第2話


その日以降、各国は形式的には残ったものの、この世界は神々を頂点にして、その真下にこの神聖国。そしてその下に各国という形が完成した。神々の世界でも、この神聖国が信仰する神々が上位神で、各国の神々が下位神になった。

ここで問題になったのは、この神聖国の内部事情だ。

神聖国ではそれまで、国を治める国王と国内外の神殿すべてを掌握している法皇がおり、お互い不干渉の立場を貫いていた。それがこの日から各国が神殿に忠誠を誓ったことで、政治で国内の民を導き各国と交流をしてきた国王や貴族たちが不満を爆発させるのは当然だろう。


しかし思い出してほしい。この国は神聖国・・・つまり『神の国』なのだ。

遥か昔はここには世界に散らばる神殿の頂点に立つ巨大な主神殿があるだけだった。主神殿で働く者たち用の田畑もあり、畜産用の動物もいる。教義では肉も魚も食していい。ただし『生命を頂く以上、少しの無駄も許されない』。そのため、毛皮や骨、脂なども加工されてアクセサリーや聖油になる。それらすべてが『神への奉仕』となるため、神官たちの手で行なわれていた。


そして、そんな大都市並みの広さを持つ主神殿に各国に散らばる信者が巡礼に来る。そんな巡礼者を相手に宿が建ち、食事を提供するところが出来、帰国を諦めた人々が住み着いた。農産物を育てる農民が住み着き、田畑を耕し、村が出来、町となり、国となった。

自分たちは神官とは違う。だからこそ自分たちの手で自治を行い、神殿に迷惑を掛けない、神殿に寄生しない道を選んだ。


『神殿のお情けで、この地に住まわせてもらう者』


だからこそ『神聖国かみのくに』なのだ。

国王や貴族たちは元々、神官が点在していた村に神殿を建てて人々を管理し始めたのが起源だった。最初から彼らは神殿に支配されていたのだ。

・・・それがこの国の成り立ちしんじつだった。


それを思い知らされた国王や貴族たちは二度と忘れないため『洗礼せんのうを受ける』こととなった。


『自分たちは神殿のお情けで生かされている』


それを魂に刻み付けていても、神殿内で『貴族の特権』を振りかざす者はいるのである。中には何らかの事情があって『洗礼せんのうを受けていない』者もいる。洗礼を受けるのは前年に4歳を迎えた貴族の子息令嬢。『大人の言っている言葉が理解出来る』年齢だからだ。

その頃に大病を患ったなどの理由から洗礼を受けず。そのまま翌年『受け忘れた』ということもある。領都で生まれ育ち、5歳から貴族教育を受けるため王都に移り住む貴族の子供たちもいる。

『領都で洗礼を受けてからきた』と『王都の主神殿で洗礼を受けるだろう』という勘違いが起きる。子供に「神殿にお祈りしてから来た」と言われて、父親たちは『洗礼を受けてきた』と思うのだ。

子供は確かに領都の神殿で祈ってきた。『長旅の安全』を。


この時点で分かる通り、貴族は知能が高くなかった。




800年前の騒動当日の朝に世界で一斉に咲いた花がある。それは『神聖国が開発した毒花』で、各国に点在している神聖国の神殿がお香として育てていた花だ。

花の香りが視覚狭窄で『世界が闇に覆われた』と思わせて、幻覚症状で『神々の降臨』を演出した。さらに、長年人々の周りで漂っていた神殿のお香が強力な催眠効果を齎して神聖国への絶対なる忠誠を誓わせた。

その国の神を棄教させるのではないため、騒動も反発も小さく済んだ。



そんな国だったから、主神殿は謂わば無法地帯だった。ただ『表院表向き』は今まで通り、神に仕える神官が人々に門戸を開いている。

しかし『奥院』はこの世界の闇を背負っている。『罪人を引き受ける』のもそうだ。毒花のようなものを生み出した時の人体実験に有効活用されるのだ。

・・・そして、首輪が生み出され、今でも日々改善されている。



猫の中には母親と共に売られる子供もいる。

神殿のお香で正気をなくした母親の手で自らの子供に首輪を着けさせ、全裸にしてお尻に『ススキカヤ』をし尻尾に見立てて【 人の姿をした人ではないモノ 】として神殿に差し出させる。そうして売られた子供は、親の目の前で首輪に鎖を繋がれて家畜小屋へと連れて行かれる。歩ける子供は家畜小屋まで自らの足で歩かされる。そして家畜小屋に入れられると四角い鉄の檻の中で飼育される。4歳以上の子供になると、完全に首輪の支配を受けるまでは暴れて逃げ出そうとするからだ。


もちろん【 家畜 】のため全裸で愛情も与えられない。言葉を持たない、山羊の乳を与えられるだけの動物となるまで檻から出られない。そして一定の期間を過ぎても自我が消えず【 人の姿をした人ではないモノ 】になれない場合、地下に連れて行かれる。特に貴族の持つ『嗜虐欲と服従欲』を満たすための【 反抗的な家畜ドレイ 】として。


正気に戻った母親には操られていた自覚はない。そのため『自分の手で【 人の姿をした人ではないモノ 】として差し出した』という後悔の中で首輪を着けられて、記憶と自我を失う。普通に売られたモノと違い、彼女たちは首輪の支配を受けやすい。子供という心の支えを自ら差し出したことで希望を喪失しているからだ。



そして【 猫 】が神殿で飼われている理由。

それは『人間ではない』ため、神官・女性神官や寄付という名の金銭を差し出した貴族たちの性欲処理の道具として。そして彼らの支配欲や征服欲を満たすための『生きた道具』として使われるためだ。

教義では『異性・同性に対しての色欲を固く禁じる』とある。そのため『人間でなければ良いだろう』という発想に至ったからだ。

つまり『自分たちの欲を神の教えに背かず満たすため』と言った方が正しいだろう。



【 猫 】は首輪に鎖を繋がれて裏院内を四つん這いで散歩と称して引き摺り回される。床に置かれた皿に口をつけて食事をさせる。排泄も専用の台に乗せて大きく開脚させて尿を『収穫』させる。

排便機能はない。そのため、お尻の穴には『尻尾付きの栓』が差し込まれている。


かつては散歩の途中に寄る外庭で数日に1回、栓を抜かれて液体の薬をお尻から入れられて強制排出させられていた。しかし今は20日に1回、散歩の途中にある泉に立ち寄る。そこの祭壇で栓を抜かれると『泉で飼われている触手たち』が100メートルは伸縮可能な触手を伸ばし、口腔内や膣、尿道と腸内に挿し込んで洗浄する。不妊薬で機能が停止している子宮の中にも細い触手が入り込んで洗浄される。触手が抜かれると、ふたたびお尻に栓を奥まで差し込まれる。

【 猫 】や【 猫候補 】には子宮と腸内にスライムが入れられている。そのため排泄物はスライムが吸収しょくじをする。泉で栓を抜かれると腸内にいるスライムは外に出て来る。そして腸内の洗浄が済むと空腹のスライムが腸内に入り込んでから栓をされる。出てきたスライムは研究所で様子観察される。

ちなみに腸内に入るスライムは無色透明だが、出てきたスライムには色が付いている。それによって猫の腸内環境が確認出来、体調管理に役立っている。


どちらも沢山の見学者みまもりの中で行われる。『公開陵辱』を楽しむためだ。

羞恥心など猫にあるはずがない。心などすべてが封じ込められて、『首輪からの命令に従う』しか許されていないのだから。



【 人間としての尊厳を奪われたモノ 】を自分の命令に従わせることで満足する者が多い。それを【 猫 】に向けることで、外面ソトヅラや体裁を保ち『人格者』としていられるのだ。・・・そう。国王ですら『神殿に足繁く通う信者』なのだ。

その支配欲・征服欲を満たすため、猫たちを陵辱するだけでは飽き足らず、首輪で行動だけでなく排泄ですら支配して『服従させて悦んでいる』のだ。

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豊穣の女神の遣い アーエル @marine_air

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