ヨクボウニマミレル
【ヨクボウニマミレル】弌
どうしてあの人は私に気が付いてくれないのだろう?
これ程までに欲望を他者に授けているのにどうして私に見返りが返ってこないのかしら?
もっと増やせばいいのかしら?
それとももっと減らせばいいのかしら?
分からない事だらけで気持ち悪い。
「ねえ、早く会いに来てくださいよ。早く私を見つけ出してくださいよ。大城 白野様」
言葉は伽藍の部屋に染み渡るだけで返事はこない。
今宵は月に一度の晩餐会。
良いも悪いも私次第。
選り取り見取りの現状を変化し彼に授ける最愛であり宿命の日。
「さあ、始めましょうか」
伽藍の部屋を抜け、私の思うがままにこの都市を歩き続ける。
そして私は欲望に至る。
「美味しそうなもの見っけ」
囚われなど知らず。
怯える者の手を取り。
私の欲望をだらだらと垂れ流しながら他者に接する。
「ねえ、貴方の欲望をさらけ出して――」
私が贈る彼への欲望の結晶。
誰もが欲しがる愛の具現化。
今度のも彼ならさぞ嬉しがってくれるのでしょうね。
そうして灰かぶりのシンデレラは王子様が駆け寄って来るのを気長に待つのです。
いつまでもいつまでも――
非日常奇譚/絞殺欲求・十二支編 柊木 渚 @mamiyaeiji
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