第4話 幼馴染み×相部屋=ラッキースケベ

 ヒラさんと天帝魔法師長室を離れた僕達は、途中でフームと合流して連れられるがまま後を追う。


「は〜い、ここが私の部屋だよ〜」


 ヒラさんが慣れた手つきで開けたその部屋は、おっとりしていて女性らしい印象のヒラさんに違わず綺麗で片付いた部屋だった。


「わ、広いですね」


 声を漏らしたのはフーム。VIP待遇と言われるだけあって、三人が暮らしたとしても何一つ不自由の無さそうな広さだ。


「部屋はリビングの他に二部屋あるから、私とトーリちゃんが右の部屋、フームちゃんは左の部屋を使ってね」


「はい。……いやはいじゃないです」


「と、トーリ!!! また大人の魅力に……!」


「なぁに、もしかして若い二人で同棲したいってこと〜? 最近の若者は進んでるんだね〜」


「「違います!!!」」


 俺とフームは声を揃えて否定する。当のヒラさんはけらけらと笑っていた。手玉に取られてる……!


「ま、部屋は左をトーリちゃんで右をフームちゃんが使ってよ。私は忙しいからほとんど部屋に帰らないし」


「え、でも」


「良いの良いの〜。今日もこの後任務があるし、もし帰ってきたとしても寝るのはソファーだもん。ベッドで寝たい時はどっちかに入るけど、それも二分の一だしね〜」


「に、二分の一で僕とヒラさんが同じベッドで……!」


「……トーリ?」


「な、何でもない!」


「ふふっ。じゃあ私は行くね〜」


 ヒラさんは手をひらひらと振って部屋を出ていく。パタンとドアが閉まると、僕とフームの間には奇妙な雰囲気が生まれた。


 て、天帝魔法師の見習いになったと思ったら幼馴染みと同棲することになった件について。的な。


 ……どうしよう、この状況。


「ね、ねえトーリ」


「はっはい!?」


「今日はもう夕方だし……、その、ね? お風呂に入りたいなーって……」


「……え、っと。……い、一緒には……恥ずかしいというか……まだ付き合ってもないし……」


「っ!? ちが、違うよバカぁ! お風呂に入るから覗かないでねってこと!!!」


「あ、ああそういうこと!? ごめん先入って!!!」


「言われなくても入るよぉ!!! エッチ!」


 言い捨てたフームは持ってきたカバンを手に脱衣場へ行ってバンと扉を閉める。僕も勿論だけどフームの羞恥心が扉を閉めた音に現れているようだ。


 しゅる、と耳朶を打つフームの服を脱ぐ、衣擦れの音。


「あーあーあー!!!」


「っ!?」


 聞こえない!!! フームが服を脱いでるところなんて想像してないよ!!!


 僕は言われた左の部屋にこもって、音が聞こえないように耳を塞ぎながら枕に向かってわーわー叫んでいた。

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E級(意味深)スキル:ラッキースケベ 〜ふざけたスキルのくせに追加効果が強すぎる〜 しゃけ式 @sa1m0n

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