第2話 酒場にて

ロジスタリカ王国の一角、庶民街。

そのなかで一二を争う大きさの酒場がある。

そこで、年季の入った冒険者2人が酒と、言葉を交わしていた。



「……おい聞いたか、例の噂のやつ、まただってよ」

「そりゃホントか!?

…で、今回の「警告」は誰に行ったんだ?」

「結構近いぞ。1つ隣の通りの端っこに住んでるギンドって奴だ。なんでも裏で亜人の奴隷を売買してたらしい」

「てことはナイフは1本だったのか?」

「いや、捌いた人数分らしい。20は超えてたって話だ」

「今の国王が奴隷制度を廃止してから奴隷に働かせてた工場なんかは給料で金がでるわでるわで、潰れたって話があるくらいだから―――」


へいおまち!と料理を運んできた給仕に、会話を中断する。

物騒な内容なら尚更だ。


「……こっそりやればいいってことかい?

絶対ギンド以外にもデカい捌き手がいるだろ」

「あぁいるだろうな。

そいつらには何本のナイフがお見舞いされるだろうな。あぁ恐ろしや」

「魔の手ならぬ「影」の刃ってやつだな。

…ギンドの奴は今何してるんだ?」

「傭兵ギルドで腕の立つ奴を漁ってる。さっき俺のダチも声掛けられてた。断ってたけどな」

「そうだろうな。

すぐ隣に立って見張っててもすぐ目を話すと依頼人にはナイフが刺さってるって話聞いて、受けるやつが居るかってんだ。

傭兵生命に傷が付きかねん。」

「前々回の件だったか?

あの傭兵凄腕だったらしいけど、それ以来要人警護の依頼を全ての断ってるらしいぜ。

「影」相手じゃ仕方ないってみんな励ましてたけどずっと沈みこんでたもんな。」


酒場の客の入りが激しくなってきた。夕飯時なのもあり、気持ちペースを早めて料理に手をつける。


「…でもそんなやつが叶わないなんて「影」って一体何者なんだ?

てか国はこのことは知ってるのか?」

「ギンドの件は除いても4件目だぞ。さすがに知ってるだろう。けどどうこうするにも手掛かりが無さすぎるってとこじゃないか?」

「案外国が手を回してる暗殺者とかなんじゃないか?」

「あの正義感の強い王様が暗殺を命令する、ってのもなぁ…」

「ホント何もんかは知らんが、悪い気は起こさないに越したことはなさそうだな。

バレないって思っててもどこからか聞きつけて、朝にはナイフの添い寝ってだけは嫌だからな」


全くだ、と話していた2人は食べ終えると代金をテーブルに置き、酒場をあとにした__

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

非情の代行者 岩川 怜 @sinseiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る