第2話

 黒鏡を見た。黒鏡とは言っても百均の額縁の中に黒い紙を敷いただけだが。暗い部屋で見つめていると白い靄が浮かんできて、いろいろと見えてくるものがある。まるでテレビのようだ。

 真っ白な杖が見えた。それは火の上で浮かんでいて、火の支配者なのかもしれない。やがて白い被膜が焼ききれて金色の杖になってしまった。意識をうまい方向へと飛ばしてチャンネルを変えた。

 のこぎりのような刃を背中に収めている幼子がいた。しゃがんでは小石を拾うかのようにして立ち上がるを繰り返している。その度に刃が展開されては仕舞われるを繰り返している。リズム感がよくて延々と見ていられそうだ。相変わらず顔は見せてはくれないが可愛らしい。次。

 空気だった。空気は常に見てるけど、そこにあったのは密度の段違いな空気だった。押し縮められただけではなく、スモールライトで分子まで小さくされるまで押し込まれた空気だった。うっすら青みかがっていた。今考えるとオゾンなのかもしれない、と言う解釈がとれる。

 ガラスコップの山だった。取っ手のない、まるでIKEAで売っているような。そうじゃない。IKEAで売っていて自分の家にあるガラスコップがシャンパンタワーなんて比にならないくらい積まれていた。ピラミッドには遠く及ばないけれども、見上げても見下ろしても壮観だった。

 水だった。少量なのに海のように青い水。謎の強い光を受けていて、揺らめいだ水面が煌めいていた。海をスモールライトで縮めたみたいだ。気づいたが、これは四元素の武器と物が出てきている。次もおおかた予測がつく。

 やはり金貨だった。今現在も増殖していて、じゃらじゃらと音が聞こえる。持ち帰りたくて手を伸ばして金貨に触れるが、固まっていて動きやしない。諦めて手を引き次へ行った。

 暗闇に玉が浮かんでいた。右から光が届いて玉は半月のように光る。上から雨が降り、やがて玉は緑色に色づいたり白くなったり目まぐるしく変化する。今までのものを使って地球を生成しているのか。地球を拡大していくと人は杖を振り回して火の玉を生み出していた。剣と魔法の世界を生み出しちゃった。

 いつか勇者なんてものも生まれれば面白いのに。無駄に介入してくる神様もののネット小説の気持ちがわかった気がした。これはただ見ているだけじゃ人類の興味深い文化が生まれる頃には飽きる。

 飽きたので介入できないのか試してみた。できた。その惑星は若干気温が低かったが大した支障はなかった。幻覚だもの。魔法の根源はたぶんあれだろな、と思いIKEAのガラスコップを思い浮かべてみた。手元にひんやりとした感触、水の満ちた容器。地に垂らしても想えば沸いてくる。

 他の魔法も同様に考えると使えてしまった。思わずチート使いになってしまった。遊び倒すために風で宙に浮く。文明との接触を図りたい。なぜ地図作りをせずにきてしまったのかわからない。

 人はいなかった。私が飽きた頃には人類も滅びていたようだ。ただ遺跡はアホほど見つかるので、そんなに年数は経っていないのだろう。もう一つ惑星を作ってやろうか。そう思ったが、あまりに疲れてしまっていたので惑星から飛び出て、宇宙へ飛び出て、自室に飛び込み眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幻覚記 滝野遊離 @twin_tailgod

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ