焦げ臭さが胸を昂らせる夏の名残り

 読まねば読まれない。


 などということは無いが、同好の士らがどのような作品を書かれているのだろうかと思って、読む旅を始めた。


 今はまだ遠い夏の物語。


『サマー・チューンナップ』作・杉浦 遊季(敬称略)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883286700


〇作品概要


全長15センチメートルの小型ロボット「チューンナップロボット」は、子供たちの間で大流行している次世代の玩具である。そんな流行の影響を受けた男子小学生の大悟は、初めて自力で組み立てた新型チューンナップロボットを我が子のように愛でていた。そんな「大悟の息子」はロボットバトルでは負けなしだった。

しかし大悟はある日、お盆で大悟の地元に来ていた都会の女の子の莉亜に完敗してしまう。非常に悔しい思いをした大悟は、翌日莉亜にリベンジマッチを仕掛けるのであった。


男の子と女の子による、ひと夏のロボットバトルアクション!


〇祖父江が投稿したレビュー


『今もカスタムロボのアニメ化を待っている者として、読まねばならない』


 ひとこと紹介に書いたのは、もちろん冗談ですが、童心に返るどころか、今になっても精神が小学五年生くらいから成長していない自分にはとても楽しい小説でした。


 この国で創作物に触れてきた人間同士、共有できる景色があるとすれば、その一つにホビー漫画・アニメがあると思います。そんなキラキラした思い出の景色を読ませてくれた作者の方に感謝します。


 30分ほどで読める短編としてまとまっていますが、是非続きが読みたいところです。


※※


 約三年前か。どこで出会ったのかは、もうよく覚えていないが、今も作者のフォローはしており、現在は路上ライブをテーマにした現代ドラマを執筆されている。まだ読み始めたばかりだが、下手の横好きでライブ活動などやっている祖父江にとっては好物な内容であったので、また当日記にて紹介するやも知れない。


 ここからは、『サマー・チューンナップ』の感想。


 青春、ドラマに重きを置いた作風に、ホビーコミック的なSFの要素をトッピングしたノスタルジックな作品だ。


 小学館の児童向け文庫あたりから出版されていてもいい、ツボを押さえた、楽しい物語であった。


 まだ手探り感にまみれた拙レビュー文に書いた通り、某ロボットゲームから着想を得たのだろう。男女の別なく誰もが強くなれる環境で、自分より遥かに強い女の子に鼻っ柱を折られる男の子という描写は、微笑ましい。


 いっそ、ここから小中高大学編まである青春SFラブコメ大河小説へと移行していただいても良かったが、潔く、短編としてまとめられている。


 いちいち話を長くしがちな祖父江には羨ましいばかりだ。ならそうすればよかろうに、この間完結させた小説も、何とか15万字以内に収まってくれるという有り様であった。


 個人的なお気に入りポイントは、最後の一文。


 余韻の残し方が上手い作家であると思った。


 で、『カスタムロボ』のアニメ化はまだかかりそうかな(いい加減諦めろ)。



2020.4/7 記

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