人類補完計画に反対します

最初に、以下の2点を断っておきます。

・今回の内容は、今はまだ現実的な政策の話ではなく、SFの領域の話です。よってカクヨムに書いても大丈夫だと判断しましたが、運営様から「政治的活動だからNGです」と注意を受けた場合、記事の削除などの対応をします。

・恥ずかしながら、自分はまだ「シン・エヴァンゲリオン」を見ていません。よって、同作で同様の反対理由がすでに語られている、というリスクを覚悟で書きます。


前置きが長くなりましたが、結論から言えば、自分は人類補完計画(※)に反対します。

※「新世紀エヴァンゲリオン」に登場した、「全人類を一まとめの完全な生命体にしよう」という計画のことです。同作に出てきた計画が有名なため、同様のアイディアが同じ名前で呼ばれることが多いです。


その理由は、

「完璧な存在になってしまったらつまらない……」

「人類が全て一まとめになったら、他者がいなくなって寂しい……」

といった抽象的なものではありません。

そうではなくて、

「多様なばらばらの個体であり続けることが、人類にとって有効な生存戦略であり続ける」

と考えるからです。


自分も少し前まで、人類補完計画を肯定的に捉えていました。

なぜなら、ブレイン・マシン・インターフェイス(略して「BMI」。脳とコンピュータの通信のことです)の研究や実験が現実に進んでいて、自分自身、そういう「テクノロジーの力による人類のアップグレード」に肯定的な考えを持っているからです(https://kakuyomu.jp/works/1177354054895092612/episodes/16816452219444409477)。

だから、全人類が脳をネットにつないで、単一の巨大な精神を形作れるようになるのも時間の問題である。そして、それが技術的に実現可能になれば、みんな徐々にそれに対する抵抗を捨てていくだろう。そう考えていました。


しかし少し前、ニュースサイトで読んだとある記事を受けて、考えを変えました。

その記事には、超ざっくり言うと、

「生物が、生存に「不利」な形質を持ったものも含む多様な個体を生み出すのは、環境の変化によって何が「有利」で何が「不利」なのかが変わることもあるから」

という話が書かれていました。

その原則は、テクノロジーの力によってアップグレードされた新しい人類にも当てはまるだろうと、今の自分は考えています。


仮に人類補完計画が実現して、例えば、

・単一の完全な個体である「人類」が誕生する

・そこまで行かなくても、全人類がネットを通じて同期し、なおかつ自分の精神や身体も自在に作り替えられるようになり、常に「有利な」形質に画一化される

ということになったとします。

それでもこの宇宙には、我々人類の生存に対する、どんな未知の脅威があるか分かりません。

それに対し、単一の完全な個体となった、あるいは「有利」な形質に画一化された人類が遭遇したら、一撃で人類が全滅してしまう。そういうリスクが人類補完計画にはある、と自分は考えます。

だから、多様な個体の群れであり、なおかつ多数派の「有利」な形質に同期することも、「不利」な(そして、環境の変化によっては「有利」になりうる)形質を選ぶこともできる自由を持っていること。それこそがきっと、未来の人類にとっても有効な生存戦略です。


いつか人類補完計画が現実の政策課題となった時、この記事が、読者様の意思決定の参考になれば幸いです。

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