始まりの味、タイタス風ソース
聞け、悪党共、俺は貴様等の骨を碾いて粉にし、それを貴様等の血で捏ね、その練り粉を延し、見るも穢はしいその貴様等の頭を叩き潰した奴を中身にパイを二つ作って、あの淫売に、そうよ、貴様等の忌はしい母親に食はせてやるのだ、大地が自ら生み落したものを、再び呑込む様にな。
~戯曲タイタス王~
バルトとバルニバービはアルテミス祭りへと出掛けた。バルト達が仕留めた海竜が祭りに出される為だ。
「全長10メートルの海竜なんてホントにいたの?」
バルニバービはバルトに語りかけた。
「もうすぐ現物が見られるから。」
バルトは車イスを押す。目的の会場のエイバン公園まではもうすぐだ。
「バルトじゃねえか。結局来たのかよ。」
バルトがエイバン公園につくとそこにはヴァンダル達がいた。
「あら~初めましてだったかな、バルトの好い人さん。」
タモーラは見るからに酔っ払っていた。
「またカイロンを食い過ぎたのか。こりねえな。」
「20杯も平らげやがった。付き合い切れねえよ。」
ヴァンダルはバルニバービを見た。
「初めまして、だったかな。バルトの仲間のヴァンダルだ。あれを倒したのは俺だぜ。」
ヴァンダルは会場の中心に置かれた海竜を指差した。
「初めましてヴァンダルさん。バルトがいつもお世話になっています。それにしても凄い大物ですね。」
「こいつは勝手に食おうとしたんだよ。」
バルトは肩をすくめる。
「バルト、海竜のステーキを取ってきてくれねえかな。タモーラを支えるだけで精一杯だ。」
「な~に~言って~んの~かな?ヴァンダルく~ん。わた~し、は…しらふ?ですよ。」
「この通りだ、頼む。」
バルト達は海竜のステーキを取りに行った。
今年のアルテミス祭りの主品はタイタス風ソースの海竜ステーキであった。
タイタス風ソースとは、王都に暮らすあらゆる種族の骨と肉を用いたデミグラスソースのことである。
まず、骨付き肉やスジを焼き色がつくまで炒めるかオーブンで焼いてから、ブイヨンや水を加え、弱火でゆっくり煮込み、タマネギやセロリなどの香味野菜と香辛料、トマトを加えて、更に煮込んで作られる。丸1日以上煮込み灰汁をとる。そして、小麦粉をバターで茶色く色付くまで炒めて一度冷ましたものにこのスープを入れてとろみが出るまで煮込む。さらに葡萄酒で風味を着けて完成だ。
バルト達は四人分の海竜のステーキを受け取り、もといた場所へ戻って行った。ヴァンダルとバルニバービは何やら会話が弾んでいる。バルトはタモーラの介抱をしていてどんな話か聞いている余裕がなかった。
ヴァンダルは素手で海竜のステーキをがっつく。 それを見てバルニバービも真似をした。
祭りもいよいよ終盤を迎えた。今宵の喧騒はピークとなり、唄や楽器の演奏が響く。バルト達のやり取りも祭りの一部となっていた。
異世界グルメハンターズ~王都ラヴィニア編~ あきかん @Gomibako
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