第52話 デューク、メリッサの依頼を請け負う
アーバインはメタをじっくりと観察しながらも色々と話をしたりとまるで魔獣学者の様である。デュークが生温い目で見ているとサガがデュークにこう言った。
「アーバインはな、勇者になってなければ間違い無く魔獣学者になってたろうよ。その位筋金入りの魔獣マニアなんだ…だからあんまり可愛そうな目で見ないでやってくれや」
「いやいや、そんな風には見てないですけどね…」
ムツゴ○ウ氏の様な可愛がりなのでかなり奇行に見えなくも無いが、メタが嫌そうで無いのでこれはこれでアリなのだなとデュークは理解していた。
『アーバインはまりょくのいろがきれいなの』
「魔力の色??」
『ロキもペインさんもきれいなの。ペインさんがいちばんきれいなの』
「ペインさん???」
「あっ、ペインさんはローナイト支部の魔力探知の方でロキ様の実の姉です」
「は??ペインがロキの姉だったのか??」
『ペインさんとロキはまりょくのいろとがらがにてるの』
「メタはこの能力で二人が姉弟だと見抜いたんです」
「ホントに素晴らしい能力だね!メタは知れば知るほど素晴らしい魔獣だよ!」
アーバインはかなり興奮気味である。
「嗚呼、何故に神は私にもテイムの力をお与えにならなかったのか…コレだけが残念至極である」
「アーバイン…お前の気持ちは分かってるけどよぉ…それ以上何でも出来たらそれこそ問題だぜ…な?」
アーバインとは長い仲のサガが慰める様にアーバインの肩を叩いている。
う〜ん…何故か微妙な感じのデュークである。パトリックなどは口を開けたまま成り行きを見ているだけだ。
「デュークは『白猫』から冒険者にはならないの??」
突然にメリッサがこう切り出した。
「は、はい、ボクは『白猫』になる為に田舎から出て来たんです。この仕事に誇りを持ってやってますから冒険者になるつもりは無いです」
「そうなの…残念だわ。冒険者になるならパーティーメンバーにと思ったのだけどね」
「スミマセン…あ、でも仕事なら喜んで請け負いますよ」
「あっ、そうか!『白猫』に仕事で依頼すればいいのね!」
「ただ、ボクはローナイト支部所属なので、其方に依頼という事になりますけど」
「出張でも平気かしら?迷宮が専門だから…」
「め、迷宮ですか?凄いなあ…」
「メリッサは家族の中でもアーバインの血を一番受け継いでるからな。オレの弟子でも有るから、そこら辺のS級なんぞ相手にならん」
「なるほど…ボクは迷宮でもダンジョンでも依頼があれば請け負います。でも、メリッサさんほどの実力者の居るパーティーには専属の『白猫』が居るんじゃないですか?」
「う〜ん…頼んでも皆逃げちゃうのよね…」
「それに関しては私から…」
とパトリックが口を開いた。
「本部でも色々と手は打っているのですがね…メリッサさんのパーティーはウチでも注目度が高いですからね。しかしながらウチのフリーのメンバーでメリッサさんのパーティーのスピードについて行ける者が中々居ないのですよ」
「あ~そうかあ…確かにウチのメンバーはスピード重視だからねぇ…」
「そんなに速いんですか?」
「まあ、デュークなら大丈夫じゃねえか?ローナイトの『黄昏』の連中と組んでたんだからな」
「えっ、デュークって、あのグレードマンさんと知り合いなの??」
「グレードマンさんとは【ディスティニー】の調査で御一緒させて頂いたので…」
「それにウチのバカとも組んだ事あるしな!!」
「バカって…ま、まさかロキ様の事??」
「ほうほう。あのロキとも組んだ事があるのかい?」
メタを散々弄っていたアーバインがロキの名に反応した。
「ロキ様には色々とお世話になっております」
「あのバカはデュークをエサに仕事をサボる気満々なのさ。全くどうしょうもないアホだ」
「それだけ名の有る連中と組めるのだからメリッサのパーティーでも大丈夫じゃないか?」
「そうね!ウチの仕事にも来て欲しいな~」
「はい!あ…でも今は謹慎中なので…」
「謹慎中??何かヘマしたの??」
「ちょっと深手を負ってしまったのですよ。ウチの規則を破ってしまって…まあ、休養と私が会いたかったので、それも兼ねての謹慎扱いですから」
とパトリックは説明した。そうだったのか。
「話は聞いてるぜ。『黄昏』のメンバーを庇ってくれたんだってな…ゼノは感謝してたよ」
「魔獣に関しての無知と自分の防御力への過信の結果です…」
「デューク、そういう経験は一流になる為には必要なのさ。経験の積み重ねでしか成長は出来ないのだからね。まあ、なるべく無茶はしない方が良いがな」
「…いやいや、それお祖父ちゃんが言う??」
「全くだ。火の玉小僧みたいに危険に突っ込んで行くのがよぉ。何度死にかけたか分からねえぜ」
「叔父様もお祖父ちゃんと変わらないから!」
「はあ?オレもかよ??」
「何言ってるのよ…教皇様が『あの二人にはホントに苦労させられた』って昔話の度に私が言われるのよ!」
「アイツも歳食ったな…」
「そうだねぇ…そんな愚痴を言うようじゃねぇ…」
サガとアーバインはまるで他人事の様に呟いている。
「じゃあ決まりね!謹慎はいつ頃までなの??」
「あと70日くらいですかね」
「もし、メリッサ様が必要なら私が特別措置で何とかしますよ」
「それじゃあチョットだけ来てもらおうかなあ。今度下見に行く所があるから」
『メタもいくの』
「ザグス様に相談してからね」
『ザグスじいもくればいいの』
「…確かに…呼ばなくても付いて来そう」
「ザグスはそんなにメタを可愛がってるのかい?」
「はあ…孫とお祖父ちゃんですね…最近特にそんな感じです」
「私も…」
「お祖父ちゃんは来ないで良いからね!!」
メリッサは食い込み気味にアーバインを制している。
「お祖父ちゃん来るとメンバーが緊張しちゃうから絶対にダメ!!」
メリッサの勢いにアーバインはガッカリと肩を落としていた。サガはアーバインの肩を叩きながら『孫離れしろ』と言っていたのだった。
必着!運び屋稼業! ダンジョンの荷物預かります。 鬼戸アキラ @yamihoppy0305
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