猫よ、お前は何を思う。

 祖父江の家に猫はいないが、祖母の家にはいる。


 決して人間には懐かない。他の猫とも交わらない。ただ、ひとたびちゅーるの袋を片手に持てば、ぴんと尻尾を立ち上げ寄ってくる。


 誇り高き無頼漢なのか、ただの怖がりなのかは分からぬが、そういうやつだ。


 それくらい距離感のある者の方が、旅の共としてはいいのかもしれない。


 SF・ミステリー・ファンタジー。どのジャンルにもある『猫小説』をご紹介する。


『黒猫魔女の猫カフェ奮闘記』 作・すすき 荻経はぎつね(敬称略)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891032193


〇作品概要

魔女狩りの時代。猫は魔女の使いとされ、人間たちから酷い迫害を受けていた。


でも――そんな偏見は、猫の可愛さに魅せられれば一発で覆るはず!


これは、黒猫に変身するしか能のない魔女のシルヴェスが、猫カフェを開き、猫嫌いの王国を変えるまでの奮闘記。


逆境に肉球で立ち向かう、もふもふファンタジー!


〇祖父江のレビュー

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891032193/reviews/1177354054893291027


Title:ねこになり~た~い~。と、歌いながら読みました。


 そういえば、ジジは話さなくなるんだったなぁ、なんて往年の名作を思い浮かべながら読んでいました。


 こちらは、黒猫になれる新米魔女の奮闘記。一人の女の子が猫カフェ開業にあくせくせっせするビルドゥングスロマンです。


 舞台は、魔女狩りもはびこり、猫焼きが横行し、ギャングも半グレの暴行集団もいる、なかなかシリアス世紀末な街。猫は徒党を組み、身を守るべくカラス仮面を用心棒に。メルヘンチックですが、やってることはこちらも結構エグ味マシマシです。


※※


 個人的な面白ポイントと偏見を多分に含んだ人物紹介。話半分でお読みください。


〇シルヴェス―――

 愛称シル。猫になれる変身魔法の使い手だけど、それしか使えない。気合一発の一芸卒業をかました猛者。今は猫カフェのスタートアップのためのファンドとマーケティングとリクルートをアジェンダしてる最中(←ごめんなさい意味分かってません)。猫になると猫語を話せるが、人間のときからちょっと猫っぽい。人たらし。猫をモフり猫になりモフられ頑張っている。


〇ハバ―――

 シルの下宿先のマスター。クラシカルなバーを営むナイスミドル。シルについて、露骨な伏線を張ってくるところもナイス。期待している。


〇アーサー―――

 ハバのところを縄張りにする猫。人間とは適切な距離を保つ。孤高の獣らしい独歩自立の精神を涵養かんようしているが、ひとたび餌を出されれば女子会のさかなになることもいとわない好漢。


〇猫好きネットワーク―――

 シルが学園で作った文字通りのサークル。その全容は未だ把握できず。確認できているイカしたメンバーを紹介する。


・フェル―――

 シルの同窓生でガラス職人。無口で人見知り。芸術家肌。猫をいじめる者には「お前もガラス細工と一緒に炉にいれてやろうか」と豹変するかもしれない(しません)。


・エリス―――

 ハーブ屋。大人っぽい。恐らく姉貴分。そして恐らく割と自由なシルとフェルに振り回される苦労人の気配がする。猫をいじめる輩には「お前もハーブ畑の肥料に」と(言いません)。


(中略)


 可愛く、ダークに、シリアスになり切らずストーリーをしっかりと展開させていく良作です。続きを楽しみにしています。


※完結追記


 動物写真家の岩合光昭さんは、猫を「平和な動物」と称しました。


 のん気、気まま、ねぼすけ、というイメージとはまた別に、彼らなりの野生ってものもあって、人間を含めた、別の動物と戦ってきた歴史があります。


 そこらへんの厳しさも描きつつ、猫よりも猫っぽい魔法使いの少女と猫によって、世界は少しだけ平和になります。


 もふもふ革命は、ここに相成ったわけです。


〇作者について


 猫になれるだけの小さな少女が、大きな事件を解決する、お仕事系ハイファンタジーであった。ままならん人間の情と、世界の暗部が交錯するが、最後は優しく暖かな終幕となっている。


 現在は、気弱でひ弱な王子が主人公の、これもまたハイファンタジーを書かれている。https://kakuyomu.jp/works/1177354054894878329

 こういったものがお好きなのだろう。


 レビューでも書いたように、平和な動物たる猫の生態に基づいて物語が進行する、まごうことなき猫小説だ。


 好きな方もそうでもない方も、一読することをお勧めする。

 



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