。聞いてませんよ、そんなの。ボーナス減らされました。私の海バカンスがぁ……


「はぁ、お金もらっておけばよかったなぁ」


ガックリと肩を落とすわたしでした。


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変態博士と質問博士 まいてい @mizukisan321

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