第七話 開放

動けなるのもそろそろだろうとたかをくくっていたさっきの僕は滑稽だな。まだまだ元気じゃないかこの襲撃者は。


「まさか、弱体化した状態でここまで動けるとは思わなかったよ。とはいえ、君等じゃ僕に勝てっこない。降伏するなら今だよ?」


「だ、誰が降伏なんかするかっ!例え死んでも降伏することはないっ…。」


まさか蹴られちゃうとは思わなかったなぁ。

でも、まぁそう言うなら仕方ない。ちゃちゃっと動けなくしよう。


「全員、力の枷を外し全力を引き出せぇっ!

この敵は全力じゃないと倒せぬっ!油断してる今の内に殺せぇ!」


「おっと…隠し玉があると思ったがまさかこんなものだったなんてな。まぁいい、どうせその力も僕のものに…!?」


…おいおいおいおいおい…動きがさっきと違いすぎるぞ…10倍くらい速くなってるぞ…これはいくらなんでもまずいって。周りの殆どが反応出来てないし、辛うじて騎士団長くらいが反応してる。ここまで強くなるのは予想外…でも勝てないわけじゃあない。さてどうしようか…。


「予想外だって顔が出てるぞ?油断もしすぎだ、戦場じゃ命取りだって習わなかったのか嬢ちゃん?」


「誰が嬢ちゃんだっ!僕は男だぞっ!」


見た目女っぽいとか何回言われたことか。

今更見た目のこととか思い出したくもなかったわ…ボクっ娘キャラってのがいたぐらいだしなぁ…なんて呑気に考えてる場合じゃないっ!ここは戦場なんだ。


「なんだ男なのか?じゃあ坊っちゃんだな。

さて、形勢逆転だが降伏するなら今のうちだぜ?続けるってなら少々胸が痛むが殺すしかねぇなぁ…?」


「余裕出せるのも今のうちだよ。どうせあんたらは僕に負ける。強がりと取ってもらっても構わない、が忠告はしといた。」


とはいえ、流石にこの人数差だと苦戦は必至か…どうせここに集まった人達を駒として見ても瞬殺される。更には国の防衛力にも響く。とするならやはり僕一人でこの人数…つまり、30名程を相手にしないといけない。


「並列分身を呼び戻すか…。転移。」

「うわぁ…めんどくさいことなってる。」

「だから、呼び戻されたのか…。早く終わらせて眠りたいよ」

「んー…これ僕等だけで勝てるの?」

「勝てる勝てないじゃない、勝つんだよ。」

「方法は?…策はないのかよ…。」


これで集まったけど…統率力ないなぁ…。

まぁ、僕だから仕方ないね。それに実力は自分がよく分かってる、戦えるはずだ。


「並列分身を呼び戻したところでお前が勝てることは万に一つもないぞ!足掻かず降伏したらどうだ、命が惜しくないのか。」


「万に一つがなくても億に一つはあるだろう?その一つに賭けようと思うんだ。」


「ギャンブルにもならない賭けだな。感情だけじゃどうにもならない現実ってやつを教えてやるよっ!」


襲撃者全員が僕等に襲いかかる。


「散開っ!一人で五人ずつ相手しろ、殺さず無効化してくれ。大事な情報源だ!」

「分かったけど、流石に一人五人はきつ…」

「グダグダ言うな、早く終わらせるぞ。」

「ま、僕等で共有し合えばどうにかなるでしょ。頑張って終わらせよう。」

「そうだね。倒せなくはないでしょ、なら早めに無効化した方がいいね。」

「賛成、その方法が手っ取り早いし。」


それ以外、終わらせる方法はなさそうだからそう言ったんだけど…納得してくれたならなんでもいっか。終わらせよう。


「ふん、一人で五人を相手して勝てると思ってるのか?負けても知らないぞ?」


「大丈夫死なないよ、俺だもん。負ける要素がないし負けても死ぬことはないからね。」


舐めてかかりやがってと何か呟いてるが当然スルーしとく。


「じゃあ、僕等もやろっか。お喋りも飽きちゃったし楽しく戦おう。」


「俺が相手するまでもない、こいつ等四人で十分だろ。苦戦は必至、勝てても次で俺に勝つ余力なんて残らないだろう?」


なるほど、消耗させた上で僕を倒そうって算段か。でも、甘いんだよなぁ。


「ぐぁぁっ!」

「殺さないでくれぇっ!」

「金ならいくらでもあるっ!だから俺だけは見逃してくれぇっ!」


「ほぅら、お前の悲鳴が聞こえるぞ?」


何を言ってるんだこいつは。どう考えてもお前の部下の声だろう?思い込みの力ってのは凄いな…。なんて感心してる場合じゃない。


「よく周りを見てみろよ。やられてるのは俺じゃない、お前の部下共だよ。」


「なっ!?…何だこのザマは…何故お前らは倒れてるんだ。ありえない、この状態で勝てない相手だなんて聞いてない。俺等の奥の手が効かない以上勝てるわけない…撤退…か?駄目だ、撤退したらあの方に殺される…。」


ほら、やっぱりこうなるよね。もはやテンプレと言っても過言じゃないね、漫画とかでもよくある話。雑魚キャラは勝手にヒント残していくからね。ラッキーだよ全く。


「死ぬのは嫌だ…死にたくない…死にたくない。そうさ、勝つのは俺だ。俺は勝つんだ。どんな敵でも倒せる無敵なのが俺なんだ。」


「…!?まずいなこりゃ…力の暴走か?こいつの力がどんどん膨れ上がってる…。」


勝てるかなこれ…ほんとに心配なるわ。どうにでもなるよね。うんうん、どうにでもなる。そう思い込まないとやってられません。


「ふふふ、ふははははは!これが力っ!これが俺の力なんだぁぁ!」


「うん、まずい。城からとりあえず離れさせよう。崩れちゃう。異空間転移。」


焦って異空間転移使っちゃったよ。まぁ隔離できたから良しとしよう。さてと、頑張らないとな。並列分身もとりあえず付いてきたし、大丈夫だよな。


「勝つためにまずはお前から殺してやるっ!おらっおらっ!」


「うっわ、さっきでも受けるのがやっとなのにさっきより強くなってるとか笑えないよ!?どうしよ、勝てる作戦あるかな。」


焦るなこれは。えっと…不知火使うしかないかなこれ。


「ふははははっ!手も足も出ないではないかっ!先程の威勢はどうしたのだ!ほらっ、俺を楽しませろよ坊っちゃんよぉ!」


「さっきからごちゃごちゃうるせぇんだよ。

さっきの威勢を証明して欲しいなら証明してやるよ、あんたの脳天切り裂いてなっ!」


「当たるわけがあるまい。動体視力も俺のほうが上だ、お前が何をしようと勝てるどおりはないのさ。」


くそ、面倒くさいっ!おい不知火、力を寄越せ。あいつを倒せるだけの力を。


「あーもう、何だ何だ。力?いいか?お前に力はやっただろ?あれを上手く使え。それとも潜在能力でも引き出さないと駄目なのか?いや、でも今でも十分勝てるよな…。」


「潜在能力でもなんでも引き出してくれ。勝たなきゃいけないんだよ。」


「仕方のない奴だ、特別だぞ?効果は保って30分、だが15分で終わらせてくれ。15分以上経つと解除したときに体が悲鳴をあげる。だから15分だ、それまでに決着をつけろ。

10分切って勝てそうになければまずいから俺も力を貸してやる。」


いや、どうせなら最初から力を貸せよ…。

ちょっと呆れるが、力をくれるなら何でも良いか。さてと終わらせようか、この戦いを。

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死の国 高井頼斗 @takairaito

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