彼と彼女と

日音

彼と彼女と雨

放課後、帰ろうと靴箱に上履きを入れる。もうほとんど生徒は残っていない。しかし入り口の所に一人女子生徒が立っている。

「先輩、帰らないんですか?」

自分の発した声は届いたはずだが彼女は振り返らなかった。隣に立つと、なるほど。

「雨、降ってますね。天気予報では言ってなかったのに。」

困った声を出すと先輩は空を見上げる。

「あれ、ほんとだ。」

雨が降っているから帰らなかったわけではないようだ。

「先輩持ってきてるんですか?傘。」

俺の問いに先輩は不思議そうな顔を向ける。

「傘?ああ、ないけど。一緒に帰らない?」

唐突な提案に目を瞬かせる。

「俺も傘ないですよ?」

申し訳なさそうに答えると先輩は首をかしげる。

「ん?別にかまわないわよ。」


雨は強くない。しかし着実に制服は濡れていく。しかし、二人はたわいもない話をしながらのんびりと下校する。

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彼と彼女と 日音 @hioto_98

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