第4話 長所って?

※このお話には本編未公開のネタバレが大量に含まれています


~~☆~~♪~~(ジングル)~~♪~~☆~~

「本日も始まりました音楽部の生放送、本日のパーソナリティーは~、わたくし小巻ナツメと~?」

 「古我悠希でお送りします」



「いやー、今日は雨だね!」

 「何で嬉しそうなんです?」

「花粉がね。私の宿敵なんだよね!まさに私にとっては恵みの雨なんだよね」

 「まぁ、花粉症は作業効率を下げるとも言いますし、先輩が年甲斐もなく雨乞いをしていることが分かりましたよ。今後も雨が続くと良いですね」

「さすがにそこまではしてないけどね!」

 「俺は歩きで学校に来ないといけなくなるので、雨は絶対に嫌ですがね」

「賛同してくれてた訳じゃないんだね!やっぱりだよ!知ってたけどねっ!」


「はい、それでは本日のテーマですが・・・うんうん、なーるほど役に立ちそうなお話ができそうですね!『長所について』です!いえい♪」

 「なんですかそのテーマ・・・また辞書引くだけのやつですか?」

「そんなわけないよ!今回のは補足もあってね、面接や自己紹介で良く使われる長所ってことみたいだね」

 「何となく分かりました。じゃあ早速先輩の見解を聞かせてください」

「あ、あれ?何かいつにも増して投げやりだね?実はコレはね、私極意を知っているんだよねぇ。知りたい?しょうがないなぁ、もう♪」

 「――では、小巻夏目さん。あなたの長所をお聞かせ願えますか」

「え?え!?わ、私の長所は、誰とでも分け隔てなくコミュニケーションを取れるところです!」

 「――つまりあなたは、誰にでも良い顔をする、八方美人ということですね。他には?」

「あ、あの・・・好きなことに一生懸命努力できることです」

 「――つまりあなたは、嫌なことには努力できないということですね、他には?」

「うう・・・しゅ、周囲の反対にもめげずに、一つの部を運営する積極性があります・・・」

 「――つまりあなたは、周囲の意見を意に介さない独善的な行動をしてしまいがち、ということですね。はい結構です」

「ぐすっ・・・」

 「まぁ、先輩の極意なんぞ、その程度ってことです。つい忘れがちですが、短所をひっくり返して長所にする、ということ手法は、長所から短所を類推することもできるということです。というより、そろそろ泣き止んでください。放送事故ですよ。はいティッシュ」

「(チーン)――花粉症がマシだって話をしたのに、結局ティッシュが手放せないよ・・・じゃ、じゃあゆーくんの長所はなんなのさ!?」

 「長所というものは、他人が人物を評価する際に使うものです。なので自分では答えられません」

「何それズルい!面接とかでもそう答えるの!?」

 「そんなわけないでしょう。そんな下らない質問をしてきた時点で、俺の中で不合格です」

「立場が変わってるよ!」

 「といっても、長所を教えてくれというのは、短所を教えろと言っているのと同じことですよ?まぁ、どうしてもというなら、その質問の意図を問い質します」

「で、でもそれじゃ合格できないかもしれないよ!どうしてもやりたいことだったら、意志を曲げてでも応えなきゃいけないんじゃないの?それでやり直しになると、ゆーくんの嫌いな非効率になるよ!」

 「うーん・・・まぁ、そうなるかなぁ・・・」

「納得できない?そうだ!私も面接試験があるんだよ!それの対策ってことで、何かいい方法を考えて!」

 「受かるだけなら――そうですね・・・ひっくり返しにくい長所を言えば良いんじゃないですか?」

「うーん・・・例えば?」

 「さっきの先輩の長所ですが、【好きなことに一生懸命努力できることです】を、【好きなことに一生懸命努力できることです。私はそのお陰で、ピアノコンクールで金賞を頂けました】と具体的な成果を入れると、咄嗟に短所を返しにくくなりますし、努力が目に見えてアピールできると思います」

「おー良いね!それ採用!メモメモ・・・」

 「これはナツメ先輩用ですよ。ナツメ先輩が音大を受けるから通用するだけです。さすがに体育系の面接では使えませんしね。簡単に言えば、ふわっとしたものを、具体例で固めるということです。用法用量を守って正しくお使いください」

「わっかりました!じゃあ私の他にも面接で困っている人は、音楽部の古我くんまで相談してね!」

 「余計なことを言わんでください。可愛い女子以外は受け付けませんので」

「ぜんぶ台無しだよ!ゆーくんは優しいから誰でも聞いてくれるからね!」

 「だから余計なことを――」

「それじゃーみんな頑張ろうね!」



「は~い、そろそろ終了のお時間です。本日のお相手は~音楽部部長、小巻ナツメと!」

 「音楽部ヒラ部員、古我悠希でした」


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スピンオフ1話はコチラ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054895038501/episodes/1177354054895038990


本編が気になった方はコチラ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894172807/episodes/1177354054894172921


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