女難の祓い屋男子が主人公の鬼狩りシリーズ

 この紹介日記は、作品より作者によりフォーカスしたものにしていきたいと思っている。


 なので、今回は同一シリーズを何本も続けていらっしゃる方に登場いただこう。


おにばらいシリーズ』作・鷹野友紀(敬称略)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888988915


〇作品概要


 古くからこの国には鬼祓い師と呼ばれる者たちがいる。

 その鬼祓い師としてはじめての仕事を受け持った青年、藤倉一弥の話である。

 物語は親父に来た依頼を託された一弥は鬼祓い師として依頼を受ける。

 夜、石のようになる娘と、夜な夜な現れる男の幽霊。

 振り下ろされる太刀。斬撃の嵐。

 そしてなぜ、男の幽霊は現れたのか。

 果たして、一弥は一人前の鬼祓いになれるのか……。

 オリジナル作品となります。



〇祖父江のレビュー


1.『鬼祓い』無印


☆忌憚のない剣戟妖術奇譚


 鬼や異界や妖がそれなりに認知されている。いつの時代か―――とりあえずバスや電車は走っているらしい日本。高名な祓い屋の息子、一弥いちやが一夜の鬼退治に挑む短編。いや、これからも続いていくのかもしれませんが、とりあえず今作を読んだ感想です。


 バトルや、妖怪もの特有の哀しさなど、押さえるべき点が押さえられたスラスラと読める作品でした。


 ここからだろ、と思う描写も多々ありましたので、続きを読んでみたいです。


2.『久遠のうつわ 鬼祓い師 雨宮玲奈』


☆今度は正統派な伝奇モノだ。


 駆け出し鬼祓い師の藤倉一弥の物語だった前作『鬼祓い』の続編で、彼の許嫁である玲奈が実質的な主人公。前作よりもどろりとした質感の正統派伝奇モノといった風情で、オチに向かうまでの妖の悲哀は、より増している印象でした。


 あと、どうやら作者の鷹野さんが、「一弥は女に振り回されれば振り回されるほど味が出るキャラだ」ということに気付いてしまったのか、玲奈にかなり痛い目に遭いながら苦労させられているのが面白かったです。


 さらなる続編では、どうやら彼の妹が主人公だそうで。一弥がどう転げ回ってくれるのかも期待するところです。


3.『鬼祓い外伝 藤倉彩加の純情』


☆豪運ガールミーツ意識高すぎボーイ


 これまで二作をレビューしてきた『鬼祓い』シリーズ。番外編とはいえ、ボリュームとしてはもっとも長い作品になっています。今までどおり、直球の怪奇譚にキャラクターが活き活きと動いていました。


 今回はタイトルにある通り、シリーズの主人公一弥の妹彩加が主人公のラブコメ……ラブ……うん、ちょっと殺伐としてますが、ラブコメディです(断言)。


 兄を色んな意味で慕う少女が変な石を拾ったところ、運気が爆裂に上がり、調子に乗って暴走。最終的にとっちめられるお話です。


 ラブコメです(大声)!


 なかなかのヤンデレっぷりを見せつけてくれる下りは面白いし、前回から(最初から)碌な目に合わん一弥くんが、また碌な目に合いません。女難だ。祓ってもらえと思いました。こいつも祓い屋なのに。


 そんな女難キャラな一弥ですが、今作の最後に、とんでもなく壮大な夢というか、願望を持っていることが明らかになります。


 この兄妹、別々のベクトルでヤバいんじゃないか。むしろお似合いなんじゃないか。


 そんなことを思いながら、最後は爽快な読後感でした。


※※


 以上、拙レビューを三連発でお読みいただいた。


 鷹野氏の書き方が乗ってくるのと比例して、読者たる祖父江の読み方も乗ってきているような気がする。ノリノリのシリーズは、現在、四作目の過去編が連載中である。 (鬼祓い師 名取基経 https://kakuyomu.jp/works/1177354054890349937 )


 ジャンルとしては、和風剣戟ダークファンタジーといったところなのだが、レビューにも書いた通り、主人公及び狂言回しを担当する駆け出し鬼狩り少年の一弥が、けっこうな不幸体質であり、ドタバタと微笑ましいシーンが多くある。


 ちゃんと決めるときは決めてくれるので、安心感もある。


 さらに、シリーズを追うごとに、大変な女難の相が浮き出てくるようになり、今ではすっかり顔の皺に馴染んでいるとみえる。お疲れ様だ。いや、お憑かれさまか。


 まぁ、従姉妹の姉さんや職場の上司はおろか、実妹さえガチ恋勢にしてしまうあたり、彼の方もなかなか情のこわい男なのであろう。


 作者ご本人も、シリアスに振れ過ぎないようにラブコメ要素を入れて中和しようとしたら、思わぬ形で化学変化が起きてしまったというところではないか。ストーリーがよく転がるようになったと思う。


 これからも、長くこの物語を愛し続けていってもらいたい。

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