垣根は相手がつくっているのではなく、 自分がつくっている。 ——アリストテレス

 馴れ合いを必要とせず、ただ孤独だった。

 オレにかまってくれる人はいた。周囲の人はしっかりとオレという存在を認識していた。


 だが、オレはそうではなかった。


 人に興味がなかったのだ。


「どうせ中二病の独白だろう」と思っただろうか? 残念ながら違う。幼稚園に通っていた頃からオレの頭はそんな感じだった。


 皆はオレを友達だという。男子も女子も問わず、オレにかまった人は全員そうだ。

 先生はオレを優等生だという。そりゃあそうだ。先生や友達が必要としていること、言わんとしていること、すべてをくみ取り行動する。所謂、空気を読むという動作である。

 常にそうだった。「テストで満点を取れば先生が褒めてくれる」とか、「通知表の成績がよかったら親に褒められる」とか。頭がいいって思われたくて、小学一年生ながら漢字の勉強をし、算数の計算は常にクラスで一番早くできるように勉強した。


 さて、ここまで完璧な人間を見た同級生は何を思うか。

 ——決まっている。

「こいつキモイ」だ。


 次第に真面目のレッテルを貼られ、人は関わろうとしなくなった。


 幼稚園の頃は友達はいなかったのだが、小学生になって少し変わった。

 オレと向き合ってくれた人は二人もできたのだ。

 町田優香と小嶋陸だ。一応説明すると、優香は女で陸は男だ。

 この二人はオレのことを友達だと思ってくれて、今考えれば非常にありがたい。


 だが、先ほども言った通り、オレは人に興味がなかったのだ。


 オレの存在を認めてくれて、称賛してくれる。そのためにオレは空気を読む。


 人から良く思われたい。それで自分が満足するから。

 ここに『人』は関与するが、『個人』は関与しない。

 人を気にして生きているが、人には興味がない。


 要は、かなり面倒な分類のませたガキだ。しかも、本人には大人ぶっているつもりは欠片もない。

 ああ、なんと面倒なことだ。自分で言ってて嫌気がさす。



 小1の夏休みに入る前くらいのことだ。

 オレは初めて周りの人と違うことを悟ることになる。


 小学一年生。まだまだ、やんちゃな男子が猛威を振るっている頃だ(オレの勝手な意見)。

 オレのクラスのやんちゃボーイズは、トイレの個室のドアノブによじ登ったりして、そこで用を足している同級生を覗こうとした。個室の中からは「やめろ」と聞こえてくるが、まあ、聞くわけがない。

 さて、ここでそのやんちゃボーイズを止めるために、オレは先生に声をかけた。

 女々しいことこの上ない。

 このとき、オレの頭には「立派な優等生であれ」という文字が大きく刻まれていた。


 この後の展開はわかるだろう。「チクったな」と言われたのだ。

 オレはチクった自覚がなく、何のこと? と言った。とぼけているわけではない。マジで頭がおかしかっただけである。


 こんな話がまだまだある。

 小学一年生なんて、「先生ちょっと職員室行ってくるから、静かにしててね」と言われても、先生が去った後は動物園のようにうるさくなる。定番だ。

 そして先生が帰ってくるタイミングで少し静かになる。あるあるだ。

 そこで先生が「静かにしていた?」と聞く。

 このときオレは「うるさかったです」と言った。


 大人に良く思われたい。だから同級生を売る。


 いかに人に関心・興味がないかおわかりいただけただろうか。



 だから、オレは見てみたくなったのだ。

 皆と一緒に騒いでいた場合のルートを。

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