3 Desperado

The Eagles アルバム「ならず者」Desperadoから


Desperado

ならず者


 この曲はアルバム「Desperado」の中の5番目の曲である。

 「Desperado」はDoolin-Dalton団というアメリカの西部開拓時代末期の実在の銀行強盗の一味のことと推測できる。この強盗団は Bill DaltonとBill Doolinという2人のアウトローが首領。Coffeevill(コーヒービル)という街でのシェリフとの銃撃戦が有名。一時、ユナイテッドスタジオ(大阪)のアトラクションでその決闘場面をやっていたと記憶する。


 「Desperado」は全曲がこの強盗団のメンバーのことを歌っていると思われる。ちなみにアルバムの表紙は、Eaglesの面々が、拳銃のホルダーを付けたまま横たわっている死体に扮して写っている。


 よって、全曲を聴くとこの曲の位置づけが理解できる。想定は牧場の牛が逃げないようにフェンスを見回る仕事をしている荒くれ者(デスパラード)。Bill Daltonは法律関係者だったようなので(アルバムの最初の一曲で法律の本を置け、という歌詞がある)、強盗団に入る前のBill Doolinか、あるいは他の男ではないか。

 ポーカーの勝負の光景と心情をうまく組み合わせて作詞しているが、韻を踏むためか、故意に抽象的な詩文を含んでいるので分かりづらくなっている。これだけの内容を一定の韻を踏んで盛り込むのはやはり難しかったらしく、諦めてしまった節や苦労したことが分かる節がある。例えば、


You're loosin' all your highs and lows+

Ain't it funny how the feeling goes .. away?


で、lows と goes は韻を踏んでいるが、意味を完全にするためにメロディのしばらく跡に away を置いて、内容と韻を成功させているという具合だ。



 この曲は、ポーカーのゲーム(西部劇に出てくる酒場を想像する)と行き場のない荒くれ者達の人生をオーバーラップさせた展開で歌われる。ハイ、ローはポーカーの遊び方。フルハウスなどの特殊な並び方を競うのはハイ、低い数字のカードだけ集めるのがロー。配り始める前に宣言してそれぞれのグループで競う。

 染谷先生の指摘でそうか!と思ったのは、ダイヤのクイーンに主人公は拘り、いつも欲しがっているが、手に入らない。歌い手は彼が本当に必要なのはハートのクイーンだと歌う。ハートは平和で愛情深い人生を象徴するならば、この男は「ダイヤ」:一攫千金で荒れた心を満たす人生を欲するということだ。


 「テーブルの上には良い手が来ているが君は最高の手(つまり彼にとってのダイヤのクイーン)を欲しがっている」、「冬には足が凍えるだろう」と、この男が孤独で現状に満足していない状況を表現している。それでも最後に希望を持てよという節で終わるので、この歌がシングルでも愛好される結果になったようだ。実際の強盗団は全員射殺された。


 Eaglesの特徴である、①同じメロディの節でも歌い方が全く違う、②一節の始まりに早い語句が入ったり入らなかったり、と、覚えるのに苦労する曲でもある。音楽を志すが歌い方、作曲など習ったことがない自然発生的なロックのバンドで、作詩能力的にも音楽表現的にもここまで到達したバンドは数少ない。


 Your prison is walking through や You been out ridin' fences は開拓時代に使われた言い回しらしい。


 メロディと詩の構成は山場が3つあると思う。1つ目は静かな導入部の次でポーカーでダイヤとハートの女王を歌う部分。最初に唐突な高音部から入る。

 2つ目は導入部と同じメロディーに戻るが、「君はもう若くないんだぞ」とならず者の後戻りが出来ない後悔を誘い、3つ目はまた1つ目の絶叫のメロディーになり「冬には足が凍えないか?」と激しく孤独を歌う。


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原詩(上)と意訳(下)


Desperado, why don't you come to your senses?+

 ならずものの君よ。どうしてまともになれない?

You been out ridin' fences for so long now

 君は牧場のフェンスの見回りの仕事(牧童)をずっとやっているね

Oh, you're a hard one

 ああ、君は難しいやつだ。

I know that you got your reasons

 それに理由があることを僕は知っている。

These things that are pleasin' you

 君を喜ばせるようなものは

Can hurt you somehow

 逆に君を傷つけるということを


Don't you draw the queen of diamonds, boy

 ダイヤのクイーンを引きたいのかい?やれやれ

She'll beat you if she's able

 そいつは君のためにならない

You know the queen of heats is always your best bet+

 知ってるだろう?君にとってはハートのクイーンが一番いい手だと

Now it seems to me, some fine things

 あれ?僕には良い手が

Have been laid upon your table+

 テーブルに配られているように見えるが

But you only want the ones you can't get

 君は絶対手に入らないような手をやりたいんだ


Desperado, oh, you ain't gettin' no youger

 ならず者の君よ、ああ、君はもう若くないんだぞ

Your pain and your hunger, they're drivin' you home

 君の痛みと渇きが故郷に帰れと促すが

And freedom, oh freedom well, that's just some people talkin'+

 自由!ああ、自由が良いって?さあ、それは誰かが言ったたわ言さ

Your prison is walking through this world all alone

 君にとってはこの世界は牢獄と同じなんだ


Don't your feet get cold in the winter-time?

 冬には足が凍えないか?

The sky won't snow and the sun won't shine

 空は曇っていて雪も降らないし日も射さない

It's hard to tell the night-time from the day

 生きていても君には夜と昼間の区別も出来ない


You're loosin' all your highs and lows+

 君はこれからも人生のハイ・ローゲームに負け通しだろう

Ain't it funny how the feeling goes .. away?

 妙な気持ちだろう?全ての感覚がなくなっていくってのは


Desperado, why don't you come to your senses?+

 ならず者よ。正気になれよ

Come down from your fences, open the gate

 牧場のフェンスから降りてきてゲートを開けたらどうだ?

 It may be rainin', but there's a rainbow above you

雨が降るかも知れないが、でも虹がその後出るだろう

 You better let somebody love you, (let somebody love you)

 誰かを好きになれよ

You better let somebody love you, before it's too late

 誰かを好きになれよ。手遅れにならない前に。




注)英語の歌詞の部分部分に付けた+は、その後の歌の出だしが拍子の直前に始まるという私のカラオケ用の印。

例:Now it seems to me, some fine things は

 Now it | Seems to me, some fine things

のように Now it を4拍子のスタートの前にすばやく歌う。4拍子の頭は Seem to のSeem のSがかなり強く発音される。英語の歌は拍子の始まりの子音を強く発音すると英語の歌らしく日本人でも歌える。



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Eagles Desperado 解説と訳詞 泊瀬光延(はつせ こうえん) @hatsusekouen

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