虹龍大戦

夢美瑠瑠

第1話 虹龍

 


            小説・『虹』


   幻想界の皇帝は“虹龍”(こうりゅう)が、永世帝位についていた。


 この極彩色のうろこが燦然と輝いている、巨大な龍は、たぶんジュラ紀の末頃に、 ティラノサウルスとプテラノドンの交配種、突然変異種として生まれ、

 暴君龍並みの牙、爪、顎の上に巨大な翼を持ち、加えて異常に脳が発達していたために、 すぐに世界についての知識に超能力的に悟達するようになり、

 この現実世界と異次元の「幻想界」を繋いでいる一種の空間のねじれのごとき

 エアポケットを直観的に知覚して、其処との行き来が自在にできるようになった。 それ以来、虹龍は年を取らなくなり、「神仙龍」とも呼ばれて、不老長寿となった。 そうして人間や妖精をはるかに凌駕するその巨大な脳に来歴する異常に高い知性で、 幻想界に君臨するようになったのだ。人間の一万倍はあろうかという数の脳細胞の ネットワークが、シナプスとニューロンの網の目のオートマトンは、龍の行動力ゆえに これもけた外れの数で時々刻々遭遇するところの世界中の、 世界についての情報を日々貪欲に吸収し、消化し、持ち前の深甚なる知性と、 獲得した外界についての豊富で細大漏らさぬ知識が、相互作用的に、

 どんどんインテグレイトされていった結果、現代の世界中の人間を合わせた以上の、 恐るべき知性、神算鬼謀、そうしてもちろん火山をも砕く膂力(りょりょく)を併せ持った 想像を絶する超優越性の権化が、 幻想界を治める王者として運命づけられたかのごとき、 “生ける伝説”とも称される、ド迫力の”巨神『ラルク』”として誕生なったのである・・・


 例えばカメレオンのように美しくて変幻自在に色彩を変えられる動物は現実世界にもいるし、 トカゲなどもよく見ると随分綺麗な玉虫色だ。

 虹龍の宝石のごとき色彩は爬虫類としてはそう珍奇な現象ではなくて、

 彼はその美麗さを、皇帝たるものの栄光あるエンブレムのようなものとして、

 非常に誇ってもいたのであった・・・


<続> 

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