灰とテロと青春と、ギリギリなラブコメの日々
こうして日記をつらつら書く傍ら、新しい小説を書く準備や、以前書いた小説の加筆修正などもしている。
誤字・脱字以外で、直す箇所がたくさんあるのは、文章力が上がったことを喜べばよいのか、はたまた、たいそう読みづらいものを書いていた、かつての自分を叱ればよいのか。
今回は、やや変わったリライトの仕方をしている作者の方をご紹介する。
『Teenager's High〔take2〕』作・岩井喬(敬称略)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889443713
〇作品概要
ある日、爆弾テロにより両親を奪われた少年・佐山潤一は、葬儀の帰りに美奈川葉月と名乗る少女に出会う。彼女は潤一の恨み、復讐心を認め、自分たちの組織に勧誘する。そこには、政府を含めた大人たちの起こすテロや殺人行為に抵抗するために作戦に臨む少年少女の姿があった。彼らと共に、潤一は両親の復讐を誓うのだが……。
〇祖父江のレビュー
Title:彼らは、この痛みをどう引き受け、どこに向かうのか。
個人的な信条として、それがどんな方法であれ、「自分に襲ってきた痛みを受け止める奴は偉いんだ」というのがあります。
どうも年を取ると、痛みを引き受けることよりも痛みを受け流すほうに力点を置いてしまう。「しょうがないよね」とか「ちっぽけな人間一人、どうしようもできない事ってあるからね」とか、それが悪いとも思いませんが。
この小説の主人公である高校生の潤一は、テロリストに家族を奪われ、葉月という女性からテロリストを狩る組織への勧誘を受けます。
個人的に、このスカウトのセリフが非常に印象的だったので、一部引用して紹介します。
『目には目を歯には歯をだ。君には、こいつら(テロリスト)を殺す権利がある』
『もし復讐しないのならば、君のご家族は君にとって、死んでも復讐してもらえないという、『その程度の存在だった』ということだ』
(第四話より一部引用)
これを言ったのがいい年した大人なら「物を知らない高校生の子供を焚き付けて傭兵まがいのテロでもさせる気か」と、ペテン師の疑いをかけるところですが、葉月もまた、潤一と同じような痛みを抱える十代の少女だと知ると、印象が変わります。
復讐だって、傍から見れば非合法な殺しでしかないわけで、「結果として、憎いテロリストと同じ土俵に上がってどうするよ」と批判するのは簡単。でも、彼らは、そうすることで痛みを引き受けようとしている。簡単に切って捨てたくないと思います。
若さゆえの“痛み”と“イタさ”を、容赦なく描ける作品だと思いました。
とはいえ、やっぱり少年少女たちが集まっているせいか、潤一、葉月、そして仲間の一人である狙撃手和也との三角関係が出来上がってしまいます。
「ラブコメなんぞやっとる場合か」「いや、このまま復讐なんてやめて、適当にお茶濁して青春ラブコメモノにシフトするのもありか」いずれにせよ、彼らが辿る道の果てを見てみたくなります。
と、思ったら、実は四角関係になりつつあることが分かってきました(???「これが若さか」)。目が離せない、テロと青春の日々。
※完結追記
潤一に秘められた過去と確執と、別離と決戦、短い中にギュッと詰め込んで、まだまだテロと青春の日々は続いていくのだな、彼らの物語の続きを、できればハッピーエンドを読んでみたいなと思いました。
※※
作品名に『Take2』とある。岩井氏は、このように、一旦完結させた作品を、新しく1から書き直すスタイルを取られている。
当然、『Take3』もあり、結末が少し変わっている。面白い試みだ。
祖父江もそれにならうではないが、同好の士より薦められて登録した他サイトに、カクヨムにて完結させた小説を、改稿しつつ投稿している最中だ。
はっきり言って、めっぽうめんどくさい。
だが、まっさらなページに新作を書くのと同じような、新鮮な気分にはなる。
一つの方法論として、知っておいて損はないだろう。
〇作者について
岩井氏の作品は、今のところ二本読んだ。
いずれも、海外映画に参照点の見える、軽ハードボイルドチックなアクション要素がちりばめられ、主人公は、過酷な過去を背負った十代の少年だ。
存在そのものがエネルギッシュなティーンエイジャーの若さと苦悩を描くことを得意としている様子。
そして、物語は個人的なものにとどまらず、世界を巻き込む強大なうねりを伴い、クライマックスへと雪崩れ込む。この小さくまとまらないところは、好ましい。
現在は、VRゲームを題材としつつ、やはり楽しくわちゃわちゃしているだけじゃ面白くないらしく、ゲーマー兄妹が陰謀に巻き込まれていくらしい。
危うくも爽快な物語となることを期待している。
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