純粋を飲み干すように

 紹介したい小説があったのだが、いくら探しても出てこない。

 フォローしていたはずなのに、名前がない。

 レビューを辿ろうとしても、ない。


 同作者の別作品に書いていたレビューが見つかり、ようやく見つかった。

 が、ユーザー名が変わり、いくつかあったはずの小説は一本きり。

 近況ノートも、Twitterアカウントも削除されていた。


 うむ。


 何があったかは存じ上げないが、今はそっとしておこうと思っている。

 あまねく創作者というのは繊細で純粋な生き物なのであろう。

 予定を変え、純粋さに溢れた小説をご紹介する。


『ささなき』 作・房成ふさなりあやめ(敬称略)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891238779


〇作品概要(一部抜粋)

【登場人物紹介】

・倉井 蔦莉(くらい えり) 女

  母から虐待を受けている

・伊藤 蔦(いとう つた) 男

  両親が離婚している 母子家庭

・源 奈々(みなもと なな)

  蔦の家庭教師

・本田さん

  介護福祉士


【あらすじ】

 中高一貫の私立学校に入学した倉井蔦莉(くらい えり)と伊藤 蔦(いとう つた)は、共通点が多いことをきっかけに仲良くなり、話していくうちに二人とも音楽に興味を持っていることが分かった。二人はユニットを組みIvyとして音楽活動をすることになり、次第にIvyは人気になった―――


全文→ https://kakuyomu.jp/works/1177354054891238779


〇祖父江のレビュー


Title:傷だらけのイノセンスとアイデンティティが炸裂しています。


 自分に自信のない少年・つたと、母親に虐待される少女・蔦莉えりの中学ボーイミーツガールな恋愛小説。


 最初の応援コメントに「童話のようだ」と書きました。


 イメージは、イバラで囲まれた美しい庭園で、真っ白な服を着た二人が遊んでいる絵です。


 清廉潔白。純粋無垢。どこまでもイノセント。傷だらけの魂が二人だけの世界を作り、互いを癒していく。


 外の世界とのつながりを、ネットで活動する『歌い手』として確保するのが、平成二桁生まれ世代らしいです。一桁生まれのレビュー主にはないアイデアでした。


 両者が眼鏡とマスクで顔を隠しているのも、外の世界での傷つきを避ける防護服のようなものでしょう。それを外した二人がとても美しい顔をしていたのも、作者の狙いがはっきりしています。


 劇中で歌われているのは『アメージンググレイス』ですが、物語はもう『スメルズライクティーンスピリット』です。よく分からないですね、読まなかったことにしてください。


 どうやらこの物語は、年老いた蔦の回想のようです。そこになぜ蔦莉がいないのか。これから明かされるでしょう。


〇作者について


 真っ白ないばらに囲まれた空中庭園で、二人きり、厳かな茶会に興じている。


 そのような作品を書かれる作者だと思った。


 純白のイノセンスと硝子がらす細工のアイデンティティ。


 レビューにも書いたが、炸裂している。


 現代を舞台にしたドラマなのだが、主人公たちの変わった名前や、眼鏡とマスクで美しいはずの顔を覆っているところなど、ところどころがファンタジックな装いなのも、澄んだ小説だというイメージを起こさせる。


『あやめの日常』と題されたエッセイなど読んでみると、割とはっちゃけておられるが。https://kakuyomu.jp/works/1177354054893373174


 現在は、昨年末まで書かれていた小説の更新を再開している。


 どうやら休校が続いておられるようだが、良い機会である。良い創作活動期間としてほしいものである。


 

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