第3話
部屋に案内されたかと思えば私たちをなぜか客人だと言った男と室内なのに赤マフラーをつけた男、緑色のコートを羽織っている男がいた。しかもご丁寧にお茶まで出してくれたのだ。オッドアイさんはどっかに行っちゃったけど。
「俺はグルッペン。こっちがサイト、こっちがキヨ。」
客人宣言がグルッペンさん、赤マフラーがサイトさん、緑コートがキヨさん、よし覚えた…と思う。
「早速だが本題に入ろう、どうしてお前たちはあんな場所に居たんだ。」
それはこっちも聞きたいんですよグルッペンさん。なんて言うわけにもいかないしどうするべきか。違う世界からきましたとか言ったら狂ってるor妄想野郎ってなりそうだしどうするべきなのやら。
「……それなら他の質問に移ろう。男の方に聞きたい。どうやってクレンを…じゃわからないか、どうやってあの金髪を倒した。あいつは武器を持っていたし近接に関してはこの軍トップクラスだ。」
あ、ここ軍なんだ。
「そんなの腹パンしただけだよ。そしたら倒れた。念のために数発頭とか殴ったりしただけ。」
そんだけでモザイクかけないといけないものを作ったお兄ちゃんはすごいと思うよ。でもこんなこと普通はできないし能力のおかげなのかな?とりあえずお兄ちゃんは戦闘系の能力。…私はよくわかんないけど少なくとも戦闘系じゃなさそう。何かあった時のためにも戦闘系が良かったんだけど…。
「そうか…お前たちはどこから来た?」
どこからってこことは違う世界ですよ、はい。どう説明したらいいの?
「ここじゃない場所。それと最初の質問に答えると『気づいたらそこにいた』。俺たちの方が説明して欲しいぐらいだ。と言うわけで次はこっちの質問に答えて欲しい。そっちだって質問して来たんだ、こんくらいいいだろ?」
「ああ、別にいいぞ。だがその前に少し時間が欲しい。」
何をするのかと思えばサイトさんは扉の方へ向かう。扉が開けば雪崩のように人が溢れてくる。
「トールくんはおるとは思ったけどまさかほぼ全員集まっとるとはなぁ…。お前ら説教か今すぐ持ち場に戻るか選ばさせてあげるで。」
「まあいいじゃないかサイト!全員入ってこい!!」
グルッペンさんの言葉で入って来た人は6人。その中にオッドアイさんとクレン(?)さんがいる。さっきまでモザイクかけないとやばかったのに今じゃもう人型だ。
「おいゾキ、お前も入ってこい。」
ゾキ…?もう1人いるのだろうか。だけどサイトさんは扉を閉めたし…もう1人くるのにどうして閉めたの?
「呼ばれて飛び出てゾキだよぉ〜!!!」
「ひゃあ!?」
「あ、びっくりした?どうもゾキです!よろしくな!」
この人がゾキさん?屋根っていうか天井から来たんですけど。しかもご丁寧に四角に穴が空いている!あ、ちゃんと直すんだ。てかゾキさんのフードで綺麗に目が隠れて見えないな。
「早速だが2人に提案する。俺たちの仲間にならないか?」
何言ってんのこの人。
「アホかグルさん!会って数分!しかも侵入者!名前もどこから来たかも言わん!なのにクレンをボコボコにしたんぞ!敵の可能性だって十分…!!」
おー、ここにも常識人みたいなやついるんだ…。あれでしょ?遺伝子に反抗したみたいな?
「俺たちのメリットは?」
「衣食住、情報提供。」
「お前たちのメリットは?」
「戦力増加、近監視。」
戦力増加って完璧戦わせる気満々ね。
「……琴美、どうする?」
お兄ちゃんは心配そうに私の顔を覗き込む。
「琴美が決めてええで。俺は琴美についてくし。」
そんなこと言われても…どれが最善なのかよくわかんないわ。
「グルッペンさん、質問いいですか?」
「ああ、 もちろんだ。」
「私たちをここの戦闘員にしたいんですか?」
「あわよくば、だ。」
「もし私たちが戦えないと言えばどうしますか?」
「それでも仲間になって欲しい。」
「私たちが仲間にならないと言えばどうします?」
「ここから出て行ってもらおう。」
なんの情報提供もなしに外に放り出す気かよ。近くに何があるかもわからないのにきつすぎだろ。
「……みんな私たちが仲間になることにサイトさんみたく反対するんじゃないんですか?」
「安心しろ!納得させる。」
それは安心なのかよくわからないが圧力らしきもので制圧するのだろう。めっちゃ嫌そうな顔してるクラーさんが見えるけど。
「ここにいる人たちで1番偉いのは?」
「俺だ。」
でしょうね。まあそれなら制圧ぐらいできるだろう。知らないけど。
「それじゃあここにいる全員…お兄ちゃん以外ですけど私たちが仲間になるのに賛成かどうか言ってください。もちろん、個人の意見としてです。グルッペンさんが言ったからなんて理由はナシでお願いします。」
「それじゃあ俺と同様賛成派は手を上げろ。」
グルッペンさんの言葉で手をあげたのはグルッペンさんを入れ4人。
「それじゃあサイトと同じく反対派。」
こうして手をあげたのは4人。
どうやら賛成も反対の人数も一緒なようだ。
「それなら私たちはここを去りますよ。お兄ちゃんも問題ないよね。」
「ん、そうやな。」
お兄ちゃんはお茶を一気に流し込み勢いよく立ち上がる。
「お茶美味しかったで。そんじゃ。」
と手を振るお兄ちゃんの隣でぺこっと頭を下げ扉の方へ向かったのだがここから出さないようにとうせんぼ状態のオッドアイさん。
「オッドアイさん、どいてもらえますか?辺りが暗くなる前に色々しておかないと私たち死ぬかもしれないんですよ。」
「ならここにいればいいじゃないですか!」
オッドアイさんの目には涙がたまっている。
「やっと先輩と会えたのにお別れなんて嫌です!!」
「だから私はあなたの先輩じゃないのよ。ただの人違い。」
「そんなわけないです!!あなたは俺の先輩です!!」
そんなこと言われてもなぁ…。ぶっちゃけ他人でしょ?
「必要とされてない場所にいても苦しいだけなの。」
「俺が必要としてます!!」
「他の人は?一緒に居たくないやつ…敵の可能性があるやつと一緒に居て楽しい?」
「それは…!」
オッドアイくんは俯く。それでも私は先輩じゃないし必要とされてない。
「そこをどいて。」
オッドアイくんは渋々と言った形で横に避ける。
「ありがとうございます。」
お礼を言いドアノブを引いた瞬間
「は?」
とちょっとアホそうな声が出てしまった。
だがそれもしょうがないと思う。ドアノブを開けるとドアの奥は壁。コンクリートのようなものだ。
「私たちは確かにここを通ってきたわ。それにオッドアイさんたちがここから雪崩のように入ってきた。だからちゃんと通路はあるはずなのよ。あの人数がいれるほどの通路が。どうして…ないの?」
コンクリートを触っても偽物のような感じは一切しない。
「どうして…?」
唯一天井から入ってきたゾキさんに何かあるのか?もしかしたらこの世界は能力が?やばい、情報が圧倒的に足りない。
「まあひとまず座って落ち着こうじゃないか。お茶も用意しよう。」
グルッペンさんは微笑んでいる様子だが絶対本心からじゃない。
「仲間にならないと言えば出て行ってもらう…じゃありませんでしたかグルッペンさん。」
「ああ、そうだ。だがおもてなしがまだ終わってない。」
「何を言ってるんですか?おもてなしなんていりませんよ。早くここから出してくださいよ。」
睨むようにして見ても相手は一切怯まない。
「トップさんは約束を守れねえのか?そんな奴が人の上に立っていいのかよ!」
お兄ちゃん、結構楽しそうに煽ってますけどこの状況を楽しまないでください。
「まあまあ落ち着け。これを見ろ。」
グルッペンさんがパチンッと指で音を鳴らすと天井からモニターが降りてきて何かが映る。かなりボヤけてるな…。
「おい、ピントボヤけすぎだぞ。」
グルッペンさんの指示をどこからか聞いたのかすぐにピントが合い牢屋が見える。そしてその中には…
「コウさんと透さん…?」
この2人は私たちが元いた世界での友達。と言っても歳はお兄ちゃんと一緒だから先輩だけど天月コウさんと鳥井透さんがぐったりとした状態で椅子に座らされておりロープでくくりつけられている。
「さあ、これからおもてなしを始めよう。この2人を助ける救出ゲームだ。ルールは簡単、賛成派が持っている鍵を盗め。鍵を全て集め牢屋にかけられている錠を外せ。そしたらあの2人を助けれる。とても簡単だろう。ちなみに鍵を奪い返すなんてことはするなよ。鍵を取られたらそこで終了。あの2人を殺したり骨を折った場合は強制退場だ。ちなみに反対派は参加不可だ。カメラからでもじっくり観察しているといい。」
あの2人を助けたいのは山々だけど私たち半殺しになる可能性あるのね。刃物で刺しても骨を折ってないしまだ死んでいない、なんて言い訳ありそうだしこいつらが普通なんてありえないと思う。だからこそあの2人を見捨てれば何されるかわかったもんじゃない。
「わかった、参加する。お兄ちゃんはどうする?」
「参加するに決まってんだろ。絶対助け出す。」
「それじゃあおもてなしスタートだ。」
能力者兄妹が異世界にログインしました 紺崎 翔空 @ego-liasypwr
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