第10話 ラブコメ展開

「はぁ……」


俺はあの話し合いの後、一目散に家に帰り、ソファで寝そべっている。


「緊張したぁ……」


次々と心から漏れる気持ち。


俺が天井の上をボーッと見つめていると、風呂の脱衣所のドアが開く。


するとそこにはタオル1枚の霞が立っていた。 しかもお風呂上がりということもあり、頬や肩がほんのりと赤らんでいた。そして発育のいい胸が強調されていた。


俺はソファから跳ね起きる。


「なっ!?」


俺は慌てて目をそらす。 逸らさないとどうなるか本能が分かっているからだ。


コンマ数秒後、


「きゃ、きゃあああああああ!!」


俺の予想通り悲鳴をあげる霞。 当然夜ということもあり、近所迷惑だ。


「な、なんでいんのよ!?」


霞は慌てて脱衣所に身を隠し、顔だけヒョコッとドアから出す。


「今帰ってきたんだよ! というか俺が居なくてもタオル1枚で脱衣所から出てくんな!」


「で、でも玄関のドアが開いた音なんてしなかったわよ! まさかあんた、私のお風呂上がりの時間を予想して……」


「違う!」


断固として否定する。 心做しか霞の顔がさらに赤みを増した気がする。


「本当なのね?! 嘘だったら許さないわよ?!」


「本当だ!」


「……分かったわよ。 大声出して悪かったわね」


そう言って霞謝罪を述べ、脱衣所のドアを閉める。


……なんか、やけに素直だな。


今回の霞の態度は明らかに優しすぎる。 今までだったら俺の言い分聞かずに殴られだからな。前にも1回こんなことあった時は俺に認めさせるまで殴ったからな。 いやでも今回のも前にも決してわざとではない。 本当に偶然だ。


「……ったく、ラブコメ展開すぎだろ……」


俺は再びベットに横になる。


1


俺が再び意識を取り戻すと、そこはソファの上だった。 どうやらあのまま寝てしまったらしい。


「腰が痛い……」


起きて初めての発言。



俺が背中を起こしはっきりと目を開けると肩から足にかけて毛布がかけられていた。


これ、まさか霞が?


予想外の展開に思考が止まる俺。


そこにエプロンを着た霞が近づいてきた。


やばい! 確実に殴られる! 俺が痛みを覚悟したその時。 予想外の言葉が霞から浴びせられた。


「あんたあのまま寝てたわよ。 相当疲れたんでしょうね。 早くお風呂に入りなさい、朝食も作ったから上がったら食べて」


何とも優しい言葉。 涙が出るほどだ。


だが、涙は流してはならない。


「お、おう。ありがとう」


霞はコクリと頷き、キッチンに戻る。


だが俺はこの質問を聞かずには居られなかった。


「おい、どうしたんだよ? 急に優しくなって、お前だったらいつもこんな時殴ってただろ?」


「べ、べつに。 いつも通りよ」


霞は背中越しに答える。


そうか、霞は、本当は優しいんだ! 女神様なんだ! 今まで悪魔にしか見えなかったけど、俺には今、霞に黒い羽ではなく、天使の白い羽が、あるように錯覚してしまった。


「そうか! お前良い奴だったんだな! 今まではただの単細胞ゴリラとしか思ってなかったけど、本当は女神様だったんだな! 本当は人を殴ったりするゴリラじゃなかったんだな!」


嬉しさのあまり思ったことを口にしてしまう。


すると霞が振り返り、ギロリと鋭い視線を向け、こう言う。


「だ、だれが……」


「ん? どうした?」


「だれがゴリラですってええええええええ!」


右頬に激痛が走る。 それもそのはず鬼の形相をした霞がその鉄の如き拳を俺に振るったのだから。


薄れゆく意識の中、俺は最後の力を振り絞り、こう言う。


「前言……撤回……」




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ツンデレなのに俺の嫁が可愛すぎる。 如月和人@絶賛受験勉強中 @HAJIME1007

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