第七話/五稜郭
●五稜郭
明治二年五月十日、夕刻。
蝦夷共和国、箱館五稜郭。
俺は榎本武揚総裁に頼まれて、「連日の激戦でさすがの私も疲れたな。少し休む」と自室に籠もって眠っている土方さんを呼びに向かっていた。
もう、一年も昔の話になるのか。流山で投降した近藤さんは、土方さんが決死の覚悟で江戸に再潜入して勝海舟に助命を嘆願したにもかかわらず、板橋で斬首されてしまった。武士としての切腹さえ許されずに。
近代戦の指揮官として急激に成長した土方さんは、新選組と旧幕軍兵を率いて、宇都宮、会津、そしてこの蝦夷地・箱館五稜郭へと北進しながら薩長軍との戦いを続けてきた。
だが、すでに盟友・榎本武揚率いる旧幕府海軍の艦隊は度重なる不運や操舵術の未熟さのために壊滅。蝦夷共和国建国に協力してくれていたフランス軍の士官たちも、箱館を去った。海軍力と外交力によって蝦夷地に独立国を築き、薩長と対抗する勢力を成すという榎本総裁の構想はもろくも崩れ去ったのだ。
海軍を失った蝦夷共和国にはもう、わずかな陸軍戦力しか残されていない。明日、薩長軍は箱館を総攻撃する。今や薩長の「官軍」を震撼させる不敗の常勝将軍となった土方歳三をもってしても、この兵力差は覆せない。もうすぐ、幕末以来続いてきた日本の内戦は完全に終結する。五稜郭のあちこちでそう囁かれていた。
この世界の歴史が俺の知っている通りに進むのならば、土方さんはまもなく、箱館戦で戦死することになる。おそらく明日。それだけは、俺が回避させたい。そのために俺は、この世界に転生してきたのだ。だが、どうすればいいのだろうか。薩長は、中央から続々と援軍を派遣し続けてくる。こちらにはもう兵も船も金もない。戦局を覆すのは不可能だ。
(土方さんを五稜郭から脱出させるしかない。しかし、たとえ俺が切腹しても、近藤さんの仇を討つまでは死してなお止まずと誓っている土方さんを説得できるとは思えない)
俺は迫り来る「時間切れ」に震えながら、土方さんの部屋のドアをノックしていた。
土方さんは鳥羽伏見で敗北して「もう刀の時代は終わった」と呟いて以来、徹底的な西洋風を採った。髪型も。衣服も。武具も。懐中時計や食事やワインに至るまで、自分を西洋文明人化してしまった。ヨーロッパ文明に憧れているのではなく、「勝つために」である。ただ薩長との戦いに勝つために、自分自身の生活様式も価値観もすべて転換してしまった。故にこそ、野戦要地に塹壕陣地を築いて三十余時間にも及ぶ銃撃戦を継続指揮し、薩長軍を撃破し続ける希有な指揮能力を誇る常勝将軍となった。
躊躇なくあの美しい黒髪をざっくりと切り落としてザンギリ頭にしてしまった土方さんの姿を見た俺が「な、な、なんてことを?」と思わず悲鳴をあげた時も、
「なにごとも形からだ、周平。なるほど、短髪のほうが戦いやすい」
と、土方さんはこともなげに笑っていた。
なので、部屋に入る際はドアをノックしなければ、こっぴどく叱られる。
「……返事がない。土方さん? 眠ってるんですか? いいですね、入りますよ? 乙女の寝室に入り込むとはなにごとか、と抜刀して斬らないでくださいね?」
……
……
……
京では、決してこんな危険な真似は侵さなかった。土方さんの部屋への侵入。
近藤さんと別れてからの一年。いつ折れてしまうかもわからない土方さんの隣には常に、俺が侍っていた。土方さんはなかなか自分の感情を素直に言葉で伝えてくれない人だが、実の弟のようにかわいがられていた……と思う。
「……土方さん? 榎本さんたちはこれから武蔵野楼で宴会を開くそうですよ? 参加されますか? 最後の夜になるだろうから連れてこいと言われているのですが?」
ベッドの上には、土方さんはいなかった。
いったいどうこうつもりなのだろう。床に頬をついて、猫のように身体を伸ばして寝そべっていた。子供のように瞳を煌めかせて、虚空を見つめながら微笑んでいる。
どうしたんだ? まるで沖田さんじゃないか。こんな土方さんははじめて見た。
「……ん……総司……なんだ、周平か」
「な、なにをやってるんです土方さん? はしたないですよ」
「ふふっ。うつらうつらしていたら、部屋に試衛館のみんなが不意に現れてな。かっちゃんに、山南さん、総司、源さんもいたんだ……そうだ、平助も。まるで、江戸のおんぼろ道場でたくあんをかじっていた頃のようだった。斎藤、永倉、原田の姿は見えなかったな。もしかすると、みんなは亡霊だったのだろうか? 私を迎えにきてくれたのかな?」
ひ、土方さん。いったいなにを言いだして……?
「しっかりしてください。疲れているんですよ。土方さんは幽霊とか祟りとかそういうものをいっさい信用しない合理主義者でしょう? だいいち、近藤さんたちは土方さんに生きていてほしいんです。迎えになんて来ないですよ!」
この人の魂はもう、半ばこの現世から離れつつあるのだ、とわかった。土方さんが、逝ってしまう。俺は必死の思いで、土方さんの肩を掴んで揺すっていた。
「……そうか。ただの幻か……私の心が映し出していただけの……もう、試衛館の仲間は誰もいないのだな……合理主義などつまらぬものだな、周平」
「すみません。試衛館以来ではありませんが、まだ俺がいます。頼りない隊士ですが、最後まで土方さんにお供しますから。さあ、駄々をこねずに宴会に行きましょう」
「嫌だ。武蔵野楼で榎本さんたちと飲んでも仕方ない。興味がないな。今の私が欲しいものはたくあんと白米だ」
「そうやってまたすぐにお偉いさんたちから孤立する。野良猫じゃないんですから。陸軍奉行の大鳥圭介さんや彰義隊の池田元之助さんともケンカしてばかりで。そういうところですよ」
「……ああ、池田は仕方がない。そういえば周平。斎藤は。斎藤はほんとうに生きているのかな?」
「斎藤さん?」
※
近藤さんが板橋で斬首され、京の三条川原にその首を晒されてすぐ、沖田さんもまた千駄ヶ谷の植木屋の納屋で独りきりで息を引き取ったという。その頃の江戸はすでに薩長新政府の手に落ち、もはや沖田さんのもとへ潜入することは不可能になっていて、俺はとうとう沖田さんとの再会の約束を果たせなかった。沖田さんが、近藤さんの死を知らずに逝けたことが、せめてもの――。
会津に先行して入っていた斎藤さんと、宇都宮攻城戦で負傷して会津に合流した土方さんは、会津中将・松平容保公とともに近藤さんの墓を会津の天寧寺に建てた。
その近藤さんの墓参りの最中。斎藤さんの前で、土方さんは誓ったのだ。
私は絶対に薩長に降伏しない。最後まで新選組副長として戦って、そして死ぬ、自らが信じた士道を貫く、と。
「会津の戦況は厳しい。私は仙台へ北進して、会津に援兵を出すように仙台藩を説く。もしも仙台藩が動かなかったら、北上してきている榎本武揚率いる旧幕府海軍と合流し、蝦夷地へと向かい蝦夷に独立国を建ててあくまでも薩長と戦い続ける。私に残された命を、最後まで使い切る。近藤さんの鎮魂のために」
自分だけが近藤さんと沖田さんを置いて生きてはいけない、命尽きるまで戦う、と土方さんは思い定めたのだ。
だが、あの決して自己主張せずいつも無言で土方さんの命令に従ってきた斎藤さんが、はじめて土方さんに反対した。斎藤さんもまた、近藤さんの斬首、そして親友でありよきライバルだった沖田さんの病死に衝撃を受け、沈んでいた。だが、この時の斎藤さんは別人のように激しかった。
「……新選組の主君は会津藩。近藤さんが目指した誠の武士は、主を決して違えたりしないと思う。だから、自分は最後まで会津の松平容保さまのもとで戦いたい」
土方さんはすでに、あの「鬼の副長」ではなくなっていた。素顔の土方さんのままで、斎藤さんや俺に接するようになっていた。
だから、「法度違反で切腹だぞ」という懐かしいあの言葉を発することはなく、「斎藤。お前の言うことが正しい。私に、死にに行くなと言いたいのだろう?」と困ったように微笑んでいた。
「もう局中法度は無効だ。わかった。ともに、己が信じる『誠』のために戦おう。お前は会津で、私は仙台で。きっと仙台藩は薩長に靡くだろう。私は軍艦に乗って蝦夷地へ行くことになると思う。これが今生の別れになるな」
二人の別離の時が来た。来てしまった。斎藤さんは不意にいつもよりも声を落として、土方さんに向けてなにごとかを囁いていた。
(……止めても無駄だとはわかっていた。でも、すべては自分のせいだから……自分みたいな人斬りが、試衛館の門を叩いたから……)
この時の斎藤さんの言葉を、俺にはよく聞き取れなかった。そして土方さんの返事もまた、小声だった。
(お前のせいじゃない、斎藤。たとえ試衛館にお前が来なくても、世の仕組みそのものが腐っていたのだから、私たちの運命は同じだった。それにかっちゃんと私の夢は、誰から与えられたものでもない。たまたまきっかけがお前だっただけだ)
二人は、なにを語り合ったのだろうか? だがもう、今さら俺が蒸し返すような話ではない。二人の間で、その「なにか」についての感情の精算は終わったのだから。
「……副長……ごめんなさい」
「生きろよ、斎藤。お前は、人斬りなんかじゃない。新選組が誇る誠の武士であり、誰にも敗れることのない無敵の剣士だ。今は長州の連中が会津への復讐に猛っているが、会津武士の意地を見せて戦い抜け。徹底的に戦い抜けば、長州が会津に抱く復讐の念も薄れ、いずれ会津中将さまは必ず助命される。長州や土佐の志士たちの恨みの半ばは、もう、近藤さんが背負っていってくれたのだから――」
「……あ……できれば、周平を置いていってほしい……のだけれど……土方さんに着いて行ったら、たぶん死ぬし」
「それは私も何度も何度もこいつに言っている! どうしても私のもとを離れないのだ、周平のほうが! ええい、こいつは私の飼い犬か!」
「ええ。俺は源さんや近藤さんから土方さんの介護役を託されましたから。どこまでも着いて行きますよ」
「介護役とはなんだ、介護役とは!」
「なにを今さら。宇都宮戦で土方さんが足を怪我した時、俺がずっと介護していたじゃないですか」
「……ふん。な、馴れ馴れしい……お前、私の旦那にでもなったつもりか?」
「そ、そ、そんな大それたことなんて!? お、お、俺はあくまで、土方さんの忠犬ですよ? 俺如きが土方副長の旦那だなんて、そんな。滅相もないです!」
「どうだか。お前、私を見る目つきが以前と違うぞ。その……なんというか……い、色恋禁止の法度に背いていそうな……いや。な、なんでもない!」
斎藤さんが「……ほほう……なるほど」と意味ありげに笑った。滅多に笑顔を見せない無愛想な人だったが、微笑むと、どこか沖田さんに似ていたのだと気づいた。
「とにかく俺は絶対に脱隊しません、断ります」
また、激しい目眩が俺を襲った。ふらりとよろめき、土方さんに抱き留められていた。
「し、周平。お前、どこか具合が悪いのではないか? 最近、ふらつくことが多いぞ。良順先生に診察してもらおうか?」
「……恋の病はお医者さまにも治せないと言うよ、副長。なるほど。周平と土方さんが……意外な組み合わせ……総司にも、見せたかった……」
これが、斎藤さんとの最後の会話となった。
会津藩は果敢に戦い続けたが、頼みの仙台藩が薩長に恭順したために孤立無援となり、ついに降伏。土方さんの予測通り、会津中将・松平容保公は助命された。近藤さんの死は無駄ではなかったのだ。
最後まで会津武士として戦い抜いた斎藤さんの動向はわからなくなった。
だが、会津から箱館へ合流した兵士たちの噂では、地獄のような戦場の中、彼女は奇跡的に生き残ったともいう。
※
「……斎藤さんは無敵の剣士ですよ、土方さん。噂通りに必ず生きています。あの人を殺せる相手がいるとすれば、沖田さんか土方さんくらいではないでしょうか。だから、だいじょうぶです」
「ふふ。かっちゃんでは斎藤は斬れないか」
「情がかって、勝ちを譲ってしまうでしょうね、近藤さんは。近藤さんを除けば、剣で斎藤さんと互角に戦える相手は沖田さんと永倉さんくらいですが、永倉さんは前のめりでがむしゃらな人ですから、変則の剣を使う斎藤さんと斬り合っているうちに自分でも気づかずに傷を負って、いずれ出血多量で倒れます。沖田さんは、一撃で決着をつけられれば勝ちますが、互いの手の内を知り尽くしている間柄ですから……」
「……一撃で決着をつけられなかったら、戦っている最中に咳き込んで倒れるな……総司は古今に類を見ない天才剣士だったが、あの病さえなければ……いや、そういえば総司は池田屋でも倒れていたな。あの時はのぼせて失神しただけだったが、一撃にすべてを賭ける猛者の剣を振るう総司は長期戦に不向きなのかもな。そうなると、水戸出身の芹沢鴨や伊東派の服部武雄は別枠として、試衛館系の新選組最強剣士は斎藤かな?」
「いえ。土方さんですよ。堂々の剣の実力では斎藤さんに一歩及びませんが、いかなる卑劣な手を用いてでも、土方さんならば必ず斎藤さんを騙し討ちにします。源さん仕込みの暗殺術までをも駆使して」
「私はほんものの鬼かっ! まあ、さっき現れた亡霊の中に斎藤がいなかったということは、どこかで生きているということだろう。永倉や原田も同様だ。しぶとく生きている」
「ですから、土方さんは合理主義者だったはずですよね?」
「……そのつもりだったが、どうやらこの世界のすべてを理で説明し支配することはできないらしい。最近は、そう思うこともある。理と法が人の世のすべてではないと。たとえ局中法度を曲げてでも、士道に背くことになろうとも、山南さんの切腹は止めるべきだった。私が犯した生涯最大の過ちだった」
「ひ、土方さん。山南さんについては、俺たち隊士たち全員の……」
「……ぐすっ……ううっ……山南さん……」
さっきまで笑っていた土方さんが、不意に泣き声を漏らし、涙を流した。もう、感情を抑えるつもりがない。俺に心を開いてくれている。しかし同時に、すでに生の感情を隠す必要がなくなったということもである――。
土方さんが落ち着いて泣き止むまで、濡れる頬をハンカチで拭いてあげた。
いつまでも、この時間が続けばいい。
箱館戦争なんて、夢だったらよかった。
「も、もういいぞ周平……私を子供扱いするな、ばか!」
「あっ。す、すいません!」
やはり感情の起伏が激しくなっている。でも、そんな無防備な土方さんも、俺は……。
「……理がすべてならば、周平。お前を蝦夷地の果てにまで連れてこずとも済んだ。かっちゃんを救うこととだってできた。この世界にはどうも、理不尽ななにかがあるようだ」
土方さん。それはほんとうです。俺は、未来から、しかも別の世界から来たんです。
でも、合理主義者の土方さんにどう信じてもらえばいいかわからないまま、ここまで来てしまいました。そもそも未来から来たとはいえ、幕末に詳しくない俺には手の打ちようもありませんでした……新選組で剣と銃の腕は磨きましたが、それだけでは一隊士でしかなかったんです。俺は、力不足でした。
とにかく、今夜だ。土方さんの運命を俺が変えられるとすれば、今夜しかない。
俺がいちど死んでまでこの世界に来た意味を、今夜、問われるのだ。
生きたい。土方さんに、そう願ってもらえるか否かだ。
この一年、戦場で闘死することを望むかのように生き急いできた土方さんに。
でももう、難しいかもしれない。戦場以外では、土方さんは「鬼の副長」の顔を近頃は見せない。今日に至っては、童女のように無防備な笑顔を俺に向けてくれる。山南さんの死を悔いて俺の前で涙を見せたのも、今日がはじめてだ。嬉しいけれど、胸が痛い。土方さんは、すべての重荷を下ろそうとしているのだ。ここまで戦い通したのだから、もう地下の近藤さんも「こっちへおいで」と自分を迎えてくれるだろう、そう思っているのだ。だから、こんなに無邪気に接してくれるのだ。
「とーにーかーく! お偉方には勝手に飲ませておけばいい。私は寒空の下で五稜郭を警護している平隊士たちに酒を振る舞いに行くぞ、周平!」
「まあ、みんな土方さんに懐いていますからね、子犬のように。慈母のような優しいお人だ、と五稜郭でも土方さんはモテてモテてモテまくっていますよ」
「なにを今さら。鬼の副長とか冷血の女とか呼ばれて来た京でも恋文を山ほど貰っていたのだ。その鬼の仮面を外した今、この地上に私ほど美しく可憐な乙女はいるだろうか? いやいない! しかも! その中身は歴史に名を遺す天才俳人・豊玉宗匠なのだからな! 平隊士たちに慕われて当然だな。はは。まさか妬いているのか、周平?」
「……いえ。別に」
「安心しろ。『母親役』と『乙女』とは別だ。かっちゃんに代わって、今は私がかっちゃんの役割を担っているだけだ。ほら。行くぞ周平。願わくば今一度だけ、蝦夷地に咲き誇る梅を見てみたかったが――綺麗な梅を見ると、素晴らしい句が浮かびあがるのだ」
「……『梅の花一輪咲いても梅は梅』とか、駄句なんてもんじゃないでしょうに。悪い意味で俳句の歴史に名を遺しますよ。二十一世紀の未来にまで」
「なにか言ったか?」
「いえ。つくづく土方さんは天才俳人だなあ、と感嘆しておりました」
「そうか。ならいい。しかし、蝦夷地では梅よりも桜のほうが早く咲くとは知らなかったぞ。ああ、実に風流な土地だな――」
部屋から廊下へと出るその瞬間に。
行こう周平、今宵は隊士たちに酒を振る舞ったら二人きりで朝まで過ごそう、と土方さんがそっぽを向きながらそう呟いた時。
人生最後の夜をお前とともに過ごしたい、とあの土方さんが言ってくれたその時。
土方さんと結ばれたい、恋を成就したい、そしてこの人とともに死にたい。
いや、俺の想いなどよりも土方さんに生きてほしい、たとえ罵られ嫌われ切腹を命じられようとも、なにがなんでも土方さんを護りたい。
俺の心は、相反する二つの激しい感情に引き裂かれそうになっていた――。
そんな俺の迷う心は、土方さんにも伝わっていたらしい。
「ふふっ。お前も私と同じか。『しれば迷い しなければ迷わぬ恋の道』――だな、周平」
やはり私の俳句は人間の誠の情というものを見事に歌いあげた芸術作品だ、ふふ、百年先の未来にも残る傑作だ。
そう戯けながら階段を舞い降りていく土方さんの心も、生と死の狭間で激しく揺れているのだ。
そのことを知った俺は、土方さんの後を必死に追いかけていた。
絶対にこの人を死なせない。運命を変える。俺自身がどうなろうが、そんなことは関係ない。そうだ。流山で俺は近藤さんにそう誓ったんじゃないか。
今宵、この一命を賭して、土方さんを生かす。
土方さんを待ち受ける「運命」、新選組副長の最後の戦いは、翌日に迫っていた。
【本編へ続く】
Re:スタート!転生新選組~一周目~ 春日みかげ/電撃文庫・電撃の新文芸 @dengekibunko
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