異世界から転生してきたと言いはる王女アリサは、ときどきこの世界にはない単語を口にする。
周りは彼女を欠陥王女として見るけれど、王妃と書記官カイは理解を示していて……。
異世界転生してその記憶を持つことは、他の作品だとチートとなりがちですが、この作品を読んでいるとそれはそれで酷なことなのではないかと違う感想を抱きました。
だって、とても悩んでいる幼少時のアリサが可哀想で可愛くて。
それを単なる変な王女、ではなく面白いと感じるカイがいて、物語が楽しくなっています。
しかし、やっぱり異世界の知識を役立てるシーンもあって、「おおお」と感動。
アリサとちょっと対立するロザリーの存在もスパイスとなって、ハラハラします。
癒しとどきどきをかね合わせたこの作品、最後まで目が離せません。
皆さんは前世の記憶ってありますか?
子供の頃不思議なことを口走った人々も成長と共に記憶は消えていくことでしょう。
カナルサテン王国の第七王女アリサは、その例外で大きくなっても前世の記憶をもつ不思議な少女です。そして主人公カイはその前世の記憶の断片を記録する書記官です。
彼女が不思議なことを口走るたびにカイはきっちり書き留めます。アリサが口にしたある言葉。そう彼女の前世は……
二人とそれを取り巻く人々の日々は楽しく穏やかに過ぎていきます。
美味しいお茶を飲んで、心を通わせる者と談笑して。幸せってこういうことなんだよと私は思います。
そうした心温まる物語が描けるのばびぶさんが物語作りに誠実に取り組まれているからだと思います、キャラクターが愛らしくも誠実なのですね。
隅々に作者さまの優しいお人柄と細やかな配慮を感じます。
魔法石や精霊が登場するのですが、それを製造している背景だとか魔法の設定、細かに作り上げられた物語世界もまた魅力です。
読む者に対し心の充実と思いやり、そして夢を与えてくれる物語ではないでしょうか。
手に取ればアリサの記憶と魔法、王族としての儀式、たくさんの魅力ある物語のキーワードを追う旅になることでしょう。