声劇『吉田くんの初恋』

木ノ下みなみ

声劇『吉田くんの初恋』

[]=吉田のナレーション


吉)あれは…

[修学旅行先で中学のクラスメイトと再会した]

小林かおる…

[あいつと話した記憶は…ほとんどない。

というか…

あいつがクラスのやつと会話らしい会話をすることはなく、いつも本ばかり読んでいた]


小)ふぅ(溜息)

吉)よっ!

小)よ、吉田くんっ‼

吉)こんなとこで何してんの?

小)あ…あの…えっと…しゅ修学旅行の自由行動で…

吉)あ、もしかして小林もグループのやつと別行動してんの?

小)はい…

吉)奇遇だなあ!

実はさぁ、俺も修学旅行で来てんだけど…俺以外みんな彼女持ちでさあ。あ‼まさか小林…お前も彼氏と…

小)ち、違います…

う、うち女子高ですからっ‼

吉)はっ‼もしや禁断の百合展開⁉

小)それもないです‼

吉)ってことは…

小)他の方々は…ショッピングモールへ行かれました

吉)吉田は行かねえの?

小)私はちょっと疲れてしまって…

吉)そっか…ところでそれ、何読んでんの?

小)え、あ、これは…(本を隠す)

吉)あ!なんで隠すんだよ!あ、まさか、エッチなやつとか⁉

小)ち、違います‼

吉)だったらなんで隠すんだよ、余計気になるつーの‼見ーせーろーよ!

小)やめて‼(吉田に本を取り上げられる)

小)あっ…

吉)これ…俺が好きなやつ…

小)…(赤面)

吉)[俺が取り上げたその本は、何度も何度も読み返されて、表紙がボロボロになっていた]

小)吉田くんが…くれた本…

吉)あ…[そうだ…思い出した]


--------------------回想--------------------

吉)小林、この本読んだことある?

小)いや…ないです…

吉)なら、これ…やる

小)え⁉でも…

吉)これ俺が好きな作家なんだ!

俺はもう読み終わったし…それに…

小林みたいな本の虫に読んでもらって

感想聞きたいし…だから…やる

小)あ、ありがとう…

---------------------------------------------

吉)[結局、本の感想を聞かないまま…

俺たちは卒業した。]

小)私も…好き…

吉)えっ⁉(照)

小)こ、この本!!!(赤面)

吉)ああああのさ…もし良かったら…

近くでお茶でもどう…かな?(照)

本の感想…詳しく聞きたいし‼

小)うん(恥ずかしそうに微笑む)


吉)[それから俺たちは、

地元に帰ってからも連絡を取って会うようになった。場所はもっぱら町の図書館だが…今度、映画に誘ってみようと思う]

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声劇『吉田くんの初恋』 木ノ下みなみ @minami-one-san

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