一章一話から最新話三章六三話までを読んで。
話は海賊船を中心に海賊団の人々(厳密には人々ではないのだか)を中心に、主人公メアリや海賊団の船長ラムズの秘められた思いや目的、使族などの考えの違いを軸に物語は進んでいく。
この作品には色々とこの作品独自の用語や設定が出てくるが、ここでは割愛させていただく。その設定、魔法や神等自体は、馴染みのある物を作者自身が物語に合うように、構成されたものであると思われる。
しかしこの物語の魅力は多種多様な種族ではない。その種族、作中では使族と呼ばれる。他にもいるが、その使族自体で常識、性格。要するに脳の造りが違う。
という所がこの話の醍醐味である。そのため同じ世界で暮らしてきた者たちですら、違いを尊重すること自体が難しい世界観なのだ。
特にそれは緊急時だと顕著になる。けれどもそれを海賊団の船長ラムズは、そんな使族が違うくせ者たちをまとめ上げていると言う訳でもない。
求心力というより、ラムズの特異ともいえる魔法の実力や、その本人自身の冷徹さで大人しくさせていると言ったほうが、正しいだろう。
作品を読んでいても、彼自身ステレオタイプな海賊といった感じでもない。作中でも海賊の王子様という異名をとるほど彼は浮いているのである。
そんな冷徹な彼が唯一執着を見せるものが宝石、ひいては主人公メアリである。
主人公メアリはその使族らしく、高潔な性格で行動力があり、作者が参考にしている中世ヨーロッパではありえない行動を序盤にするほどアグレッシブな少女だ。竹を割ったような性格ではあるが、メアリの使族と他の使族のギャップからか奥ゆかしさがある。そのため年齢よりもしっかりしているように見えて、危なげにも見える。そのギャップが魅力的でもある。
メアリはその使族の中でも迫害を受ける立場である。そんな彼女を彼は普段からは考えられないほど、守ろうとする。ヒロインである彼女を守るということだけを見ると、確かにヒーローらしい行動なのだが、彼の秘密主義な所やその冷徹さが裏があるように思えてしまう。
彼の執着の理由が分かるのが楽しみである。
メアリは序盤は自分の呪いを解くことを一番に考えていたようだが、異世界転移者、現代の日本人だと思われるレオンと関わることで、互いの使族の違いについて考える様になり、行動力だけではなく思いやりがある少女へと成長していく。そこにこの世界では考えられない行動を起こす者たちや、彼女に降りかかった不慮の事故が絡み、メアリとラムズの関係性も変化を見せていく。
話の主軸であるはずのメアリの呪いについての話が、まだうっすらと見えてきたばかりなので、そちらにも注目していきたい。
使族の違いに対する葛藤や、その行動の真意が気になるラムズ、異世界転移者の出現など、この世界の常識を破る様なことが起こり始めた世界。メアリの呪いはちゃんと解けるのか。続きが気になる作品である。