タイトルの印象よりもずっと大人向きの『愛』の話

 この作品は「恋愛」をテーマにしていますが、恋愛を中心に描いた作品ではないと思います。
 登場人物たちは「好き」という思いを各々持っているのですが、その「好き」は「恋愛的な」安っぽい好きではなく、「愛」を表現しようと試行錯誤する作品です。
 特に三角関係な主人公と親友たちは、高校生とは思えないほど達観し、高次の愛を実現しようとしています。
 本当に各々互いに大切にしあっているから生まれる愛であり、この愛に説得力をもたせる事ができる作者の力量には驚くばかりです。

 しかし、この作品の一番すごいところは、そんな高校生離れした価値観やモラルを持った3人の関係を、高校生らしい純粋さでぶつかるヒロイン(妹)の存在だと私は思います。
 題材や登場人物を考えると、哲学的・文学的な難しい苦しい話になりそうなところにブレーキを掛け、閉塞へ進もうとする物語をひっくり返そうと努力し続けます。
 重苦しくとも優しい「愛」をぶつけ合う文字通りのハートフルストーリー。おすすめです!

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