第2話
目を覚ませば自分の部屋にいた…なんてことはなく全く見覚えのない場所。周りを見渡せば大きなお城が目に入る。
「外国…?」
少なくとも昔の日本の城ではない。異世界に来たとはいえ情報がなければどうしたらいいのかわからない。
「お兄ちゃん、起きて。」
そう言いながら隣で寝ているお兄ちゃんを揺するれば目をこすりながら起きる。
「ああ…おはよぉ…。」
「ガチ寝してたの?さっきのこと覚えてる?」
「覚えてる。それよりここどこ。」
「それは私も聞きたいわ。とりあえず人でも探して色々聞きだそうよ。」
なんかのテレビでも第一村人に話聞くやつあるしみんな色々話してくれるでしょ。
「そうだとしてもなんか雰囲気やばいないか…?」
「そこは触れないお約束ってやつじゃないの?来て早々危ない目にあうとかおかしいでしょ。さすがにあの神だってそんなひどくないでしょ…。」
なんて言ってもどうしようもないことはわかっているが現実逃避をしないとさすがにきつい。
だって今の状況は…
「俺たち殺されるんじゃねえか?」
しっかりとは姿を現していないが明らかにコソコソこちらを観察している。それに城の窓からこちらへ銃を向けている人が3人…。
この世界では銃を持っていても捕まらないのかしら?
「このまま死ぬよりは足掻いたほうがいいよな。」
「それはそうだけど…もし能力を使うにしてもどんな能力をくれたのかわからないわ。」
「まあまあ、普通なら今はゲームでいうチュートリアル。どうにかなるんじゃねえの?」
「人ごとね。まあ殺されるよりマシだわ。」
私は首につけていたチョーカーを外しポケットの中へと入れる。
「あれ?俺ヘッドフォン外したとしてどこに仕舞えばいいんだ?」
「地面にでも置いといたら?」
そういうとお兄ちゃんはおとなしくヘッドフォンを地面に置く。私が言っといてなんだけどそれ壊れたらどうすんだよ。
「お兄ちゃんの見た目まーったく変わってないね。本当に能力使えんの?」
「そういう琴美も全く変わってないぞ。あの神インチキ野郎とかじゃねえよな?」
ぶっちゃけインチキ野郎でもおかしくない気がする。神って感じしなかったしむしろ紙…。
「まあいいわ、とりあえず話し合いで解決しましょう。」
「この流れだと能力で戦うんじゃねえの?」
「暴力沙汰にする気か。目立ちすぎるのは嫌だわ。」
「でもこの状況で話し合いで解決できんのかよ!」
「知らないわよ!でも話を聞き出すためにも話し合いで解決したほうがいいわ!それが無理なら暴力で解決すればいいの!!」
「まあそれもそうか。」
話がひと段落したところで金髪の男が話しかけて来る。
「あー…終わった?」
「「あ、すんません。」」
金髪の男の手には剣。本当ここ銃刀法違反とかないのね。
「とりあえずついて来てもらえるか?」
「なんでだよ。」
「お前らが敵かもしれねえから。それ以上でもそれ以下でもねえ。」
金髪の男は明らかに私たちを警戒している。しかも敵って…誰かと戦ってるわけ?
「俺たちがついて行ったとして俺たちをどうするつもりだ?」
お兄ちゃんの質問に金髪は答えない。ただただ黙ったままこちらを見つめている。
「【どうやってこいつらはここに入って来たんだ?門の前には兵がいるしレイトが監視カメラで確認しているはずだ。やっぱり敵国に奴らか?とりあえず拷問でもして情報を聞き出すか。あとグルッペンとサイトにも報告…めんどいな〜。】」
勝手に動き出した口を止めるように手で口を覆う。
「琴美…?」
お兄ちゃんも金髪も驚いたようにこちらを見ているが驚いたのは私も同じ。
「なんで…?」
どうしてあんなこと言ったんだろう。なんなのレイトとかグルッペンとか。全く聞いたことない。何かの名前かしら?
「なんやお前…。」
金髪の男は冷たく言い放ち私の方へ一歩、また一歩と歩み寄って来る。私の前に立ったお兄ちゃんを気にせず男はどんどん近寄って来る。
「やっぱりお前らは敵か。」
そう呟いたかと思えば男は耳に手を当て先ほどよりも小さい声でボソボソと何か言っている。
「意味わかんない…。」
あの神はどうしてこんな世界に私たちを?別にこんな世界じゃなくてもよかったじゃん…。もう死にそうなんですけど。
男は私たちに剣を向け口を開く。
「お前たちがおとなしく降参すれば命まではとらん。あと相手は俺1人じゃない。さすがに気づいとろ。」
まあ城から銃向けてるやつとかいるし相手は1人じゃないだろうけど…もし降参したとしても敵とみなされてるみたいだし…。それにさっき私の口が勝手に動いたのはなんだったの?あれが私の能力?意味わかんないんですけど。
「答えんってことは命を捨てるってとらえるで?」
いやいやいや、物騒すぎるでしょ。ここに法律とかないわけ?てかここに来て数分しかいない気がするんだけどいきなり命取られるの?やばすぎだろ。
「とりあえず落ち着けって。」
剣向けられてるのにどうしてお兄ちゃんはそんなに落ち着いてんの!?
「落ち着いてんだろ。落ち着いてなかったら今頃お前らは肉片だよ。」
この人どうなってんの?これで落ち着いてるとか大丈夫ですか?この世界はそういう奴ばっかりなんですか〜?
「そんじゃ俺がお前を肉片にしてやるよ。」
そうお兄ちゃんが言った瞬間目にも留まらぬ速さで金髪男を殴った。
お兄ちゃんってあそこまで速くなかったしこれが能力なのかな。
そう思った瞬間誰かによって後ろに引っ張られたかと思えば私が元いた場所にとても小さな穴が空いた。銃声音は聞こえなかったが多分銃弾。殺す気だったのだろう。
「ありがとうございます。」
しゃがみこんでしまった私は顔を上げ後ろにいた人にお礼を言う。
「別にいいっすよ。」
男の目は右目が紫、左目が黒のオッドアイ。
「その目…私と一緒ですね。」
私もなぜか生まれつきオッドアイだった。だが助けてくれた男とは違い私は右目が黒、左が紫だった。
男はなぜか寂しそうに笑い私を抱きしめた。
「会いたかったです、先輩。」
「何言ってんのこの人。」
やっとまともな奴がきたかと思えば会って早々人違いとかこの世界の人間はなんかインパクトを残さないと気が済まないのだろうか。
「もう絶対に死なせませんから。」
「人を勝手に殺すな。あと抱きつくな今すぐ離れろ。」
そう言っても男は離すどころか抱きしめる力が強くなる。正直痛い。
「お前殺すぞ。」
笑顔でそう言ったお兄ちゃんに対し
「お兄ちゃんもこの世界の人のように物騒なのかしら?それよりもさっきの金髪さんは?」
と質問する。
「ん?ああ、そっち。」
お兄ちゃんが指差した先にはモザイクをかけないと色々やばそうなものがある。
「肉片?」
「そうやで!肉片になりたがってたからな!」
あの人は肉片になりたかったんじゃなくて肉片にしたかったのでは?
「あ…クレンさん…。」
「あ、知り合いですか?」
「はい、クソ先輩です。」
せんぱい…センパイ…先輩!?
目の前で先輩がモザイクかけないと色々やばそうなものになってるってなかなかグロいわよ!?それにあの人は私たちを敵って言ってたし…オッドアイの人も私たちを敵だと!?
「ご、ごめんなさい!私たちは敵じゃないわ!クレンさん…だっけ?あの人をあんな風にしたのは悪いけど正当防衛よ!」
「ああ、大丈夫っすよ。先輩が敵だなんてそんなのありえないですよ。俺はいつでも先輩の味方です。」
ありがたいんだけど私あんたの先輩じゃねえから。
「お前いい加減に琴美から離れろ!!」
お兄ちゃんは少し怒りに満ちた声で叫びながらオッドアイさんを引き離す。
「誰ですかあんた。先輩との時間を邪魔しないでください。」
「はぁ!?なんで琴美がお前の先輩なんだよ!」
「はぁ!?そんなn」
オッドアイさんの声を遮るようにして銃声音が聞こえる。銃声音のする方を見れば城のベランダ的な場所に1人の男がいた。
「諸君!!よく聞け!!侵入者2人を俺の客人とする!!これからあの2人に攻撃をした場合叛逆とみなす。それとトールは俺の元までそいつらを案内しろ。」
「はぁ…ゲード・クラー、グルッペン。」
「グルッペンって…!」
私が口にした何かよくわからないもの。この人はそのことについて何か知ってる…?
「それじゃあ2人とも、俺についてきてください。あのクソ先輩はほっといていいんで。」
私とお兄ちゃんは顔を見合わせ同時に頷く。私はチョーカーを、お兄ちゃんはヘッドフォンを付け直しオッドアイさんを見る。
「それじゃあ入ってください。」
オッドアイさんが開けた扉を通り城の中へと入った。
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