第5話 娘からのメール

家へと戻っても先ほどの祖父の言葉が頭から離れず、部屋でぼーっとしているとスマホにメールが届いている事に気づいた。

何気なくメールを開けて、宛名を見てみると、娘の明日香からのメールだった。

何か嫌な予感がして、メールを開けるのを迷っていると再びメールが届いた。


娘の明日香は中学校3年生の受験生である。小学校低学年の頃はよくパパについて買い物に行ったり、遊びに行ったりしていたがこの難しい時期の娘はどう対応していいか本当に分からない。塾などで夜が遅くなる事もありスマホを持たせたが、今までメールが来たためしが無かったので最初は間違いメールかと思ったほどだ。

娘からのメール一通目 15:30

『パパ、どうして帰って来ないの?

今朝、さくら(ポメラニアン)が散歩中に道路に飛び出して車に撥ねられて死んじゃったよ。パパが居なくなってからは私か優斗(ゆうと 小学校4年生)で交代で散歩に行っていたんだけど、今日朝の散歩に行っている時に猫が近くにいて、さくらが追いかけて行ったんだけど、リードをしっかり持っていなくて手から外れてしまって、そのまま道路に飛び出して行ってしまったら丁度後ろからきた車に撥ねられてしまいました。ずっとさくらは死ぬまでパパを待っているかのように泣いていたんだよ。パパが一番可愛がっていたのは見ていても分かっていたし、そばに居てあげて欲しかった。ママも落ち込んでいるし、優斗も和斗も泣いているよ。

最近の家はママとパパの仲が良くないのは知っているけれども、私はパパには家に居てそばで見守っていて欲しいです・・・。』


娘からのメール一通目 16:15

『さっき、ママが犬の葬儀屋さんから帰ってきたよ。さくらはもう帰って来ないよ。

どうしてこうなっちゃったの??こんなの家族と言えるの??

私達はどうすればいいの??教えてよパパ・・・。』


2通の娘からのメールを読んで涙が止まらなかった。

愛犬の死、娘からの悲痛な訴え、未来を変えてしまったのは自分だと思った・・。


今朝、過去の愛犬の小太郎を助けてしまった為に未来の愛犬のさくらが同じように車に撥ねられて死んでしまった。

さくらは娘が小学1年生の誕生日の時に家に来た犬だ。子供達の成長と一緒に育ってくれて可愛くてしかたがなかった。

自分がした行いが未来が変わってしまうとは何も考えていなかった・・・。

「何をやっているんだろう。俺は・・・。」

少し考えれば分かる事だった。自分がこのまま違う大学に通い嫁と出会わなければ娘や息子達の未来は無くなってしまう。

自分勝手な判断で未来を変えてしまった、自分自身への罰なのかも知れない。


「どうすればいいんだよ。」

同じ生き方をする事は不可能だ。一つの行いで未来が徐々に変化してしまう事は今後も出てきてしまう。いっそ、スマホを見ないだけで未来の事は無かった事にして自分の生きたいように生きようかとも思ったが、大事な娘からの訴えのメールを今更見なかった事には出来ない。

子供達の為に離婚もせず何とか頑張ってきた事もあり、どうにかして未来に帰る方法が無いか考えないといけない。


「やはり手掛かりはじーちゃんの過去びとなんだよなー。」

ボケてしまってからは何も思い出せない為に何かヒントになる事はないか、一度祖母が帰ってきてから聞いてみよう。

「あれだけ仲がいいんだから、何かじーちゃんがおかしな事を言っていたら覚えているかもしれへんし。」


18時過ぎに祖母が老人ホームから帰ってきた。

「しゅーちゃん、今日は本当にありがとうな。老人ホームのお世話になっている方からも、いいお孫さんやねって褒めてたよ。」

「えーよ、じーちゃんの元気な顔が久々に見れたし近々また顔出すわ。それよりもばーちゃんに聞きたい事があるんやけど。」

「何や改まって、何が聴きたいん。」

「ご飯の後でもばーちゃんの部屋に行くし後で話すわ。」

「分かったわ、何か分からへんけど、何か悩みでもあるんか?」

「大丈夫やー。後で話すわな。」

その後、家族でご飯を食べてから祖母と祖父の家に行った。

実家は二世帯住宅になっており廊下で繋がっており奥に祖母宅がある。

「ばーちゃん今いいか。」

「ええよ、ばーちゃんもご飯食べた所やし、お茶淹れるわな。」

それから小一時間程祖母と話しをしてみて新たに分かった事があった。

「昔いつやったか、おじーさんが変な事を言うて来た事があってな。柊二の父ちゃんのな修也の上に兄が居てるって突然言い出してな。何を言っているか始め分からへんかったんや。」

「ほんで、分かったんか。」

「じーさんがわしが間違ってもうたわ。言うてふさぎ込んでた時期があったんや。」

「その時も過去びとが何やーとか言うてたよーな気がするな。でも最後は忘れてくれとか言ってな、それからは何も無かったようにその事は何も言うてくれへんくなったわ。」

やはり祖父も俺と同じような経験をしている事は間違いないようだった。

何か残ってないか、祖母に聞いてみたが一時期の事なので後は何も気にしなかったようだ。

これは祖父の所に通って、思い出してもらわないと手がかりが掴めないな。と思い祖母の所から戻った。

部屋に戻ってから一言

「俺は何の為に過去に戻されてしまったんだろう。」としみじみ嘆いてしまった。

過去に戻れば人生やり直せると思っていた安直な事を考えていた自分に反省して本日は就寝する事にした。







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タイムトラベル!? @zousui794

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