謎の命令に怖さを感じながら、「えっ?」って思うユニークな設定。
しっかりホラーしながら不思議なユーモア感を覚えます。
実は作者、黒巻先生の他の作品も読んでますが、ホラーの中に不思議と心引くユーモアが読み取れます。
実はこれ、一流の証です。
楳図かずお先生は一流のホラー漫画家ですが、一流のギャグ漫画家でも有ります。
稲川淳二氏は一流の怪談師ですが、元はコメディアンです。
恐怖と笑いは実は表裏一体、笑いが出来ない人は本物のホラーは書けないと自分は思っております。
人を楽しませたいというエンターテイメントな所が無いと、薄っぺらいホラーしか書けないのです。
先ずはこの作品をお読み下さい。
その意味が御理解できると思います……。
揺り起こされた“わたし”は、4人の女性と共に密室へ閉じ込められていた。そして、どこからか聞こえてきたアナウンスはとんでもないことを告げる。この部屋からの脱出方法はただひとつ。恋人同士になれた者だけがこの密室から生きて解放される……。
ちなみに5人全員、普通の女性です。つまり、いきなりデスゲー+無理ゲーから物語が始まっているわけで、実にキャッチーですねぇ。
そしてデスと無理を加速させるゲームルールですよ。これがキャラクターを追い立てて、追い詰めていきます。デスゲーものはこの部分の「いやらしさ」が鍵になるものですが、著者さんのいやらしさのさじ加減は絶妙のひと言! ルールに脅迫されたキャラ同士が自分の手で関係性をかき乱していく有り様、その惨さをじわーっと楽しませてくれるんです。
過程がしっかり積まれていればこそ輝く“驚愕”のエンディングと最高に最悪な読後感、ずいっとおすすめです!
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)