エピローグ
あれから10年が経過した。わたしは2人目の子どもを産み、アストと幸せな生活を送っている。
「お母さま、出費が多過ぎます。どうすればいいんですか?」
「出費があるなら生徒から徴収したり、街の人たちからお互いに利益のありそうなことを提案するんだよ。ここからは自分で頑張ってね。フィニア」
「ありがとうございます!」
この子はわたしの最初の娘 フィニア。今年で9歳を迎える現在の魔法学園の生徒会長。
「なたりぃ、わかんないよぉ……」
「フィオ様、これぐらい出来ないと授業に置いていかれますよ」
いまナタリーに勉強を教えて貰ってるのが息子のフィオ。今年で3歳になる。二人とも週に2回、ディアナに屋敷まで来て貰って魔力操作を教えて貰ってる。
「フェノンお母さま! これ読んで!」
「アリアちゃんいらっしゃい。いいよ。貸して」
わたしはアリアちゃんを上に座らせて絵本を読んであげる。
この娘はフィオと同い年で、リアの娘。リアは最近二人目が産まれそうな為、最近はわたしが面倒を見ることも少なくない。
数年前まではリアもそんな素振り全く見せなかったのに不思議だよね。それにリアの旦那さんとは会ったことないんだよね。結婚式の日もわたしが風邪を引いて出席できなかったし。
だけどリアも幸せそうだし、わたしは何も言わないよ。会ってみたいけど……
「昔々、あるところに赤ずきんを被った少女がいました。彼女は二人の姉から嫌われていました━━━━━━」
今わたしが読んでるこの絵本はクルミさんが地球にある話を弄って作った本で、クルミさんの絵本は子供たちには大変人気がある。中でもこの『マッチ売り少女の振りをした赤ずきん被りの宝石好きなシンデレラ』は女の子に大人気だ。
元ネタを知ってる身としては色々と混ざり過ぎてヤバい感じになってる。
するとフィニアも気になるのかわたしに近寄ってきた。
「フィニアも興味あるの?」
「うん!」
フィニアも見えるようにとわたしはアリアちゃんを下ろして車イスからベッドの上へと移動してから再びアリアちゃんを膝の上に乗せた。
するとフィニアはわたしの横に座った。
「僕も!」
「フィオ様もですか? 仕方ありませんね」
フィオも興味があるようでわたしのベッドの上に乗ると、フィニアの膝の上に座った。
この二人はとても仲良しで喧嘩してる姿は見たことがない。
ナタリーが言うには車イスのわたしに迷惑を掛けたくないからと子供なりの気遣いらしい。
「フェノンも随分懐かれたものだな」
「そうだな。どうしてオレの子までフェノンに釘付けなんだろうな?」
「顔だな」
わたしが子供たちに囲まれて絵本を読んでる姿を見てアストとリアはわたしの顔が童顔だとバカにしてくる。でも、わたしの胸はリアに勝てるぐらいあるから!
……まあ、『どんぐりの背比べ』ならぬ『まな板の背比べ』なんだけどね。
「リアちゃんは出歩いて平気なのか?」
「少しなら大丈夫だから心配すんな。……にしてもフェノンのやつ幸せそうな顔してんな」
嬉しそうにお腹を撫でながら言うリア。
その言葉、そっくりそのまま返してあげるよ。一番幸せそうな顔してるリアめ。
「こうして少女は王子と結ばれ、全世界にマッチを広げていきましたとさ。めでたしめでたし」
わたしが読み終えると子供たちから拍手が起きた。恒例の拍手。誰が考えたのかはわからないけど、いつの間にか拍手が起こるようになった。
「アリアちゃん……?」
アリアちゃんがわたしに寄りかかって眠ってしまっていた。横を見てみるとフィオも寝ていた。
「少しお昼寝にしましょうか」
わたしはそう言ってベッドの上で横になると、フィニアも横になる。
するとフィニアは直ぐに眠りについた。
「かわいっ」
わたしはフィニアの頭を撫でながら自分もこんな感じだったなと懐かしく思った。
まあ、身長的には既にフィニアに負けてるんだけど。車イスだからセーフ! フィニアにはバレてない!
わたしがフィニアの頭を撫でてるとアストがわたしに歩み寄ってきた。
「フェノン、今夜……いいかな?」
「うん、いいよ」
アストのお誘いはいつもこんな感じ。わたしも平然を装おうけど、少しでも気を抜いたら表情が弛んでしまいそう。
それから時間が経ち、その夜のこと━━━━
「3人目、いつ出来るかな……?」
わたしは今後の未来を想像するだけでにやけてしまう。なので深呼吸をして落ち着かせる。
そして、覚悟を決めたところでアストの部屋を開けたのだった。
「(お母さま、こんな夜中に何するんだろ……?)」
この日、フィニアが大人の階段をのぼり始めたことをわたしたちがその生涯に渡り、知ることはなかったのだった━━━━━━
宝石少女 ~剣も魔法も使えない上にお母様がチート過ぎたのでわたしは魔力操作を極めることにしました~ 名月ふゆき @fukiyukinosita
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