大学生、
@Syosetsu53
第1話 「まぁ、ちょっとな。」
「まぁ、ちょっとな。」
タバコ片手に、彼はそう言いながら缶コーヒーのタブを開けた。
11月初旬、秋めいてきた季節に戸惑いながら少しずつ着込んでいく服が増えていく。私は秋があまり好きではない。なぜなら朝寒いと思ったら昼間は暑くなる。そしてまた夜は寒くなる。風邪をひいてしまうではないか。そう思っていたが、そろそろ昼夜関係なく寒くなってきそうだ。
「何かあったん?」
関西弁口調で、聞いていいようなそうでないような、微妙な質問をした。私と彼は大学生で、今は休み時間。次は3限目、昼ごはんの後だからすごく眠たい。
「もう、無理かもしれへん」
コーヒーを一口飲んだ後、タバコを吸い、俯きながらそう言った。彼は今年の夏からサークルの会長をしており、いつも何かに悩んでいた。
「前に言ってたやつ?まだ解決してへんの?」
2週間ほど前に彼が言ってた、人間関係のことを聞いたのであった。
「いや、あれじゃないねん。他のことやねん。俺のことは大丈夫やから」
タバコを吸って肺に入れ、吐き出している。あたかも深呼吸をしているかのように。
彼はいつもそう言う。俺は大丈夫。そう言い続けている。が、見るからに大丈夫そうではない。私は何を言えばいいのか全くわからず、悩んだ。
少しの間続く、無の空気、無の時間。痺れを切らしたように、
「あんまり無理したらあかんで」
こんなことしか言えなかった。無理しなくて済む人はそもそも無理をしないし、無理している人は無理をしないようにすることが難しいと感じているはずだ。
「それは、、、愚問やで。」
残っていたコーヒーを一気に飲んで、タバコもフィルター近くまで吸っていたので灰皿に入れた。
「じゃあ、3限行くか」
彼はそう言いながら、吹っ切れていない顔をして私にそう言った。
大学生、 @Syosetsu53
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